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心と心をつなぐ

 子どもたちに、こんな質問をしたことがあります。

「友だちとふたりで遊んでいるとき、お母さんがやってきて『ここにケーキが1つあるから、仲良く食べてね』と言いました。あなたはそれを2つに分けて友だちと一緒に食べました。あとからお母さんが『どうしてケーキを2つに分けて食べたの?』って聞いたら、あなたはなんて答える?」って。

「お母さんがそう言ったから」
「友だちに嫌われたくないから」
「ケーキをあげないと、友だちがかわいそうだから」

 こんなさまざまな答えが返ってくるなかで、とっても印象的だった答えがありました。

「分けて食べたら楽しいから!」

 楽しいことやうれしいことは独り占めをするよりも、分け合った方がずっとハッピーな気分になれる。。。そのことを無意識のうちに感じ取っているんだなぁと思って、私はとても温かい気持ちになりました。

 たしかに世の中には、自分だけイイ思いをしようとする人が大勢います。
 でも実際に、自分だけがイイ思いをしてしあわせになっている人なんてどこにもいません。
 なぜなら、私たちは自分ひとりだけでしあわせになることはできないからです。

 ドイツには、『ともに喜ぶと喜びは2倍になり、ともに悲しむと悲しみは半分になる』という諺があります。
「自分さえよければいい」という独りよがりの喜びは、心を分かち合って得られる「ひとりじゃない」という喜びに比べたら、微々たるものだということです。

 しあわせは、何かを独り占めにすることで深まっていくものではありません。分かち合ってくれる人たちが増えていくことで深まっていくものなのです。
 そこには共感する心かあり、私たちはそれによって一体感を得ることができるんですね。

 あなたのしあわせは、あなたがどれだけ深く相手の気持ちをくみ取ってあげられるかにかかっています。
 自分から進んで“人に共感する力”を高めていきましょう。
 まずは目の前の人の喜びを、一緒に感じてみてください。

 そのためには、些細なことでも相手が喜ぶ瞬間を見逃さないようしなければなりません。
 相手が口にする言葉だけでなく、表情や動作にも意識を向けましょう。かならず、ふとした感情が伝わってくるはず。

 それをキャッチして、その場で「よかったね」と声をかけて喜びを分かち合ってください。
 共感する力とは、「自分の気持ちよりも、相手の気持ちを先に考える」という思いやりなのかもしれませんね。

 ちょっとしたことでも、相手との一体感を味わえるようになると、共感の感性はぐんぐん磨かれていきます。
 すると、喜びだけに限らず、相手の悲しみや心の痛みも、自然にくみ取ってあげられるようになります。

 心を痛めている相手は、つらい気持ちを分かち合ってくれる人がそばにいるだけでいやされるでしょう。
「ひとりぼっちじゃない」と感じられるだけでも、壊れかけた心が救われたような気がするに違いありません。

 手をつなぐように、心と心をつないで、共感し合いながら生きていきたいですよね。
 それが真に「仲良く生きていく」ということだと思います。


     ★ 著書『うえを向いて泣こう。』(サンクチュアリ出版)より★

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