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鎧と共に演出したあのシーンが蘇る

「何かサプライズしませんか?」


結婚式の打ち合わせの際に軽く話がでた。ウェディングプランナーの一言である。
打ち合わせをしている際に一呼吸をおく場面に出くわした。籍をいれたばかりの新婚ホヤホヤの妻がお手洗いに行った隙間の出来事であった。


その一言により。何かしたい。何かしたい。何かしたい。普通でないことをしたい。と考え続けた結果、「鎧を着る」という結論に至った。正しく言えば装着したいというのか。


鎧はどんな鎧か。日本人であるからには甲冑か。
甲冑を検索するも値段が半端な値段ではない。中途半端なウケ狙いレベルで購入できる金額ではなかった記憶がする。僕が目にしていたのはガチの甲冑である。
イメージでいうとキングダムの将軍や名の知れた強い兵が身にまとっているあれである。


結局、結婚式の費用も含めて、本物の鎧を購入できる余裕はない。
ということで、目についたのが日本風の甲冑ではなく、外国産の鎧である。
外国産は安い。安いと言っても3万円くらいはしたのだが、日本の甲冑に比べるとリーズナブルである。


Amazonがまだそんなに普及していない時期でもあり、訳の分からないサイトでひとまず購入するための手続きを行った。
僕は西洋風の鎧を手に入れることになったのである。鎧が自宅に届くのだ。
こうなったら隠し事はできない。鎧が自宅に届くのだ。隠せる訳が無い。


結局はもう、サプライズどころではない。
これは一種の披露宴内での演出である。そう、楽しんでもらうのだ。足を運んでくれた家族や友人に。
僕は鎧が届くのを待つのである。


どんな鎧か説明をすると、鉛のような鎧ではない。色は銀色でテカテカしている。もちろんプラスチック製だがよく輝いている。パーツ部分は野球のキャッチャーを思い浮かべてほしい。キャッチャーは脚、上半身、物によっては肩の部分もガードされている。

そして顔部分、頭、大事に守られているのである。股間部分には硬いプラスチック製のものを入れているキャッチャーもいる。


注文した鎧には股間部分はノーガードである。股間部分は守られている。きっと大丈夫だ。なんくるないさ。
強いハートを持っていれば何でもうまくいく。足の甲も守られている。顔の部分も槍を入れられないように開け閉めができるタイプだ。
無敵である。大将軍になった気持ちだ。これで士気をあげられる。

プラスチックだけども。


装着方法についてはゴムで止めるタイプだ。パーツを肌へ密着し、ゴムで止める。小学校の体育着の帽子ののイメージだ。


脚の部分に関してはプラスチック部分が肌にあたり痛みを感じる。
どうせそのシーンは2分程度である。我慢できる。2分に数万円使う。いいのだ。これでいいのだ。やりたいことをやることが1番健康にいい。


そして結婚式のプログラムが予定通り進んだ。時間のロスは出たが多少の誤差は仕方ない。時間内に終われば延長料金は払わないでいいのだ。
鎧の時間もあっという間に終わるだろう。鎧よ君に出会えて良かったと心の中でありがとうを伝える。


そして、その時はやってきた。心臓の鼓動が止まらない。舞台からの出場ではなく、通路側の招待客が出入りするドアからの出場である。スタンバイOK。後は脳内で想像した通りに動けばいいのだ。アドレナリンが放出している。選曲した音が鳴るまで残り3分。


そう曲名は「レイン・イン・ブラッド」スレイヤーの代表曲である。
場内に爆音が流れる。ギターの音色とドラムの音が鳴り響く。
会場の雰囲気は最高だ。

大好きな音楽と共に鎧を着た僕が一歩踏み出した。 

#結婚式の思い出 #披露宴 #スレイヤー

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