USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか

○筆者が衝いた一番最初の問題

まず筆者がUSJのマーケターとして、衝いた問題はこだわるポイントが間違っているという点です。
本書で書いている問題とは、その「技法を何のために使うのかという目的がブレてしまい、本来の消費者価値からはずれてしまっている」というのです。
限られた経営資源を消費者価値の向上に正しくシフトさせることもマーケターの仕事と書いています。
ちなみに高い品質の製品を作っているのに、なぜか売れないという事は技術思考の日本の企業にはよくある事だそうです。

○神様の正体「確率」を上げる為のイノベーションフレームワーク

ここでの神様は、確率と言われています。
良いアイデアを生み出す方法は、良いアイデアを思いつく確率を上げる方法です。
その確率を高める為のイノベーションフレームワークのは、4つの柱から成り立っています。

①フレームワーク
②リアプライ
③ストック
④コミットメント

それぞれ詳しく解説していきます。

①フレームワーク

アイデアを考えるにあたって、「どこに宝が埋まっているか」に予想をつける戦略眼、それがフレームワークの役割です。
フレームワークという道具を使って、探すべきアイデアの手掛かり(必要条件)を推理して導き出します。

そして、筆者が宝探しによく使うフレームワークが3つありますのでご紹介します。
●戦略的フレームワーク
戦略を考える時のフローを利用して、考えるべきアイデアの必要条件を導き出す方法
目的→戦略(必要条件)→戦術(アイデア)の順番で考えていく

男性が彼女と喧嘩した後、どうやって仲直りすれば良いかを例としてご説明します。
・目的:そもそも達成すべき命題は何か?
↓(彼女と仲直りする)
・戦略:目的達成のために経営資源を何に集中するのか?→これがアイデアの必要条件
↓(彼女の好きなもので観心をかう)
・戦術:具体的にどのように実現させていくのか?→これがアイデア
 (彼女の好きなアーティストのコンサートのチケットを上げる)

●数学的フレームワーク
一言で言うとロジックそのもの
数学的な思考を使ってビジネスの因果関係を論理的に分析し、現象の奥底にある問題の本質や可能性に辿り着くアプローチ

・「足して100になる仮説を立てて検証する」
こちらでも例をお伝えします。
100の面積の畑をAとBに分割し、宝が埋まっていると仮説を立てたAを掘ってみます。
AとBの割り方は仮説によって変わります。
50:50でも60:40でもいい。ポイントはA+B=100になる事です。
Aに宝がなければ、次にBをCとDに分割し、Cを掘ってみます。
Cからも宝が出なければ、Dを分割し・・・・を繰り返す。

●マーケティング・フレームワーク
人の頭の中に強力なブランドを構築していくための勝ちパターン
※マーケティング・フレームワークは専門的な領域になる為、簡単な説明となっています。

②リアプライ

既にあるアイデアをいただくことをリアプライと言います。
自分自身でアイデアを生み出すのは、良くないと筆者は言います。
フレームワークで考えるべきアイデアの必要条件が明確になったら、最初に世の中に目を向けましょう。
外に目を向けて積極的にアイデアを盗みに行った方がいい為です。

この世界中のどこかに、過去から現在に至るどこかに、似たような問題に直面した人がいるのではないか?と疑ってかかりましょう。

世界からアイデアを盗むことで以下のメリットが得られます。
・どこかで成功しているアイデアを土台にした方がプロジェクトに圧倒的なスピードをもたらす
・どこかの消費者で試されている分だけ成功の確率も高い
・これが最も重要なのですが、アイデアを自分で生み出すための引き出し(ストック)がものすごく増える

③ストック

蓄積された豊かな情報のことを「ストック」と言います。
釣りに例えると、ストックとは釣果を上げるために有効な知識や経験などの「情報の質的・量的な蓄積」を指します。

ストックが強ければ強いほど、問題に対しての解決策を思いつきやすい。いわゆる引き出しが多いと表現される長所です。

☆気がつかなければ考えられない

多くの人は会社で働きすぎと筆者は言います。
自分へのインプットを増やす機会をどれだけ作れるが、キャリアの差を生むことを自覚しほうがいいのです。

④コミットメント

最後に成否を決めるのはコミットメントになります。
コミットメントとは、前の3つと違い精神論のことを言います。
「最後までやりぬくぞ!」と言った覚悟や決意、情熱のことです。

淡白な人にアイデアは微笑んでくれません。
「アイデアは絶対に見つかる。既に存在するだけで自分が見つけられていないだけだ」と諦めないで必死に考える事が重要だと言います。

○リノベーション戦略

リノベーション戦略とは、既存のものを新しく生まれ変わらせるべく、手を加えて改造・改築し、集客を促すことを言います。
実は、題名にもある後ろ向きのジェットコースターもリノベーション戦略によって、大成功しました。

リノベーション戦略は新たに付加する価値次第で成功するだろう、マーケティング技術次第で可能になると筆者は思いました。
この場合のマーケティング技法とは
①正しいターゲットの設定(WHO)
②正しい便益の設定(WHAT)
③正しいコミュニケーションの設定(HOW)


上記の3つの組み合わせの事を言います。

リノベーションの成功の鍵は、「変化の度合いはリノベーションなのだけど、いかに新築だと思ってもらえるのか」
その1点に尽きるのです。

○最後に

筆者には強く湧き上がるモティベーションがあります。
それは、単純に本当にすごいもの、美しいもの、楽しいもの、感動するものを、何としても日本の人々に見せたいという強い願いです。
「人を元気にする」という大義に我々自身が生かされていることに感謝して、USJの従業員は今日も頑張れるのです。

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