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MMPIとMMPI-3の橋渡し(ができたらいいのに)

MMPIとMMPI-3って別物か

 MMPI-3が2022年9月に発売されます。 
 MMPIの本国アメリカの歴史からすれば、MMPI→MMPI-2→MMPI-2RF→MMPI-3。われわれは、中二つを飛ばしてのMMPI-3です。もう別物?となってしまうのでしょうか
 実際MMPI-3は、MMPI-2RFの発展したバージョン。2RFは、RC尺度のノートに書いたけれども、基礎尺度にごっそりテコ入れして新しいものになっています。基礎尺度もなくなってRC尺度になってしまう。伝統的な2点コード解釈もきっとない。妥当性尺度だって新しいのくっついてきている。追加尺度は・・・・見る影なく・・・ 
 それでも、RC尺度のノートにも示しましたが、「基礎尺度とRC尺度は相関関係」がある。統計的なバックボーンは整ってはいます。あらゆる面からいて、おそらくMMPI-3が優れている、はずです。きっと多くの被験者だって、「最新の」「より研究がしっかりした」というものを求めると思うのですよ。

検査者の不安

 だけれどもユーザー=検査者は恐れます。いままでの「臨床経験が通用しない」ものだったらどうしよう?、と。例えば、ロールシャッハの図版の色とか形とかちょこっと一部分を書き換えてあって「でもさ、同じようにデータ出るから統計的に」なんていわれたって、困るんじゃないでしょうか。描画検査の色鉛筆がクーピーになったり。臨床経験は道具の細部にやどるのではないかとおもうのです。
  例えばMMPI第4尺度の怒りは「実はその人の秘めたエネルギー」であるとか「親に虐げられた」怒りなのか「かつて依存的であった親に急に引き離された」怒りなのか。こうした解釈の乗せ方がしやすいのも、なじみの同じ道具だからこそ。MMPIを使ってきた経験によって、多くの患者さんとのやりとりのなかで「この尺度・この道具はこんな切れ味なんだ」、と臨床家各自のイメージが宿るのでしょう。まさに臨床家の経験智。(ここらへんはこのノートも参照ください)。
 統計的数値や、テキストの解釈文descriptorも大切です。でも、各尺度、個々のプロフィールに上記のような個別の様々な色合いの異なるものを、”生きた”要素をどれくらい乗せれるか、で大きく異なるのではないかと思うのです。

こんなことができたらいいのに

 そこで考えたこと。
 可能ならば、MMPIとMMPIー3の橋渡しができるのならばこんなのできないものでしょうか。

 ・MMPIー3のなかで、MMPIから使われている項目を基に、「基礎尺度」が算出できるようにする。
 ・もしくはMMPI-3に追加で昔の項目をくっつけて、MMPIが丸っと算出できるようにする(少なくとも基礎尺度くらい。新日本版の略式程度とか)

 
 標準化群の総データを持っている研究者ならば、データ(平均値、標準偏差)が算出できるのではないかとおもうのです。持ってる人がいたらできないものかきいてみたいです。できませんか。ぼくはもってないからできません。
 MMPIとMMPIー3のデータが常に並ぶことで、今までの理解と新しい解釈とを比べることで、新たに見えてくるものがあるのではないか。そのほうが少なくとも臨床現場には役に立つのではないか、と思うのです。
 


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