「お母さんは育児に専念してください」という無意識のバイアスと正義感

厚労省から専門実践教育訓練に指定されている講座のオープンキャンパスがzoomで開催されたので、参加した。

そこで私は質問した。「私は子どもが三人いる会社員です。育児中の人でも貴校で両立できますか?子どもがいるため、時に想定外の欠席が発生しうるので、念のため確認できればと思います」という問いに対して、想定外の回答が来た。

S主任教官(男性)「子どもが成人だったら別ですが、お子さんがまだ手のかかる年齢なら、育児に専念したほうがよいです。僕たちは、貴重なお母さんとの時間をとりあげるべきではないです。子どもにも人権があります。子どももお母さんを必要とする時間は、育児に専念してください」
N教官(女性)「個人的には応援したい気持ちですが、実際には育児と学業の両立は困難を伴います。育児を優先してください。」

今回出席された両教官ともが、母親は育児を優先しろといったことに、唖然とした。昭和50年代にタイムスリップした感覚だった。

私の心の声は言う。あのね、母親業って数年で終わらないんですよ。ひとり育てあげるのに約18年、大学、大学院まで行きたいと言い出したら、ひとりの育成に25年近くかかるんですよ。私のように、5年ごとに3人出産してしまった、脳内と子宮がお花畑な人は、もし末子が大学院まで行くと言い出したら、あと30年くらい母親卒業までかかるんですよ。すでに中年の私ですから、30年後、不運があれば私も〇んでもおかしくない年になりますよ。

この発言を真剣にされていた教官たちへも、不憫に思いました。差別意識はなく、誠意で言っていたからです。だからこそ、無意識のバイアスを感じました。厚生労働省も認定している社会人のリスキリング講座に、主任担当教員が、入学者のうち、母親は受講を控えろと発言してしまうのは、いかがなものなのか。文科省からの税金以外に、厚労省からもひとりあたり何百万と多額の給付金が支給されている学校なのに。その一部を納税者として払っているのも、子持ちの母親たちです。

給付の認定元である、厚労省の講座指定係には、当件をご報告しました。私も雇用保険を納めています。リスキリング指定講座として、多額の給付金を投入しているのに、母親は育児に専念しろと発言をOCでしているのは不適切だと。ということは、実際の入試でも多子の母親を落としている可能性があります。それが、少子化対策も尽力している厚労省としては、たまったもんじゃないと思います。

察するに、子持ちの母親は忙しく、子の行事や病気で出席できない時もあり、それが学業成績や進級率、国家試験合格率に影響するから、避けたいのかもしれません。

でも、ここまで読んで、気づきましたか。類似の差別は、どこでもありえます。以前、東京医科大で女子の合格率が男子より低く、医学部は女子を減点しているのではないかという議論や裁判が起こったことを。女子は妊娠出産育児で、男子ほど生産性高く貢献できない可能性があるから、男子を多く採用したいという医学部があったんですね。

私は、ただの、三児の会社員です。ただし、属性は女性、母親です。受精卵ガチャで私はXXで、脳下垂体及び卵巣から出るホルモンそのままに、生物として生きてきただけです。女性だからという属性にこだわりはないです。まして、母親だからという属性自体に、こだわりもないです。子を産んだから母親になっただけです。

中年男性に対して、「父親は育児に専念しろ」と、S主任教官やN教官は、言うのでしょうか。おそらく言わないでしょう。無意識のバイアスの怖さと、それを正義として発信することで、母親が得る機会を失わせることで、益々男女格差が生じてくる。負のスパイラルに、有能な人ほど気づいてほしいです。生存者バイアスが入って、こういった発言が繰り返されるのかと推測しますが、こうやって多子の母が機会を潰されても、ゾンビとして花束を抱えて復活すると、私は信じています。


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