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対物賠償の話

交通事故賠償実務において対物賠償はシンプルなようで実はそうでもない。要はどこまで面倒見れるかという話なのだけれど、これが結構悩ましい。

よくある話、カスタムされた車両がその対象であるときに、何を基準に計算をすべきか。これが問題となる。通常、いわゆる時価額を基準として分損・全損の判定を行うようになるが例えば第三世代プリウスであったとしてその時価額で算出しようとしたところ実際の車両は社外フルエアロ、ローダウンであったとする。この時に車両本体の時価額で計算するべきなのかどうか、というのは結構悩ましい問題である。それでもこの場合は時価額に加えて市場での再調達価額を調査することである程度の実体的な価値を測ることができるから、社内稟議を通せるかどうかは別として賠償すべき額というのは割と明らかになりやすい。カスタムバイクの場合はかなり難しい。一点もので作成した部品なんかが取り付けられていると主張された場合にそのエビデンスを用意できるのかを事故相手に確認すると大体の場合用意できない。当時いくらぐらいでショップに依頼した、という朧げな記憶のみである。この場合はどこまでその改造を肯定的に評価できるのかで判断するより他ない。うちの会社の場合は私が最終的に金額算定をしてその額で賠償を行うのでちょっとずるい立場に私はいるのだけれど、一般的に上長決済を得なければ賠償できない立場の方は大いに困ることになる部分であると思う。当然ながらこれはレッドブック等全て参照し調査した上で一般的なものではないカスタムパーツだらけの車両の話なので極端な例ではあるが、このパターンにでくわした場合、どこまで賠償できるのかは最後は交渉によるより他ないと思う。無理なものは無理、という立場で話をしながら、一般的な観点からどこまで見れるのか。パーツの価格や工賃など可能な限りのエビデンスを示してもらった上で総合的に判断するより他ない。

一方でカスタム等は特にしていないが、思い出が詰まっている車両をどうしてくれる!という情緒的な損害の主張にも対物ではしばしばぶつかることになる。この場合は主に修理額で全損になっているケースなので対物超過があればそれである程度解決してしまうのだけれど、対物超過も特に特約がないケースでの情緒的損害、これについては心苦しさを感じながらもバッサリと却下するより他ない。法的に賠償義務がないものを保険賠償するわけにはいかない以上、どのような思い出が詰まっているかをとうとうと開陳されたとしても賠償できないものはできないのである。対物超過がついていない場合、こちらから提案できるものとしてはせいぜいが代車未使用部分賠償ぐらいである。実際に利用できる代車を利用せずにその費用を賠償に回すという方法でかなりウルトラCな方法なのであまりお勧めできない、というか本当に代車も必要な場合には当然に使えないので、最後はもう再調達価額を睨みつつ乗り換えの提案をしていくより他ない。この場合は修理見積もりまたは時価額のいずれか低い方の消費税抜き価格の賠償提案から、あとは交渉によることになる。

対物は他にも格落ち損害等複数論点があるのでまたそのうちに第二弾を取り上げようと思います。


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