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光/河瀬直美監督

河瀬直美監督の『光』を見ました。
http://hikari-movie.com

映画の「音声ガイド」という仕事があります。視覚に障害がある人が映画を楽しめるように、彼らが映画の映像イメージを受け取れるよう、映画の時間の中に、そして彼らの想像力という空間の中に「言葉」を当てはめていくのがその仕事です。美佐子(水崎綾女)は、ある映画の音声ガイドを制作するため、視覚障害者がモニターとして参加する検討会で、カメラマンの雅哉(永瀬正敏)と出会います。

ああ、シネスコだなと、映画が始まってすぐに思いました。横長の画面です。横が縦の2倍以上もある画角ですから、横方向の流れを追うのには適していて、例えば単純に風景の描写や、室内空間であれば人物の移動を柱や壁などの縦方向の面を使ってコントロールしやすくなるように思います。

この映画でのシネスコ画面に特徴的なのは、美佐子に対してクローズアップを多用していたことでしょうか。「表情を」というよりは明らかに「目の表情を」追っています(水崎さんは目が印象的な女優さんでもあります)。目にギリギリまで寄った時、画面の左右に空きの空間ができ、そこで心理的な深さが強調されているように思いました。

映画の中の映画という二重のイメージを使いながら、「見ているもの」とは何かとか「見えているもの」は何かとか、また「見ること」が全ての、視力が失われつつある雅哉の抱えきれない不安を描きながら、さらには愛や希望まで描いてしまうという河瀬監督の力技、そしてとても美しい「光」の映画でした。そういえば、映画の中の雅哉の写真は、実際に永瀬正敏さんが撮影したものだそうです。

監督:河瀬直美  出演:永瀬正敏 | 水崎綾女
2017年7月14日鑑賞

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