見出し画像

【青島周一先生寄稿 要旨】薬剤師に処方権を 

青島周一

薬剤師による処方は、医師による処方と比較して、処方内容の質に相違があるか?

Abstract

【背景】日本の薬剤師は薬の専門家であるにも関わらず、薬における最も重要な権限の一つである「処方権」を有していない。しかし、処方された薬の有効性や安全性は、医師と薬剤師で顕著な差を認めるかどうかについては議論の余地がある。

【方法】2023年5月7日までに報告されている文献について、PubMed、およびGoogleを用いたナラティブレビューを実施した。なお、薬剤師の処方を比較していない研究、治療的な薬物療法ではない研究は除外した。

【結果】PubMed検索では106研究が該当し、このうち3研究をレビュー対象とした。またGoogle検索によって同定された1研究もレビュー対象に加えた。

 Stimmelらの研究1)では、精神保健施設において、薬剤師と精神科医による処方内容を比較している。その結果、抗コリン薬の処方は、医師と薬剤師で明確な違いを認めなかった。一方で、抗精神病薬および抗うつ薬については、薬剤師の処方が医師の処方よりも有意に優れていた。

Chenellaらの研究2)では、抗凝固療法の管理について、医師と薬剤師の処方が比較された。その結果、医師と薬剤師で処方された抗凝固薬の平均投与量に統計学的有意差は認めなかった。

Daltonらの研究3)では、STOPP/STARTcriteriaの推奨事項について、医師と薬剤師のアプローチが比較された。その結果、医師によるSTOPPおよびSTARTの実施割合はそれぞれ81.2%および87.4%であり、薬剤師による実施割合(それぞれ39.2%および29.5%)よりも有意に高いことが示された。

McGhanらの研究4)では、高血圧を有する外来患者が対象となり、薬剤師および医師の処方が比較された。その結果、薬物相互作用の有無、投与量や用法の適切さ、患者の服薬指示に関するスコアは、医師の処方と薬剤師の処方で差を認めなかった。

【結論】

臨床アウトカムに対する医師と薬剤師の処方に、著明な差異は認められない。ただし、いくつかの薬物慮法は専門医の管理下で行われた方が安全であることを示唆する弱い根拠がある。方法論的妥当性の高いエビデンスと、患者自身の生活環境を適切に考慮した意思決定を行うためにも、医師と薬剤師、双方の専門分野で連携することが、薬剤師の処方権をより有意義に活用できる前提条件である。

【参考文献】

1)Stimmel,et al.1982; PMID: 6127948
2)Chenella,et al.1983; PMID: 6638026
3)Dalton, et al.2019; PMID: 30659429
4)McGhan,et al.1983; PMID: 6843196

全文はこちら↓
薬剤師による処方は、医師による処方と比較して、処方内容の質に相違はある?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?