民主主義と独裁主義 食べログの何が問題だったのか?

食べログの裁判が終わった。一審判決ではカカクコムに対して3840万円の賠償命令が出たそうだ。食べログは即日控訴したため引き続き高等裁判所で争われることになる。食べログの何が問題なのだろうか?ということを考えている人もいると思うのだが「民主主義と独裁の違い」を考えると簡単に整理できる。政治のフレームワークが分析に使えるのである。

ミシュランにはミシュランが勝手に決めた基準がある。つまりミシュランは独裁だ。だがその基準が読者に受け入れられることによってミシュランガイドは売れる。おそらくミシュランが独裁ではなく独善になれば売り上げは落ちミシュランは忘れサラルことになるだろう。これはザガットも同じことである。

一方の食べログは一見民主的な仕組みが取られている。レストランの評価はみんなの一票で決まる。民主的であるから食べログはフェアなのだと誰もが考える。だから食べログには人気があった。

ところが実はカカクコムは営利企業であり食べログも営利活動だ。カカクコムは客とレストランからなんらかの収益を得ているはずだがその構成比はよくわからない。いずれにせよ食べログは営利を最大化するために「民主主義」を調整したようだ。このため多くの利用者は食べログは民主的なやり方でレストランを評価していると錯誤したままで結果が歪められてしまったのだ。

だが民主主義が歪められているからといってそれが即座に違法行為になるわけではない。

公正取引委員会はこうした操作が競争を歪めると判断したようだ。つまり問題は競争の阻害である。古谷一之委員長は「店に不当な利益を与えた場合は独占禁止法違反になる恐れがある」といっている。運営会社と有料契約をしたら点数が上がったり心当たりがないのに点数が下がったりしたという苦情がすでに寄せられているという。

今回の裁判でアルゴリズムが明らかになれば「実は食べログの点数は民主的に決められているわけではなくカカクコム側が操作した擬似民主主義でしかない」ということがわかるはずだ。すると、利用者はおそらくそれぞれの判断で店を選ぶことになるだろう。操作されていても構わないと考える人もいるだろうし、操作されているなら信じないという人も出てくる。問題は食べログの民主主義が単なる「擬似民主主義」でしかないにも関わらず「それが民主的で公平だ」とされている点にある。これがユーザーに誤解を与え競争を阻害すると公正取引委員会は考えているのだ。

普段の政治論議を見ていると民主主義はとてもいい公平な制度で独裁主義はいけないことのように言われることが多い。実際に食べログが人々の間に定着しているのを見てもわかるように人々は民主主義を信任している。

食べログの民主主義がビジネス的な思惑で歪められていたのと同じように実際の民主主義も様々な大人の事情で歪められている可能性が高い。民主主義に比べ独裁の方がいいとまでは言わないが、民主主義にも様々な限界がありその判断は公平でないかもしれないということは知っておいた方がいいだろう。歪みを完全に無くすことはできないと考えると「どう歪んでいるのか」を透明化することは極めて重要なのだとも思える。

参考文献


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