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容姿いじりを克服したバイト

バイトを始めたとき

大学生の頃、私は真面目にバイトをしていて「人手が足りない」と毎日嘆く日々でした。バイト先は嫌悪なムードで仲が悪く、陰口を言い合う最悪な環境でした。
当時は貧乏学生だったこともあり、せっせと働いていました。

ある日、バイト先には個性的な高校生のギャル、Mさんが現れました。彼女はオーナーや店長に対して、とんでもない言葉をぶちまけることが日常茶飯事でした。「給料あげろや!クソジジイ」と大声で叫んだり、「ハゲ」と呼びかけるのがお決まりの挨拶でした。

正直なところ、私は彼女の存在に最初は戸惑いを覚えました。彼女がなぜこのバイトに採用されたのか、疑問に思わずにはいられませんでした。彼女の振る舞いや言葉遣いには、私たちの普段の常識や礼儀作法が通用しないような感じがありました。ただ、不思議なことに、私は彼女に対して嫌悪感を持つことなく、むしろ彼女の言動に面白さを感じてしまう自分がいました。

彼女は長い黒髪を振り乱し、派手な服装でいつも目立っていました。バイト仲間たちが戸惑っているなか、私はなぜか彼女の言葉に惹かれてしまい、彼女との会話に笑いを見出していました。彼女がオーナーや店長に対して放つ破天荒な言葉や独特のユーモアセンスに、私は彼女の魅力を感じずにはいられませんでした。
「Mさんが来てからかなり良くなったね」と同僚が言っていたのを覚えています。

彼女の笑いのセンスは本当に一風変わっていて、その場にいる人々を笑わせる力がありました。私たちが真面目に働く中、彼女の突拍子もない発言や行動は、どこから湧き出てくるのか不思議でしたが、それが彼女なりのコミュニケーションのスタイルなのだと理解しました。

彼女が「こんなことまでさせるなら給料あげろや!クソジジイ!」と叫ぶたびに、周りの人たちは困惑した表情を浮かべるものの、私は思わず笑ってしまうのです。彼女の発言や冗談には、普段の生活では出会えないようなユーモアが詰まっていたのです。彼女の言葉には時に辛辣な皮肉も含まれていましたが、それが彼女が人々を笑わせる一つの手段であることを私は感じていました。

自分が髪型を変えた

しかし、不思議なことに私は彼女の発言を本当に面白がる自分がいました。彼女の言葉遣いや態度に嫌な感じはせず、なぜだかとても好かれるタイプだったのです。彼女の突飛な言動には、私が知らなかった世界のドアが開かれるような魅力がありました。
誰かが失敗しても笑って流し、本社から来た社員のセクハラに対しても「キッショ」と言ったりしていて、嫌なことにはNOをハッキリ言えるタイプでした。

授業中なんとなく気分が変わって、休み時間のあいだに千円カットでソフトモヒカンにしました。私がバイト先についたとき、彼女はいつものようにオーナーや店長に対して「給料あげろや!クソジジイ」と叫んでいましたが、今日は何かが違いました。彼女は私の髪を見つけるなり、ものすごく大笑いしながら言いました。「おい、なんじゃその頭は!知能レベルが下がったんじゃないか?」

私は初めて自分の変わった髪型がおもしろくなり、笑わずにはいられませんでした。彼女の笑い声が店内に響き渡り、周りの人々も思わず笑い出しました。この一瞬の笑いの連鎖が、私の心に大きな変化をもたらしました。
テレビで容姿いじりを見ても面白くなかったのに、心から笑えたのです。

なんとなく覚えていること

以来、私は彼女との関わりを深めるたびに、普段の生活において笑いの力の素晴らしさに気づいていきました。彼女のユーモア溢れる言葉や冗談は、私たちの日常を彩り、明るくしてくれる存在でした。彼女の周りにはいつも笑いが絶えず、それを共有することでバイトたちの絆も深まっていきました。

しばらくして退勤後にみんなで食事に出かけることになりました。彼女はいつものように面白い話をして笑いを誘いました。私は思わず彼女に言いました。「Mさん、どうしてそんなに面白い話ができるんですか?」

彼女はにっこりと笑って答えました。「笑いって、人とのつながりを深める魔法みたいなものだと思うんだ。だから私は常に笑いを追求してるの。人を笑わせることができるって、すごく素敵なことだと思わない?」

私は彼女の言葉に感銘を受けました。芸人でもないのに笑いが人とのつながりを深める魔法のような存在であること、それを彼女のように自在に操ることができる人々には特別な才能があるのだと思いました。

彼女のおかげで、私は容姿いじりを克服することができました。以前は容姿について嫌な言葉を投げかけられることに敏感で、それを受け入れることができませんでした。しかし、彼女のユーモアセンスに触れるうちに、笑いを通じて人とのつながりやコミュニケーションを楽しむことの大切さを学べたのです。

日記を読み返していたら

最近、髪型を変えたので思い出しました。
当時の日記を引っ張り出したところ「働きたくない」と書き殴っていたので思い出は美化されるんだな、と思いました。

以上です。

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