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なんで私は何をやっても駄目なんだろう……と思ったときに読む話

「なんでうまくいかないんだろう……」

頭を抱えて呟く。
こうなってくるとあとは負のループにハマるのがいつもの流れ。

誰でもありますよね。
そして、そんなふうに思ってしまう自分を責める。
さらに、なんて自分は駄目なんだ……と言い出し、自分に対するパワハラのループに陥る。

もし頭の中で繰り広げられる自己否定を、他人に対して声に出して言ってるとしたら、相当酷いですよね(経験者です。セルフパワハラ1級ぐらいでした)。でもそれをやってしまうのが人間、自己否定の強い人だったりします。真面目で優しいから、他人にはそういうことは言わない……という人も、なぜか自分には酷い言葉を浴びせてる。

そりゃ自分は駄目って思ってしまって当たり前だと思います。
月村という男もそうでして……

「これぐらいの資料、他の人だったらもっと早く、しかも綺麗に作れるよ? なんで君はいつまで経ってもできないのかな。やり直して、一時間以内」

「すみません……」

月村にとって、こういう会話は日常でした。
子供の頃から、何やっても人よりできず、イジメられたり、からかわれたり、親からも、他の兄弟や親戚、同級生と比べられて、

「あんたは駄目ねぇ……どうしてそうなのかしら」

こっちが聞きたいよと言いたいところですが、何も言い返せず、シュンっと下を向いてしまう。
今、上司の目の前でそうなってるように。
ず~っとそうでした。

でも月村も、何もしてなかったわけではありません。
なんとかして自分を変えようとしました。

駄目な自分を変える本、駄目だなと思ったときに読む本、自信をもつ方法……本も何冊も読み、自己啓発のセミナーに行ったり、考え方を変えてきた……はずでした。

でもなぜでしょう。
やってもやっても学んでも、辛くなるばかり。
がんばってるはず、自分を変えようとしてる、何もしない人より努力もしてるはず、なのになんで……こうなると、またループが始まります。

自分はがんばるだけ無駄な人間なんだろうかと落ち込み、いやそんなことない、がんばりが足りないんだと立ち上がり、やっぱり何やっても駄目なんじゃないか……というふうに、下がっては上がり、上がっては下がり……

自分が成長してるかどうかも分からないまま、がんばり続けますが、いずれ限界がきます。心が折れてしまって、もういいか、何やっても自分には無理なんだ、このまま何も変えられないなら、いっそ……

追いつめられた行き着く先は絶望であり、その後の行動は二つに分かれます。

一つは、社会がおかしいという考えをこじらせ、犯罪行為に走る。
もう一つは、もう辛いのは嫌だ、終わらせよう……と、死を選ぶ。
どっちを選んでも、不幸しかありません。

月村は元来真面目だからか、前者ではなく後者のほうにいきました。
もういいか……無気力を顔に浮かべて、どうすれば楽にできるかなんて調べてみたりしてるうちに、死を考えているあなたへ、というサイトを見つけて、クリックします。

楽なのがいいな……そんなことを思いながらスクロールしていくと、

『ここから先の文章を読んでも無理だと思ったら、もう止めません』

その一行が目に入りました。
さらにスクロールすると、死ぬ前に確認する10のこと、という見出しが。
そこには、こんなことが書かれていました。

1、あなたは自分に、完璧を求めていませんか? 完璧は幻想です。

2、あなたは自分に、高すぎる目標を課していませんか? それはパワハラと同じです。

3、あなたは自分に、「なんでできないんだ!」と罵声を浴びせていませんか? がんばってもできないときもあります、誰にでも。

4、あなたは今見えている世界がすべてだと思っていませんか? 顔を上げて空を見てください。

5、あなたは自分の弱いところを、他人の強いところと比べていませんか? 落ち込んで当然です。

6、あなたは自分に、失敗は恥ずかしいことと言っていませんか? 失敗は行動した証拠です、恥ずかしいカテゴリーには含まれません。

7、あなたは自分に、「変えられないものを変えろ」と言っていませんか? それは過去に戻って失敗をやり直せと言っているのと同じです。つまり不可能。

8、あなたは自分に、「おまえにはなんの才能もない」と言っていませんか? 一部の天才を除き、才能<日々の地味な積み重ねと工夫です。

9、あなたは自分の、うまくできなかったことだけを見ていませんか? 日々の小さな、うまくいったことは、その影に見つけてもらえるのを待っています。

10、もし親友が今のあなたと同じ悩みを抱えていたら、あなたはどんなふうに声をかけますか?

月村は、固まってしまいました。
まるで自分に対して言われているような言葉たち……そしてその下には、

『ここまで読んでくれたあなたは、きっと真面目な人でしょう。だからこそ、苦しいこともたくさんあると思います。少しずつ真面目さを手放し(少しずつが大事)、あなたの人生に陽が差し込むことを、私は信じています。がんばろうと苦しんでいるあなたの気持ちが、少しでも楽になりますように』

読み終わる頃には、月村は嗚咽を漏らしていました。
今まで、そんなふうに言ってくれた人はいませんでした。誰もが、こんなこともできないの? 駄目な奴、という目で見てきて、がんばりが足りない、そんながんばり大したことないと言われたことはあっても、肯定されたことはなかった。少なくとも、月村の記憶には残っていなかったから。

その文章をコピペすると、月村はスマホのメモ帳に貼り付け、何度も繰り返し見ました、声に出して。朝起きたとき、寝る前……だからと言って、すぐに何かが目に見える形で変わるわけではありません。変化には時間が必要。でも時間が必要な理由は、急激な変化ってやつは、たとえそれが良いことであっても、人間が変化に拒絶反応を示す生き物だからです。だから、焦らない。

少しずつが大事。

月村は、焦りそうになるとその言葉を思い出し、そのときからずっと、今も、地味な積み重ねを続けています。できないこと、どうにもやる気がでないときでも、できる範囲でやる。ときには完全に休む日もあれば、サボってしまうこともある。それでも自分を責めず、今日も一歩、前に進む。

そうやって月村は、少しずつ人生を変えていきました。その結果、収入、幸福度、人間関係、健康……すべてが好転し、充実した日々を送っています。

人間、追いつめられて視野が狭くなると、つい先程の10のことをやってしまいます。そして、10番目の視点を忘れてしまいます。

どうかこれを読んだあなたは、その苦しみの泥沼から抜け出して、少しでも早く陽の光を浴びてください。無理、と思ったかもしれませんが、それは脊髄反射みたいなものです。だから、変えられます。
一度に大きくではなく、少しずつ。
少しずつが大事です。

がんばろうと苦しんでいるあなたの気持ちが、少しでも楽になりますように。

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