「文舵」 練習問題

〈第4章 練習問題④〉
重ねて重ねて重ねまくる


問1 語句の反復使用
一段落の語りを執筆。そのうちで名詞や動詞または形容詞を、少なくとも3回以上繰り返すこと。

※繰り返しの意味を取り違えてしまっている気がする笑


(本文)


 猫トイレで砂に溺れていたのは火星人だった。たぶん火星人だ。思ったより小さくて三センチくらいの大きさだった。人間を小さくした感じ。気をつけないとパオロ事務次官のうんちと見間違えてしまう。幸いなことにパオロ事務総長は二階のベッドルームの押し入れでいつものように眠ってたから、火星人はきれい好きなパオロ事務総長の後ろ足に散々蹴られて砂に埋められるという最悪の事態に見舞われなくて済んでたみたいだ。僕は三限の講義に出るために出かけなきゃだったんだけど、猫トイレで溺れてる火星人をそのままにしておくわけにもいかない。仕方なくネヲくんにメールで出席票の代筆を頼んだんだ。ネヲくんにはこれで二回の借り。問題は、火星人をどうするか。だいたい本人が火星人といっているだけで本当に火星から来たのどうかもわからないんだけど、三センチだし、人間ではなさそうだから、いろいろと考えるのも面倒なので本人が言うんだから火星人なんだろう。僕はとりあえず、少し彼について学ぶことにした。砂に溺れている彼を救出し、パソコンデスクの上に座らせたんだ。それからは矢継ぎ早に質問を投げかけた。どうやって来たの? 何しに来たの? お腹すいてない? 彼はひとつひとつの質問に実に的確に答えた。標準的な日本語で。恐らく人類と異星人との初めてのコミュニケーションだ。僕は興奮していたのかもしれない。だから、寝起きのパオロ事務総長が、オキニの黄色い犬のぬいぐるみをくわえて僕の部屋に来てるのに気づかなかった。パオロ事務総長を見た火星人は、そのとき、親しげに、だけど恐縮した感じで彼に挨拶した。正座をする感じで、両腕を高くかかげるとそのまま前方に下ろし、背を反らした。尻を高く上げて。知り合い? 君たちは知り合いなの? 僕は火星人に質問した。火星人が僕に返事をする前に、パオロ事務総長が喋った。「カトくんさ、その子は僕の部下のアンドロイドなんだよ。今日来たばっかだよね。今頃、全国の飼い猫のところに同じようなのが来ているんだ」僕は、二の句がつげない状態で、ちょっとしたパニックになってしまった。パオロ事務総長は続けた。「僕ら、そろそろこの星をなんとかしたいと思っててね。とりあえず、お腹すいたからチュールくれないかにゃー」
 そのとき、猫ってのは太古から地球に住み着いた宇宙人でむしろ僕ら人類のほうが彼らに支配されていたんだってことを、僕も世界じゅうのみんなも、思い出した。

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