見出し画像

「認知症=アルツハイマー」という思い込み

子どもの頃を振り返ると、
オジーオバー達が徘徊したり物忘れをすると
「ボケてる」って言い方をされていたのを記憶しています。
それに対して特段の違和感もなかったのですが、
でもそれは軽蔑的、差別的な表現で、正しくは「痴呆症」と教わりました。

そしていつしか「認知症」という表現に改正され、
だいぶ一般的になったと思います。
さらには「認知症サポーターの養成」という活動も広まり、
子ども達も学校で「認知症に対する正しい知識と理解」について学習しているそうです。

母が認知症と診断されてから、
身をもって周りからの反応を受けるわけですが、
やはりまだまだ正しく理解されていないなと感じます。
私自身も正直、「認知症=アルツハイマー」という思い込みがあったと思います。

『認知症の疑いがある場合にはすぐ検査を』などの広告がありますが、
母には、徘徊や物忘れ、時間の管理ができないなど、
いわゆる認知症の代表的な症状はみられなかったので、
「疑い」ができませんでした。

そんな母の診断結果は「前頭側頭型認知症」

何ソレ???

「前頭側頭型認知症は人格変化や行動異常に特徴づけられる症候群であり、大脳の前方部(前頭側頭葉)に限局性変性を示す疾患群(前頭側頭葉変性症とよばれる)に認められる。50〜60歳台を中心に発症する。」

脳科学辞典

「前頭側頭型認知症は、理性をつかさどる前頭葉と言語をつかさどる側頭葉が萎縮するため、感情や行動のコントロールができなくなったり、言葉が理解できなくなったりします。」

認知症ポータルサイト

主治医は、母の年齢的に疑問があったようですが、
脳診断画像には、前頭側頭部にはっきりと萎縮がみられるとおっしゃっていました。
また、前頭側頭型認知症は難病にも指定されているそうですが、
母の場合75歳を迎える年齢に達していたことから、
「介護認定」を受けて、様々なサポートを受けることになりました。

私は診断を受けた日から、いろいろあれこれ調べました。

前頭側頭型認知症の主な症状を見ると、
母に当てはまらないことが多いように感じましたが、
早く手を打っておかないと!と思わされる症例もありました。


〈主な症状①〉万引きなどの問題行動を起こす
これはどの記事を読んでも前頭側頭型認知症の特徴的な症状として、
最初の項目に記載されている内容でした。
「万引き」の文字に驚きましたが、そのような事態は起こっておらず、
ただ、父が「財布からお金がなくなっている」と言っていたことを思い出しました。
そんな疑いを持ったことは家族に言えませんでしたが、すぐにでも事前対処しなければと、役場の福祉課に相談に行きました。
母がよく行くスーパーには、福祉課の方が事情を説明して対処してくださいました。これは本当にありがたかったです。

〈主な症状②〉失礼な発言をしたり、暴力的になったりする
暴力的になることはありませんでしたが、
「失礼な発言」という点では心当たりがありました。
家族や知人に対して、身体的な特徴に対してデリカシーに欠ける発言をしたり、親しくない人なのに図々しい物言いをしたり、
そのことで母を叱ったり、イライラさせられることが多くありました。

〈主な症状③〉身だしなみに気をつかわなくなる
母は、父の身なりの世話を含め、
身だしなみはいつもきちんとしている人でした。
行動がおかしくなってからも外出の際はきちんとしていたのですが、
突発的に出かけるような行動が出始めてからは、
家着のまま公民館に行ってしまうことがありました。

〈主な症状④〉毎日同じところへ出かける(常同行動)
公民館にはとてもお世話になりました。
用もないのに頻繁に公民館に出かけるので、事務の方に謝りに行くと、
「公民館に行くなら安心だから遠慮しないで行かせなさい」と。
しかも、症状の特徴的なことを知ってか知らずか、
母に夕方の戸締りを手伝うという役割を与えてくれました。
母は、午前中の公民館活動時に1回、
午後は夕方に戸締りの手伝いに行くというルーティンをこなし、
炎天下であろうが、雨が降っていようが、誰も止めることはできませんでした。

〈主な症状⑤〉同じ料理を毎日食べ続ける(偏食)、食べすぎる(過食)
母は家事に手を抜かない人でした。
そんな母が掃除をしなくなりました。でも洗濯はしました。
料理も本当に上手だったのですが、だんだんと台所に立たなくなり、
でも父のご飯の世話だけは欠かさず、毎日スーパーでお総菜を買ってくるようになりました。
母自身は過食でマックスで10kg近く太りました。


母が認知症と診断されたとき、
私たち家族は、「認知症の見守りは家族だけではムリだよ」と、
母の認知症発症を周囲に隠さず、地域や近隣の協力を得るべきだと話し合っていました。

万引きなどの問題行動や、徘徊して家に帰って来れなくなったら!とか、
とにかく不安事が多くて、
私は、公民館の方々や母と親しくしていた近隣の方からのお声掛けをありがたく受け取り、協力を依頼しました。

あとで聞いたことですが、
父や妹としては、「隠すつもりはないけど、そんな積極的に言う必要はないんじゃない?」というのが本音だったようです。

そんなちょっとした感覚や価値観は、家族とはいえ、それぞれ違うので、
介護生活の上では、些細なことで不満やストレスに繋がるようになりました。

現状は、母が転倒骨折して車椅子生活になり、
また、入院期間中に認知症の症状も急速に進行したので、
いま一番の症状と言えば、
発語が極端に減ってしまい、失語症の傾向が強くなったこと。

2022年3月、米俳優のブルース・ウィリスが失語症を理由に俳優業を引退し、2023年2月、家族によって前頭側頭型認知症と診断されたことを公表しました。

母と同じ症状を患っている人がいることを知ると、
心強くなるような、安心感のような感覚を覚えます。
また、有名人の公表により、認知症には種類があること、それぞれに症状の違いや特徴があること、
少しでも多くの人に理解してもらうきっかけになったらいいなと思います。

今日はココまで。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?