世界の涯ての鼓動/ヴィム・ヴェンダース監督
ヴィム・ヴェンダース監督の『世界の涯ての鼓動』を見た。
http://kodou-movie.jp
『ベルリン・天使の詩』が日本で公開されたのが1987年。その翌年にベルリンの壁が崩壊する。それから30年の時が経つが、その頃私たちが漫然と描いた楽天的な未来像はそれこそ崩壊し、私たちが生きる世界は私たちの間に壁を建て分断を煽るばかりに見える。
生物数学者のダニーとイギリスの諜報員ジェームズ。ダニーは生命の起源を求め潜水艇に乗り込み深海へ向かい、ジェームズはテロ組織に接近するためソマリアに向かう(もちろんダニーにそのことは語られない)。ともに世界の涯てだ。
二人を繋ぐのは「海」。冒頭近く、ジェームズが美術館でC.D.フリードリヒの《海辺の修道士》を眺めるシーンが出てくる。海辺に佇む後ろ姿の修道士が小さく描かれた絵だ。その視線の先についてふと考えてみる。連絡が取れないジェームズの携帯に、ダニーはメッセージを送る。「目の前に見えることを、あなたと話したい」と。素敵な言葉だ。
「映画」を飛び越えての話になってしまうが、あの頃ベルリンの上空を旋回していたたくさんの天使たちは、まだそこにいるのだろうか。確か人の死を記録し続けることが天使の仕事だったはずだ。30年前とは全く別の世界になってしまった私たちの現在に、ヴェンダースは、また別の形で「愛」について描く。描かれているのはもう少し大きな「愛」のことだったかもしれないが、いずれにしてもヴェンダース映画の「余韻」が心に残る..。
監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:ジェームズ・マカヴォイ | アリシア・ヴィカンダー
2019年9月7日鑑賞
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