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#2 即興芝居(インプロ)はどのように生まれたのか (前編)

キース・ジョンストンという男性演出家がかつてイギリスにいました。
*演出家とは#1でも説明したように、台本の世界観を創り出すために役者の演技や照明・音響などにいろいろ注文をつける人のことです。「世界(観)を創る」という意味で「演出家は神」と唱える人もたまにいますが、これはわりと昔の考え方だと思います。
 

キースは、役者に演技の指導をしていくうちに、役者に何かしらの問題があるように思えてきます。キースの望んだ演技が、役者にはできないのです。
「どうしてだ?」キースは考えます。
掘り下げてみると、それは役者たちの "恐れ" から来ているようでした。

「 恐れ? 何の??」
となりますよね。
ここで言う恐れとは大きく3つに分けられます。
 
 1. 人に見られる恐怖
 2. この先どうなるかわからない恐怖
 3. 自分から何が出てくるかわからない恐怖
1つずつ説明していきましょう。

1. 人に見られる恐怖
こちらは誰しもが思い当たることがあると思います。
教室で先生に
「よし、長澤! お前この問題黒板に書いて解いてみろ!」
と言われて席を立ってから黒板に行った時、
後頭部にビシビシといろんな人の視線が刺さってくるような気がしますよね? 本当は誰もべつに見てないんですけどね!
人は人の目線を怖がるものです。
 
2. この先どうなるかわからない恐怖
人は自分がわかっている事なら自信を持って堂々とできるのですが、
自分がわかっていない事に関しては及び腰になりがちです。
台本のある芝居はともかく、即興芝居となると一寸先は闇ですから
恐れるなと言う方が無理な注文です。

3. 自分から何が出てくるかわからない恐怖
こちらはいまいちピンと来ないかもしれません。
即興で演じる (セリフがあらかじめ用意されているわけではない) ため、自分が何を言うのか、何を言ってしまうのかがわからないのです。
「電車」「豆腐」「アメリカ」など、なんて事ない単語は言えても、もしかしたら「お◯んこ」などの恥ずかしい言葉を言ってしまうかもしれない! という恐れが生じるわけです。
(ちなみにぼくは「おしんこ」の事を話してますよ)
  
この3つの恐怖を役者から取り除くべく、キースはいくつかの即興的なゲームを考案します。
なんでもそうですが、真剣に向かい合うよりもゲーム形式にした方がグッとハードルが下がりますからね。

(後半へ続く)

<<参考資料:今井純著『自由になるのは大変なのだ』(論創社)>>

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