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【書評】幸福の「資本」論

幸福の「資本」論 - 「3つの資本」と「8つの人生パターン」)

幸せになるためにはその土台として「ある程度」の資本が必要。「金融資産(資本)」「人的資本」「社会資本」の3つの資本から「幸福」の前提条件を手に入れる方法を解説した良書

3つの資本とその特徴

・金融資産(資本)、人的資本、社会資本の3つの資本が大切。これは自由、自己実現、つながりの獲得と同値

・各資本は多ければ良いというものではなく「量」より「質」が大切。友達はただ数が多ければ良いというものでもない

・所得とその効用(幸福度)の関係に目を向けると、所得は日本では個人で800万円程度(世帯年収で1,500万円)までは相関があるがそれ以上では急速に効用が逓減していく。お金が無くても、多すぎてもお金のことを考えすぎる時間が増え幸福度が下がる。

・3つの資本をインプットとして一人一人変換効率は異なる(主観による)幸福の製造装置によって一人一人の幸福感が決まる。自分はどの資本からの変換効率が良いのか?を意識し自分にあった資本の形成が肝要

社会の変化(知識社会化)とそこから派生するクラス

・知識社会(Knowledge Society)とは、世の中をより良くするために必要な情報の生成や共有が社会の全てのメンバーの間で行われている社会(Googleなどがイメージに近い、工場などの資本ではなく、人の頭の中の知恵が競争力を規定する)

・知識社会は社会のリベラル化、グローバル化を必然的に加速させる。また新しい働き方をフレーミングするために知識社会への変容・リベラル化・グローバル化を3展セットで理解しておくことは大切。身分(正社員)からの脱落者は増え、中流は消える

・知識社会で表出してくるクラスは、クリエイティブさ(時給計算できない仕事)とその拡張性(劇団の役者と映画の役者の違い)で切り分けられる。ルーチンをするマックジョブクラス、拡張性のないクリエイティブクラス(弁護士、会計士など)、拡張性のあるクリエイティブクラスの3つ。

・拡張性のあるクリエイティブクラス(クリエイター)はウィナーテイクスオールの世界。成功できるのは一握りに。

・拡張性のないクリエイティブクラス(スペシャリスト)は、拡張性がないからこそ平均的に高所得を維持できるが、責任やプレッシャーも大

・マックジョブ(ルーチンワーカー)は代替可能なので人間関係などを気にする必要はない(やりがいを見い出せば幸せになれるが、やりがいを搾取される可能性もある)

・世の中の仕組みには、閉鎖系の減点式、開放系の加点式がある(P126)。閉鎖系のゲームのルールは、「できるだけ目立たず匿名性の鎧を身にまとって悪評を避けること」が最適戦略となり、開放型の場合は、「できるだけ目立ってたくさんの良い評判を獲得すること」が最適戦略となる。いわゆる大企業は「終身雇用」(人が入れ替わらない)という典型的な閉鎖系社会

・知識社会では、自由と自己実現を最優先する個人主義的でリベラルなライフスタイルが当たり前に 

幸せに向けて

・ソロ充という生き方は、すべての社会資本(人間関係)を貨幣空間に置き換えた人たちとも言える。人間の悩みの多くは人間関係に起因するので、お金と科学技術でそれを断ち切り弱いつながりの中で生きていくのは1つのあり方
・職業別の幸福度は、「安定」「やりがい」「自由度」の度合いで決まり、公務員または自営業・フリーエージェントが幸福度は高く、サラリーマンは相対的に低い(安定度では公務員に、やりがい・自由度では自営業に及ばない)

・セロトニントランスポーター遺伝子のSS型が多い日本人(66.8% ※アメリカ人は18.8%)は、そうでないタイプに比べてうつ病を発症しやすい。しかし、これは、ストレスに脆弱というよりは、ポジティブでもネガティブでも感情的な背景(環境)に非常に敏感(感度が高い)という考え方が最近では有力。

・幸福は伝染する( The Hidden Influence of Social Network  )ので、太りたくなければ太っている人に近づかないというのは社会科学的に一理あり。

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