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はちどり/キム・ボラ監督

『はちどり』を見ました。韓国映画ですね。2時間18分。監督のキム・ボラは1981年生まれで長編1作目。女性監督です。
https://animoproduce.co.jp/hachidori/


舞台は1994年のソウル。高層の集合住宅は日本でいえば団地のように見える。高度成長の面影が残る風景。その日常は「なんとな」く日本と似て、一方でまた「なんとなく」違ってもいる。部屋の調度もそうだ。流行歌は分からないけれど、ウニのベネトンの黄色のリュックサックを「なんとなく」懐かしく感じもする。ソンス大橋の崩落事故のことは「なんとなく」記憶にある。

14歳の少女ウニ。彼女を演じるパク・ジフの瑞々しい演技から、思春期の少女へのノスタルジーとして映画を括りたくはなるが、それではこの映画の大きな視点を見失うことになる。

「漢文塾」というのが韓国にはあるらしい。ある日、その教室にヨンジ(キム・セビョク)という女性講師がやって来る。ソウル大学の学生で今は休学中だという。タバコを吸いどこか物憂げな女性だが、ウニを親身に受け止め話をてくれる。今まで接したことのない「大人」の女性にウニは心を開いていく。

「殴られたら殴られたままでなく、立ち向かうの」

入院中のウニを訪ねたアンジは言う。兄から受ける暴力(生意気なことを言うと頬を叩かれる。ウニの親友も同じ悩みを抱えていたりする)を打ち明けたウニへの返答なのだが、より広い意味で、社会からの抑圧への「気付き」として、ウニは「その後」の人生にその言葉を抱えて生きて行くことになる。

映画はあらゆるところで繊細な描写が試みられる。物語の巧みな展開に忘れがちではあるが、冒頭や終盤の母親に対する抽象的で象徴的な描写は特にに示唆的だ。映画だけではなく、韓国には水を空けられているなと思う。おそらく1994年の頃はまだこれほどの差は無かったように思えるのだが。いま見るべき映画。

監督:キム・ボラ  出演:パク・ジフ | キム・セビョク
2020年9月8日鑑賞

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