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人生、ただいま修行中/ニコラ・フィリベール監督

ニコラ・フィリベール監督の最新作を見ました。フィリベールはドキュメンタリー映画界の巨匠中の巨匠です。

日本の配給会社は相変わらず『人生、ただいま修行中』のようなタイトルを付け、サイトをパステルカラーに彩るわけですが、原題は「De chaque instant」、英語のタイトルでは「Each and Every Moment」です。なんでしょうこれ...フィリベール監督の向ける眼差しが優しいからでしょうか。優しさというのは、例えばフレデリック・ワイズマン監督と比べるなら、まずはそれが社会というよりは「人間」に向けられているからでしょう。公式サイトを置いておきますが、そもそもこの映画にはナレーションも音楽も入ってません。21世紀も20年も経つのに。
https://longride.jp/tadaima/

パリ郊外の看護学校。若い学生たちは初めは本当に大丈夫かというほど、手を洗うところからはじめ、注射器の気泡を抜くのに手惑い、でもそうやって現場に出るにつれ、思うように動けない自分の不甲斐なさに心を痛めながら、看護師としての自覚や責任について考えるようになり、顔つきも徐々に変わってくるわけです。やはり圧巻は実習先から帰ってきた彼らの面談のシーンでしょうか。

フィリベール監督の映画には大きな「動き」こそありませんが、時々挟み込まれる風景カットとか、なんでもないところが卓越していますね。ライティングもそんなにないはずですが、彼らの表情を拾う光線が綺麗です。こうやって丁寧に彼らと向き合うことで、フランス社会が抱える様々な問題点をも透かし出し、そしてそれが日本(人)も含め、私たち皆が「今」考えるべきことをその場に広げて見せる、そんな映画です。

監督:ニコラ・フィリベール
2019年12月18日鑑賞

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