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大野駅へ

その3 2024年4月6日 土曜日

夜ノ森駅前も「桜まつり」に向かう人で賑わっていた。

時計を確認して、大野駅まで歩いてみようと思った。2時間後の14時46分発の上り列車に間に合うだろう。大野駅から夜ノ森駅へは歩いたことはあるが、逆方向の歩行の歩行で、また違った景色が見えてくるかもしれない。雨足がさらに強くなったので折りたたみの傘を開いた。

大熊町を縦断する

夜ノ森駅西口を出て北に進み、突き当たりを左折する。この辺りはまだ富岡町内で、2019年に避難指示が解除されている地区だが、夜ノ森地区への帰還の開始故により、波及的に住居の取り壊しが進んだようだ。旧富岡養護学校も1年で更地となり、新年度を前に道路沿いの桜の木は全て伐採された後だった。奥行きが浅い小さな土地が残るだけだ。

更地になった

林道を抜け大熊町に入ると穏やかな田園風景が続く。熊川に掛かる橋を渡ると住宅地が近くなる。時の重さに崩れてしまった家屋と水仙の花と。妙に愛おしく、普段は躊躇するのだが、一度だけシャッターを切った。次に自分が来たとしても、その場所すら思い出せないだろう。

住宅街の入口では迂回を指示する看板が立っている。帰りの電車の時刻が気にはなったが、まわり道からはその現状が見渡せる。家屋は全て取り払われ、整然とした土地区画のが現れる。ここから大野駅までは約1.3キロ。郊外の住宅地の面影は、この区画が第一原発の誘致後に開発された土地だと想像させる。東電の社員家族が住んでいたのかもしれない。

さらに駅へと近づく。多くの家屋が取り壊された後だった。旧商店街の豆腐屋は辛うじて残ってはいたが、かくも急ピッチで整備が進められているのは、来年3月に予定される大野駅前の再開発、商業施設と交流施設のオープンと関係があろう。

駅まであと100メートルの所まで来て、またもや迂回の指示に足止めされる。大野駅は目の前で、それにあと5分で電車が到着するのだ。右を見て左を見て、迷わず結界を乗り越える。14時38分。大野駅発常磐線上り普通列車に乗車。

14時46分富岡駅着。木戸駅に行くのは諦める。海側の丘を上り海沿いの県道391号線広野小高線をゆっくりと歩く。視線は林に遮られ、海は見下ろせない。続く

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