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【work】 最初のあやつり人形『ヒッコリーノ』

最近の僕はあやつり人形やハンドパペットを作ることに興味が向いています。 これには自分の中で合理的な理由があります。 もともと僕は絵を描いたり工作をすることが大好きで、それをしていないと生きている感覚が失われてしまうくらいの性質。 その割に、作っていたものが完成してしまうとまるで波が引いていくように急激にソレへの興味を失ってしまう傾向が強いんです。 まぁ、そのおかげて次々いろんなものを作ることを思いついたりもするんだろうけど、自分としてはそのおかげで一つ一つのモノに対する解像度が粗くなっているのもこれが原因だろうなと思っていました。

あるときtwitterでkinokosupaさんというマリオネット作家を知り個展にお邪魔したんですが、独特のデザインの愛嬌ある人形たちが動く小さな劇も上演されているのを観て「これだ!」と強い衝撃を受けたんです。 僕自身子供の頃に人形劇三国志やドリフの飛べ!孫悟空サンダーバードを観て育ったし、子供の頃にはハンドパペットを自作したりもしていたのでもともと好きだったんでしょうが、忘れていたその頃の感覚が呼び覚まされたのかもしれない。

そうして間もなく、マリオネットを作ってみたくなりました。 今回紹介するのは初めて作った人形『ヒッコリーノ』です。 ちゃんとしたあやつり人形を作るのは初めてだったので試行錯誤の連続でした。 製作過程の写真が何枚があったのでまずは連続で載せますね。

デザイン原案
決定デザインスケッチ
製作過程01 部材切り出し
製作過程02 粗削り
製作過程03 手足仕上げ
製作過程04 仮組み
製作過程05 外装製作
製作過程06 お面3種
製作過程07 コントロール取付

こんな感じでひとまず完成。 所謂、糸操り機構を採用した最初のバージョン。 しかし、これでは自分の思い描く動きができなくて改修することにしました。
最初の改修後に撮影した動画がこちら。

これでもまだ納得行かず、再度改修してこうなった。

まず、コントロール機構をチェコの操り人形風に変更。 全体を糸で吊り下げるのではなく頭から上へ垂直にピアノ線を通すことで頭部と全体の動きをより直感的に。 両腕の操作も糸ではなく湾曲させたピアノ線を用いることで自由度の高い動きを目指しました。 この変更に伴って胴体の殆どの部分をより軽い木材に変更し、構造も蛇腹的構造に作り直して柔軟な動きを可能にする。 手首から上がロープと綿だった腕部は木材で作り直し、肘関節の折り曲げと手首の回転軸を設けることで骨格を意識した自然な動きを目指しました。 大まかにはこんな改修だけど、ほぼ作り直しですね。

なんとか僕が動かしたいように動かせる人形になったので、人前で動かしてみました。 アートディレクターでコラージュアーティストのQ-TAさんが主催されていたhypo graphic vol.7というグループ展に参加させていただいたときの動画です。

ここまでに約2年が必要でした。 それまで作り終わったものへの興味をすぐに失っていた僕が、あやつり人形と出会うことで1つの作品の完成にこれだけの時間と試行錯誤を重ねることができたなんて、振り返ってみると大事件なんだけど、不思議と向き合っている間はその時間や手間について意識しなかったのが驚きです。 こうして、作って動かすということの面白さを知った僕は人形づくりが一番好きになっていくのです。

2023年3月2日午後 追記
-----ここから-----
あやつり人形やパペットが他の造形作品や絵とどう違うのかというと、作品自体が完成したあとも、動かしたりその動きを含めた物語などを撮影したりと、作品自体が継続して自分との繋がりを持ち続けることができるのです。
-----ここまで-----

さて、次回は続けて人形を紹介するか、他のものにするか……気分で決めることにしよう!

サポートしてくれる人が増えると、新しい作品を作る余裕も出てきます。余裕は新たな可能性を見出す機会をもたらしてくれますね。新たな可能性からは今までと違った視点も生まれるかもしれません。