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お客様店員様

7年間働いたスーパーを退職した。

1年半〜2年ぐらいのペースで転勤を繰り返しながら、毎日慌ただしく走り回ってきた。

スーパーとは、不特定多数の人間が大量に集まる場所である。

水飲み場で米を洗うおじいちゃん、毎日同じソファで寝てるおじいちゃん、毎日電話をかけてきて商品の値段を聞きまくるおじさん、よく電話をかけてくるが何と言っているか一言も聞き取れないほど滑舌の悪いおじいちゃん、たくさん買い物して毎回全部返品するおじさん、視線が床に向くほど腰が曲がったおばあちゃん、いつも横暴な態度で買い物に来るが酒焼けした声で何言ってるか分からないスナックのママらしき女性、毎日決まった時間に同じチラシを大量に取っていくおじさん、勝手にレジに置いてあるホッチキスを使うおじさん、など。

こんな感じで面白いこともあるのだが、ほとんどは疲れる案件ばかりである。
もちろん、店側に非がある場合は謝罪するが、店側に非がない場合がとにかく面倒くさい。

自分の勘違いを認めず、店のせいにして返金してほしいという人
自分の使い方が誤っていて商品が壊れたのに不良品だという人
お店に関係のない怒りを、とにかく誰かにぶつけたかった人
家に詫びに来いという人
自分にだけ優遇しろと言う人

などなど・・・

若かりし頃、おばさんの私に対する態度が悪かったので、同じように接してみたら見事にクレームになったのは良い思い出である。

どんな辛いことも「仕事だから仕方ない」と割り切って働いていたが、やはりこんなことに毎日対応していると性格は歪み、精神的な疲労が溜まり、好きなことに向き合う余裕など残っていなかった。仕事の中でも好きで楽しい部分もあったが、それよりも辛いことの方が上回ってしまった。もちろん、仕事でお金を稼ぐことは楽ではないと分かっているが、こんな思いをしてまでお金をもらっても嬉しくないと思った。なんのために働いているんだろう、なんのために生きているんだろう、と思った。

それでも、長く働いているとたくさんの人たちが味方についてくれて、楽しく適当に仕事ができるようになってきた。
そんな頃に、結婚をした。一番の味方ができたことで仕事で嫌なことがあっても、そんなに辛くなくなってきた。その流れで(?)、ひとつ大きな仕事を任されることとなり、無事にそれをやり遂げた。大仕事が成功し、達成感を得たとともに「この仕事飽きたな〜」という気持ちが強くなって、退職をした。

他にも、会社に対して「部署移動の希望が通らなかった」とか「給料が見合わない」とか退職の理由はあったけど、いろいろと面倒くさかったので「印刷会社に転職する」と嘘をついてさようならをした。

会社で学んできたことは、今後の自分に役に立つこともあるので頑張ってきたことは無駄では無かったと思う。
水飲み場で米を洗っていたおじいちゃんが元気でいることを願って、今はイラストを描いている。

2023.5.1

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