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地域でアニメを産業化するという事

アニメの課題

2022年11月8日に日本動画協会から2021年のアニメ産業市場は前年比113.3%となる総額2兆7,422億円と発表されました。コロナの影響で2020年はマイナス成長となりましたが、昨年は反転して過去最高となるなど、産業としてのアニメの可能性はコロナを経ても大変高いものがあると感じました。

アニメ産業レポート2022(日本動画協会)より抜粋

広義のアニメ産業は企画から制作、流通まで全てを含んでいますが、私自身はアニメの根幹は「制作する事」であり、そのメインプレイヤーは「クリエイター」だと考えているため、約10年間アニメ業界に身を置いている中で、考えていた事は、

・クリエイターがモチベーションを高く働ける環境はどうやれば作れるか?
・アニメ制作をもっと効果的、効率的に行える方法はないか?

といったところでした。

アニメ業界の産業構造(イメージ)

当然ですが、アニメ産業はアニメ作品がある事で発展し、それを制作する多くクリエイターの皆さんのおかげで成立しています。そういった中で今自分が取り組んでいる事業テーマは、

地方におけるクリエイター人材の発掘&教育を通じたアニメの地域産業化

になります。

クリエイターを軸にしてアニメを地域産業にしたいと考えた経緯は様々ありますが、大前提としてはアニメが成長産業である一方で首都圏で働くクリエイターは「成長産業で働いているのに精神的にも身体的にも疲労を感じている人が多いのは何故なんだろう」と考えた事からでした。

アニメーション制作者実態調査報告書2019(Janica)より抜粋

2019年の調査では精神的疲労を感じていると回答した人が79.7%、身体的疲労を感じていると回答した人が79.2%でした。

アニメ産業は約9割の制作会社が東京に集中しているため、特に地方から上京してきた若いクリエイターは東京で仕事と生活を両立する事が大変だという事は容易に想像できますが、とはいえ、東京は大変だよね、という簡単な話ではなく、仮に地方でアニメ制作の環境が作れたのなら、クリエイターがモチベーション高くアニメ制作に集中できるのではないか?と思ったところもあったので、今それを実践しています。そして設立したのが高知県初となる手描きアニメの制作会社スタジオエイトカラーズです。

ただ、地方でアニメ制作をする大変さももちろんあるため、現在はデジタル制作のワークフローを追求する事で東京ではないというデメリットも克服していこうと考えています。東京でも地方でも、場所に関係なくクリエイターがモチベーション高くアニメの仕事が出来るようになる事が目指すべき形の1つであると考えています。

地域の課題

私自身は学生時代から社会人になるまでずっと首都圏で生活をしていたため、地域の課題を体感した事がありませんでした。アニメ業界でも当初はずっと東京での活動がメインでしたが、ご縁があって2015年に京都で開催した「セルアニメ新時代研究部会」をきっかけに地方でのスタジオ経営を検討するようになりました。この時から地方スタジオの設立を検討するようになりましたが、その過程の中で、地域にはそれぞれの課題や強みがあって、東京でやってる事をそのままやればいいというものではない事を理解しました。

2015年から地方でのスタジオ経営の検討を続け、様々な地域での可能性を模索しましたがなかなか実現には至りませんでした。もちろん私自身の力不足という事もありますが、考えたポイントの1つに「その地域にとってアニメ制作会社は必要なのか?」という事があり、地域にとって必要な会社になりうるかどうかという事は、地方でスタジオをやるうえで大切にしたいと思ったところでした。地域の皆様に理解を頂いた上で事業を行いたいと思っていたので、そういった意味では地域連携できる形として産官学連携の取り組みで進められる場所というのはかなり大切にしたポイントでした。

そういった時に2019年のコロナ禍のちょうど前に高知県でご縁を頂きました。高知県では人口減少や産業の衰退、また南海トラフ地震の災害リスクなど多くの地域課題を抱える中で、新産業の創出に熱意を持たれている人が多くいて、また元々漫画文化が盛んであったため、アニメとの相性もよく5年間地方スタジオを検討していく中で最も可能性がある場所に感じました。

最も背中を後押ししてもらったのはちょうど2023年に100周年を迎える高知信用金庫の山﨑理事長にバックアップして頂いた事で、元々想定していた産官学に加えて、産官学+「金」の連携体制が組める事は大変心強く、高知であればアニメの産業化にチャレンジしていけると思いました。山﨑理事長と一緒にNHKに取材をして頂いた番組もありますので是非ご覧ください。

未来への希望

番組の中で高知(地域)の課題とアニメの課題をともに解決していく方法としてアニメを地域産業化する事だと山﨑理事長がおっしゃってますが、私自身もそう思っています。それぞれの課題はもちろん1つではありませんが、雇用が生まれ、技術革新が起こり、新たな経済活動が循環する事で、解決できる課題は地域(高知)にもアニメにもそれぞれあると考えていて、私自身はまずは高知でアニメの地域産業化にチャレンジしていきたいと考えています。そういった取り組みが結果として、世の中が変わるきっかけ(Sign)になるようにと、以前にNHKに取材して頂いた番組がありますので(前のやつとは別の海外番組です、、)こちらもご覧頂けると幸いです。

アニメの地域産業化の目的の1つとして地域発アニメを直接世界に持っていく、という事も考えています。色々と段取りは必要なところもありますが、アニメ自体は元々産業構造としても海外比率が高い部分があるので、実現の可能性はあるかと考えています。

私自身はアニメ業界に入って10年になりますが、キャリアの前半は優秀なクリエイターと最高の作品を作る事を考えてスタジオ運営を行っていました。もちろんその気持ちは今後も変わりませんが、これからのキャリアでは、作品作りだけではなく、アニメの地域産業化という新たなテーマを持って事業活動を行っていければと考えています。

最後に、冒頭でも記載したのですが、私自身はアニメ業界の根幹はアニメを作りたいと思っている「クリエイター」であると思っています。高知でアニメを産業化するためには、高知で多くのクリエイターが生まれ、また多くのクリエイターが高知に来てみたいと思われる環境を作っていく事が必要だと考えています。それを実現するのが、まさに山﨑理事長や多くの仲間と一緒に進めている「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」になります。高知をクリエイターにとっての聖地となるような場所になる事を目指し、結果的に高知でアニメを地域産業にする取り組みへとしていく挑戦を2023年も続けていければと考えています。

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