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苦い銭/王兵監督

ワン・ビン(王兵)監督の『苦い銭』をみました。2003年に9時間を超える『鉄西区』を見て以来、『無言歌』(これは劇映画)『三姉妹 雲南の子』『収容病棟』と見てきましたが、常に新作が待ち望まれるドキュメンタリー映画監督です。去年2017年の「ドクメンタ14」にも出ているんですね。

http://www.moviola.jp/nigai-zeni/background/index.html

地名を聞いても自分にはよくわからないのですが、話の舞台である浙江省湖州市織里(ジィリー)というのは上海から車で1時間半の距離にある子供服の加工工場が多数集まる街で、農村から出稼ぎに来る(雲南省からは2200キロも)人たちは住民の80%にもなるそうです。

10代の若者〜40代の男女が被写体で、私たちが中国と聞いて思い描く通り、彼らは低賃金で長時間の労働をして「苦い銭」を稼ぎ、家族に仕送りをするわけです。そんな経済社会の中では「駒」にすぎない彼らの「個」の部分が、一人ひとりの表情や会話がなんと魅力的なことか。

カメラが介在するにも関わらず、彼らと常に近く親密な距離感で時間が動いていく、そんな映画なのです。まさにワン・ビンという天才のなせる奇跡の映像。2時間半程の上映時間があっという間です。

ワン・ビン監督の映画は中国では公開されないのですが(検閲を受けたくないから)、被写体となる彼ら自身も見ることのない、一人ひとりの人生が交錯した「生」の中国の姿が強く心に響きます。それは彼のどの映画でも同じなのですが。

監督:ワン・ビン
2018年3月27日鑑賞


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