こおろぎ/青山真治監督
青山真治監督の「こおろぎ」を見ました。2006年製作ですが「諸事情」により ...ということです。予告編だと少しイメージが違いますが、日本近代文学の匂いがする映画です。ただ「文学作品」を映画化しただけでは「文学」にならないのが不思議なところですが、青山真治は稀有な映画監督と言えましょう。2013年の「共喰い」以来長編を撮っていないですがお元気なのでしょうか。
西伊豆の別荘を舞台に、盲目で口の聞けない男(山崎努)とかおる(鈴木京香)が暮らすようになる。
純白シャツのタグをハサミでプチッと切る。男はそのシャツをドロドロにしながらチキンを食べたりする。3枚目のシャツは(たぶん)かおる自身が着るようになるのですが、そういう物語を転換させるような「もの」の使い方が卓抜。不穏な空気を流しながらも何かコミカルであるような、そんな「人間」の描き方が青山監督らしいです。山崎努の狂気を孕んだ演技はさほど驚かなかったけれど、この鈴木京香さんの演技は凄いですね。
画面はスタンダード(3:4)で、この狭い画角をきっちり使ってを全てのカットが構成されています。青山監督はシネスコでも撮りますから、ここではかなり意図的に「狭さ」を使って状況描写をしているはずです。カメラは田村正毅。そういえば青山さんの作品は少し預言的なところがあって、2006年の映画なのですが、この舞台が「かつて津波に襲われた町」という設定になっています。
監督:青山真治 出演:鈴木京香 | 山崎努
2019年12月20日鑑賞
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