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自伝小説 ままごとかあさん21 ままごとかあさん

あの資格を取れば

あの服を着れば

あのお店へ行ったら

あのケーキを食べたら

あの本を読んだら

あの映画を見たら


何か変わるかもしれない。



ワタシは外側が変われば

内側のドロドロとした苦しさから

開放されると思っていた。

何かが違うと思っていたが

不快すぎる感覚を感じたくなくて

がむしゃらに進み続けた。




正社員になれば

結婚すれば

子どもができたら

……


結婚して8年目に

ようやく子どもを授かった。

転職してからすぐの妊娠だったので

産休はもらえず

産後2か月で復帰した。


家事も

仕事も

育児も

やらなければ


心身はボロボロだった

それでも止まること無く

進み続け

無理をして歪んだ何かは

娘に現れはじめた。



3歳半健診を過ぎて

娘の育て辛さはピークに達していた。


ワタシは気づきはじめていた

これはワタシのせいだと。


娘の身体にも

アレルギー性鼻炎や便秘の症状が出始めた。


娘にはワタシのような

苦しい経験は絶対にさせたくなかった。

ワタシがこの家族の負の連鎖を断ち切ろう。

ワタシは自分の内側を変えようと決心した。




仕事のため

いつものように娘を実家にお願いする。

娘はすっかり

おじいちゃんっ子になったいた。

娘はあまり母には懐いていない。

でも、

娘と母はままごとをする時は仲がよい。

ままごとで遊ぶ2人を見ていたら

ワタシも母に泥だんごを

ご馳走してあげたことを思い出した。

そうだ、

母は昔もままごとが好きだった。

「おかあさんは

何でおかあさんになったの?」

不意に母に質問していた。

「子どもが3人ほしくてね」

いつかも聞いた言葉が返ってきた。

ビミョーにズレた答え。

楽しそうだ。


母はまるで3歳の娘のようだと思った。


そうだ

母は3歳の娘のように

ずっと独りでおままごとをしているんだ。


子どもは3人

おウチはここに立てて

夕ごはんは何を作ろう……


ままごとの世界で生きる

ままごとかあさん


ずっと変わらず成長しない世界。

それはそれで幸せかもしれない。


「おかあさんは幸せ?」

そう聞こうと思ったけど

ワタシは何も言わずに

楽しそうにままごとをする

娘と母を見ていた。





おわり

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