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怖いだけでは物足りない! 有名な都市伝説「テケテケ」を題材にした、ホラーテイストのヒューマンドラマ

■人間と妖怪の絆を描いた物語

白犀(びゃくさい)の名前でYouTubeチャンネル(現在休止中)をやっていた頃、

「都市伝説を題材にして話を書いてみよう」

という軽いノリで始まって、これまでに19作品書き、まだ続いている伏見警部補の都市伝説シリーズ。

最初に書いたときは、シリーズ化は頭になく、まず一作、ということで書いてみたわけですが、その一作目が、今回ご紹介するテケテケのお話です。

黒い砂 テケテケ誕生の物語

YouTubeで公開したものを大幅に加筆修正し、タイトルも変えて生まれ変わらせました。
元のほうもそうですが、リメイクに関しても、ヒューマンドラマの要素が強めです。ホラー系の都市伝説を題材にしているので、ホラーであることは確かですが、怖い話を読んで鳥肌を立たせたい人には向かないかもしれません。

では、なぜ恐怖を前に押し出さないのか?

今回は、都市伝説テケテケの物語がどうやって誕生したかについて、お話します。

■そもそもなぜテケテケを選んだのか?

ホラー系の都市伝説は、いっぱいあります。
口裂け女や人面犬のほうが、テケテケより有名でしょうし、ネットが広がってから出てきた、くねくね、八尺様といった都市伝説のほうが馴染み深い人もいるでしょう。

でも僕にとっては、テケテケは子供の頃に知った、一番怖い都市伝説なのです。

僕が住んでいた地域では、「シャカシャカ」と呼ばれていましたが、形は同じです。下半身がないモノが追いかけてくる。最初に聞いたときは、小学校の体育館に出るという話で、跳び箱に両手をついて、その上に顎を乗せており、こっちを見つけると襲ってくる、というような話でしたが、ちょっと脚色してみましょう。

ある夜、忘れ物をした男子生徒が学校に忍び込んで、教室から忘れ物を回収して帰ろうとすると、体育館の扉が開いていることに気づきました。

彼の教室は一階の中央あたり。教室を出て右を見ると下駄箱、左を見ると体育館の入口が見えます。

放課後、クラブ活動が終われば閉められるはずで、鍵の掛け忘れならともかく、開きっぱなしはおかしい……男子生徒は気になって、体育館に近づきました。

夜の学校は静まり返っており、静かに歩いているつもりでも、足音が学校中に響いているのではないかと思えてきます。

怖いと感じながらも、確認せずにはいられない気持ちが勝り、男の子は入口の前までくると、中を覗きました。すると、舞台の前あたりに、跳び箱が置かれていました。

薄っすらと、非常灯の明かりで見える限りでは、六段ぐらいの高さ。仕舞い忘れたのだろうか……などと考えていると、跳び箱の上に何かが見えました。よく見ると、人のようです。跳び箱の一番上に両手をついて、その上に顔を乗せているような姿勢。

男の子は、誰か残って練習? と一瞬思ったものの、すぐにありえないことに気づいてビクっとして、ぶつかった肩がドアを揺らしました。すると、跳び箱に手を乗せているソレが、ゆっくりと男の子のほうを見ました。

目があった……

と思った瞬間、ソレは暗闇でも分かるほど口をニヤリと歪め、ものすごいスピードでこちらに向かってきます。ソレは下半身がなく、肘を上下に動かしてシャカシャカという音を立てながら男の子の目の前まで来ると、さらに口を広げて何か言いました。

翌日、登校してきた生徒が、入口の前に落ちていた男の子の忘れ物を見つけましたが、それ以来、男の子は見つかっていません。

だいたいこんな感じです。

話を聞いた当時の僕は、真っ暗な体育館の中に、ポツンと跳び箱があり(なんで片付けられていないのかという話は置いといて)、そこに誰かいる。こちらに気づくと、下半身のないソレが近づいてくる、シャカシャカと音を立てながら、という漠然としたイメージを浮かべて、それがものすごく怖かったわけです。

そのイメージと、怖かったという感情は覚えていたため、ネットで調べて、当時聞いたそれがテケテケという都市伝説だと知り(一部地域ではシャカシャカと呼ばれることもあるようです)、自分的にインパクトが強かったそれを使おう、と思ったわけですね。

■怖いだけだとどうも……

いざ物語を作ろうとすると、問題も出てきました。
僕はどうも、ただ怖いだけのものに興味がないらしく、都市伝説の怪物テケテケが現れて、理不尽に人を殺していく、呪いだ、でも原因はよく分からん、みたいな話は書けない(書けなくはないかもしれないけど書きたくない)と気づき、別の視点で捉えることにしたのです。

妖怪にも、人間のような人格はあるのでは?

たとえば、ゲゲゲの鬼太郎など、昔から妖怪が人間と同じように喋ったりする作品はあるし、それ自体が突飛というものではないですが、妖怪も人間と同じように悩み、問題を抱え、この世界で生きている。
そう考えて、「喋るテケテケ」をイメージしました。

どんな姿で、どんな性格なのか。
そうして生まれたのが、「黒い砂 テケテケ誕生の物語」に登場する、原西由美(はらにし ゆみ)という女性です。由美がテケテケの「姿」になった理由は、都市伝説のとおり。しかし由美は、僕が子供の頃に恐れ、現在でも都市伝説として知られるテケテケとは違っていました。

あることが起きるまでは……

結果的に、由美は都市伝説を超える妖怪に変貌しますが、なぜそうなったかは、本編をお楽しみいただければと思います。

■物語は始まったばかり

伏見警部補の都市伝説シリーズは、こうして、テケテケの物語から始まりました。

その後、いろいろな都市伝説を僕の解釈で再構築し、現在までで19作品を数えるまでになりました。今後、テケテケ以降の話もすべてリメイクしつつ、シリーズの続きも書いて、サブスクのほうで公開していきます。

何作品目で終わるのか、僕にも分かりませんが、怖いだけの都市伝説に飽きた方は、別の世界観を持つ都市伝説ストーリーに触れてみるのはいかがでしょうか。


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