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人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学【要約/松本健太郎】

まいど!ひでやです!

今回はデータサイエンティスト・松本健太郎さんの「人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学」をご紹介いたします。

本書は、「ヒット商品には必ず「悪」の顔がある」と提起し、マーケティング理論、行動経済学、データサイエンスを用いて、ヒットした商品、事情、人の背景に隠されている"悪と欲望"を読み解いています。

ヒット商品やM-1グランプリなど日本で起きた様々な事例を通じて、人間の意思決定に生じているバイアス、しかも合理的ではないのに本人は合理的だと考えてしまうクセについて説明し、各章の冒頭で「日本の昔ばなし」が出てきたり、具体的なコマーシャルやドラマなどが登場するので、話の内容も分かりすいです。

人間の心には“悪“が必ず潜んでいて、それを認めない限りは人間を理解しているとは言えないんだそうです。

今回は僕自身がこの本を読んで刺さった個所を重点的に解説していきたいと思います。

それでは早速参りましょう!


行動経済学とは

行動経済学とは、”人間は高度で合理的である”ことを前提とする経済学のアプローチは不完全であり、人間は常に合理的な行動を取るとは限らず、不合理な行動を取ることもあるという、心理学を応用し、より現実に即して経済を研究する学問です。

「心理学+経済学」とも呼ばれています。

平たくいうと、「人間って賢い判断をするように思われているけど、必ずしもそうじゃなくて、時には自分をコントロールできずに衝動買いもするし、数字にも騙されるよね?」ということです。

意思決定にバイアスがかかってしまうのが当然で、100%合理的に判断して、行動にうつせる人なんていないのです。

例えば、売上も立たず引き際に来ているのに、1,00万円投資して構築したビジネスだから、そろそろユーザーが増えるはずと信じ、サービスの提供を継続してしまう(サンク・コスト効果)

買うつもりがなかったのに行列ができていたからつられて並んで買ってしまった(保有効果)などです。

なぜサラダマックは売れず、クォーターパウンダーは売れたのか

「ヒット商品には必ず"悪"の顔がある」と著者は言います。
でもただ、"悪“が悪いわけでありません。

“善"だけではなく、“悪"もあるんだと認識することが大切なのです。
“悪“には、時に想像以上の爆発力を発揮し、想定以上のヒットを生み出す力があり、その確率は“善"よりも“悪“の方が高いようです。

その一例として本書で取り上げられていたのがマクドナルドの「サラダマック」。
当時業績不審だったマクドナルドが新商品を開発するに当たって、消費者調査で挙がってきた
 「ヘルシーな食事を手軽に取り入れたい」
 「マックは不健康そうだから行きたくない」
という声を聞き、マクドナルドらしさを取り入れた結果「サラダマック」は生まれました。

しかし結果は惨敗。大赤字になってしまいます。

ではなぜそんなお客の声を取り入れた商品だったのに売れなかったのか?
人は少しでも自分を良く見せたい願望が働き、騙すつもりのない「キレイな嘘」をつく場合があります。

つまり、お客がマクドナルドに求めていた「ヘルシーなサラダが食べたい」はキレイな嘘。

そして次に開発したのは、健康とは真逆の「クォーターパウンダー」です。
従来のパテのおよそ2倍サイズのパテを使用した背徳感の塊のようなこの商品が大ヒット。

表では「健康」「痩せたい」など“善“が前面に出ていますが、裏には「ジャンクなものをしこたま食べたい」「肉にかぶりつきたい」といった“悪"が存在していて、その“悪“を刺激することでヒット商品が誕生したのです。

このように「データが必ずしも真実ではない」のです。
調査結果の通りに実行して成功していたら、世の中のものはほとんど成功してしまいます。

結局は真実を見抜く洞察力とセンスが必要なのです。

宝くじを買う人の目的は高額当選だけではない

結論を先に言うと、人が宝くじに求めているのは、「ドキドキ・ワクワク感」です。

決して「お金を増やそう」としているだけではありません。

 宝くじは期待値計算をすると、必ず損するようにつくられていることがわかります。
2019年の年末ジャンボ宝くじの期待値は、1口300円の購入で150円。
「宝くじ=300円を入れると150円が返ってくるツボ」という風に考えてみると宝くじの期待値がいかに低いのかがよくわかります。

ちなみに筆者ご自身も、たまに「わんにゃんスクラッチ」というスクラッチを購入するそうです。

2,000円ほど購入して、だいたいハズレ、よくて6等の200円しか当たらないそうです。
「お金を増やす」という目的とすれば「お金をドブに捨てている」ようなもの。
しかし筆者によれば、「2000円でこれだけドキドキワクワクできるものはない」。
つまり、目的は「お金を増やすこと」ではなく、興奮を味わうことなのです。
とすれば、宝くじは「ジェットコースター」「映画」「プロレス鑑賞」のような類の商品と言えます。

こういった「感情」の部分で、人はお金を払います。

「キレイごと」では人は動かない(SDGsが浸透しないわけ)

ここ数年、目にするようになった「SDGs」。
2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」です。

「平和と公平をすべての人に」「海の豊かさを守ろう」「ジェンダーの平等」など、その内容はバラエティに富んでいます。

確かに内容は素晴らしいけど、個人レベルで考えてみると「だから何?」「関係なくない?」となりがちです。

自分もそう思います。

そう、人は正論では動かない生き物なのです。
人はストーリーで動きます。「身元の判る犠牲者行動」と呼ばれる心理現象があります。

被害者が特定可能な個人であるとき、そうじゃない場合と比べて、はるかに強い反応を起こすことを指します。

コロナウィルスの感染者数は毎日報道されていましたが、志村けんさんが亡くなったことで、その恐怖が一気に浸透していったのは、記憶に新しい出来事です。

人の心は具体的な数字や理路整然とした主張よりも、具体的なストーリーを見ることで頭よりも感情が刺激され、行動に移るのです。

ただし、そのストーリーも人工的であったりすると警戒心が働いてしまいます。

最近では日常生活丸出しの部屋で何でもないルーティンなんかを投稿しているYouTuberが人気が高いのも、視聴者により自然な印象を与え、本人の暮らしぶりからストーリー性を感じるためかもしれません。

カイジで紐解くクズが愛される理由

皆さんは、カイジという漫画をご存じでしょうか?
主人公である、伊藤開司は、バイト先の後輩の連帯保証人になったことが原因で、多額の借金を背負うことになります。

そして多額の借金を返すために「エスポワール号」に乗り、命を賭けた危険なギャンブルをするハメになります。

カイジは、かなりの人気を誇り、アニメ化・映画化されました。

そんな、絶大な人気を誇るカイジは、「自堕落でダメなクズ人間」です。
フリーター、パチンコ通い、根性なし、とにかくダメな人間です。

普通、漫画やアニメの主人公というと、ワンピースのルフィや、最近では鬼滅の刃の炭次郎など、一本の芯のようなものが通っていて、目的達成のためには努力を怠らない、とてもカッコいいキャラクターが多いですが、カイジは真逆です。

しかし、そんなカイジのクズっぷりに読者・視聴者は熱狂するのです。
我々は決して完璧な人間ではありません。
各々が自分が感じる欠点を抱えて生きています。

カイジまではいかなくても、これまでの人生を振り返ってみると、それぞれのダメな一面やクズな行動を取ってしまったことがあるのではないでしょうか?
カイジのような人柄は、優秀な人よりも親近感を感じやすいキャラクターです。
カイジレベルのダメ人間は、そういるものでもないので、多くの人が「カイジは自分よりもダメな人間だ」と感じることが出来ます。
そういったダメな人間ほど、周りから愛されます。

他にもこち亀の両さんや芸能人では出川哲朗さんなど、「ダメな人」として人気を集めている人達がいます。
やはり、優秀で完璧な人よりも、隙がある人の方が愛されやすいのです。

まとめ

著者は「膨大なデータを眺めて『次のヒットは確率的にこれ』と予想するよりも、人間の悪の側面を眺めて『こういう煩悩は誰もが持っているからヒットしそう』と予想する方が、よほどヒットする確率が高いです」と述べています。

人間の本質を理解したい方は是非読んでみてください
マーケティングをする人には必須の知識ばかりです。


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