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張子をしようと決意した新年の午後

 このところ、消しゴムを彫る手もパソコンで文字を綴る気力も失っていた。
 消しゴムについては(私は趣味で消しゴムはんこを作っている)23年の夏頃から顕著に制作意欲を失っていて、いろいろ考えてみたのだけど、単純に疲れたという結論に達した。
 店でポストカードを販売したり、自社製品のパッケージや依頼で制作することもあるのだが、私のポリシーで「店では絶対に作らない」という縛りがある。インクで本を汚してしまう恐れもあるし、会社員として働いているため他のスタッフたちが一生懸命、喫茶店をまわしてる時間に同じお給料で呑気に消しゴムを彫ってるのは人としていかんだろうと思ってしまう。同じ理屈で店で本を娯楽のために読むことはない。
 そうなると制作の時間は夜、家に帰ってからか遅番の日の午前中に注力することになり、消しゴム疲労が続いていた。そして、図案も短時間で作れるものになりがちで、タイパ消しゴムとなる。
 本当のやりたいことは別にあるのに、現状に合わせた結果が消しゴムなのでは、と思いはじめてから、あまりつくることが楽しくなくなってしまい、何か別の技法を手に入れたい・・・と思った時に思いついたのが張子だった。
 立体物であること。そして、前職で培った塗りの技術を生かせ、家庭で制作が可能、道具が身近であること。すべての条件にピタッとはまった。
 だが、この年齢で何か新しいことに手を出すのには少々勇気がいる。道具は安価に手に入るとはいえ、一度に揃えるとそれなりの額になるし、1日で諦めた場合の絶望感は他のことで経験済みだ。
 そう思ってた矢先、会社の忘年会でAmazonギフト券5000円が当たった。ありがとう社長!
 そんなわけで、5000円を軍資金に「膠」「粉分」「習字用半紙」「油粘土」などを購入した。おそらく、会社の忘年会の景品で当たったAmazonギフト券史上、最も渋い買い物となっただろう。

 ちなみに、これを書いている現在、まだ一度も張子を作っていない。絶対に習得するまで諦めないぞ、という2024年の私の決意である。


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