#77 早期に強い隔離政策をした方が経済再開が早い?〜スペイン風邪の教訓〜

今日は、感染対策と経済活動のバランスについて議論したいと思います。

GoToキャンペーンについて

まずはこちらのニュースから。

つい最近、GoToキャンペーンに東京を追加することを検討しているというニュースがありました。


GoToキャンペーンは7月22日から開始されていますが、当初から感染が拡大するリスクが高いということで多くの人が反対しています。

GoToキャンペーンの第1段は7月22日(水)から開始されましたが、その週末(26日(土))頃から旅行者が増えたと考えると、その2週間後(感染から発症・重症化まで要する期間)以降の感染者数の推移はどうなっていたのでしょうか?

どんどん進める前に、こういったことをきちんと検証する必要があると思います。最終的には政治判断ですが、日本の場合は特にこの検証作業が不足しているように思います。

例えば感染者が増加したことが話題になった沖縄の感染者数の推移を見てみると、以下のような推移を辿っています(以下は日経オンライン「チャートで見る日本の感染状況」より抜粋(2020年9月11日現在))。

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赤矢印で示したところはGoToキャンペーンが始まってからちょうど2週間後の8月9日(日)ですが、タイミングが感染のピークと完全に一致しています。

ただし、その後は感染者数が急激に減少しており、そういう意味では爆発的な感染に繋がらなくて良かった・・・と思いかけたのですが(沖縄県はこういった感染症を診れる医療機関が少ないので、医療機関の逼迫が心配でした)、同じサイトで気になる記載がありました。

9月9日に確認された新型コロナウイルスによる新たな死者は14人で、累計は1400人を超えた。直近2週間(8月27日~9月9日)の死者数を見ると、大阪や沖縄、福岡が上位に並び、厚生労働省がまとめる病床使用率の高い自治体と重なっている

沖縄では感染者数は爆発的に増えていない一方で医療機関が逼迫しており、死者数の増加とも関連がありそうです。今後の状況にも注視していきたいです。

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感染症対策と経済対策のバランス

さて、ここで議論になるのは、感染症対策と経済対策をどうバランス良く取るか、という点だと思います。

拙速な経済対策は感染症対策における必死の努力を水の泡にする可能性がありますが、その一方で厳格なロックダウン等で経済が死ぬことで自殺者が増えることも懸念され、熟慮すべき重要な点と思います。

※以前の記事「ソーシャルディスタンスは不要なのか?」シリーズでも、コロナ感染による死者数と、インフルエンザ感染や自殺による死者数を比較して、感染対策と経済対策のバランスについて簡単に論じています。もしご興味があれば記事をご覧ください(以下に一部抜粋しておきます)。

他の感染症や疾病による死者もそれなりにいる中で、死亡率が低いコロナウイルスの対策を過剰に行った結果として、経済が死んで自殺者が増えるのであればそれはバランスが偏っていると言わざるを得ません。

ちなみに日本では、年間の自殺者は約2万人以上です(男性約14,000人、女性約6,100人)(警察庁、令和元年)。また、インフルエンザ関連の感染者数は年間約1,000万人、死者数は日本で年間約1万人と推計されています。(厚労省「新型インフルエンザに関するQ&A」Q10より)。
※ちなみにインフルエンザによる死者数は、世界だと年間約25〜50万人と推計されています。

翻って、日本におけるコロナ関連の感染者数はこの半年で約2万人、死者数は981名です(2020年7月11日現在、東洋経済オンライン)。単純に数だけで比較することには抵抗もありますが、しかしながら数字上はこれが事実です。

したがって、そろそろ全体感をもってバランスの取れた対策を考えても良いタイミングなのではないでしょうか?


さて、先日のニュースでは、海外の事例を踏まえて経済とのバランスをどうすべきかという記事がアップされていました(少し古いですが)。

今回の記事では詳細は書きませんが、記事の冒頭にざっくりとしたまとめが書いてありますので、その部分のみ抜粋します。海外でも同様の事例があるが、失敗している国も多い。ただし成功例もあるので参考にすべし、といった内容です。興味があれば読んでみてください。

・コロナでダメージを受けた観光業を振興するため、日本以外でも国内観光キャンペーンが展開される国は少なくない
・しかし、それ以前にコロナの抑え込みに成功していた国以外では、観光の振興以前にロックダウンの再開といった弊害も生まれている
・そのなかでヒントになるのは、国全体では観光業を振興しながらも、一部地域を例外とするオーストラリアのやり方である


スペイン風邪にみる、感染対策と経済のバランス

上述のように、感染対策と経済活動のバランスをどう取るかというのは非常に難しい問題ですが、オーストラリアの例だけでなく、18世紀に流行したスペイン風邪の際の事例も参考になると考えます。

スペイン風邪が流行した時代と今回の新型コロナが流行している現代とでは、時代背景に大きな違いがあって同列に論じることはできないものの、スペイン風邪の際の対処方法と経済の再開スピードの関係性を理解しておくことは重要と考えます。

そのことについて、以下の記事(リコー経済社会研究所、ロイターの記事)がわかりやすかったので、共有した上でそれぞれ重要と考えられる部分を抜粋します。

4月3日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は世界的に大流行した1918年の「スペイン風邪」を教訓にしながら、パンデミック(=世界的流行)に対して当局が長期にわたり、あるいは早期に介入するほど、感染者の死亡率を低く抑えられると指摘する。また、そのほうが雇用も早期回復を期待できるという。

NYTによると、ミネアポリス(ミネソタ州)でスペイン風邪による死者が最初に報告されたのは1918年の秋。当局は迅速に動き、市を封鎖。10月12日には学校や教会、劇場、遊興施設を閉鎖した。ところがミシシッピ川の対岸にあるセントポール(同)では、当局者が感染症は制御下にあるという自信を持ち、11月に入ってもほとんどの施設が通常通り開いていた。ミネアポリスから遅れること3週間、セントポールも都市封鎖を余儀なくされ、ミネアポリスの死亡率はセントポールより格段に低くなった。

次に、NYTは米連邦準備制度理事会(FRB)やマサチューセッツ工科大(MIT)の学者による最新研究を紹介。それによると、1918年当時は早期かつ長期に介入(=集会禁止や学校閉鎖など)を実施した都市ほど、経済が長期悪化する事態を回避できた。実際、こうした都市では製造業の雇用・生産や銀行資産が1919年以降の数年間で比較的大幅に増加した。

強力なロックダウンをかけることで、一時的に経済は大きな打撃を受けるものの、経済回復はむしろ早まるという説明です。


 (コロナとの闘いと経済の打撃を最小限に食い止めることは両立する、という主張を最も強く打ち出した論文(FRBとMITが共同執筆)を引用して)
スペイン風邪の流行がより大きかった地域では、急激で持続的な実体経済の落ち込みが発生。しかし、調査結果からは「より早期に、より踏み込んで当局が市民生活に介入した都市では結果的に経済は悪化せず、むしろ流行終息後には流行前に比べ、経済は拡大する」という結論に達した。「非薬事的介入措置」(NPI)は死亡率の低下だけでなく、感染症流行の経済への影響も和らげるとした。

こちらの記事でも同じ論文を紹介していますが、筆者はこの記事の後半で“この研究から結論※を引き出すには慎重となるべき“、とこの説に対して少し懐疑的なスタンスをとっています。詳しくは記事をご参照ください。

※「より早期に、より踏み込んで当局が市民生活に介入した都市では結果的に経済は悪化せず、むしろ流行終息後には流行前に比べ、経済は拡大する」との結論


当時とは経済状況や仕組みも大きく異なる点や、倒産や失業等による自殺者の大幅増も危惧される中で、どのような施策が正しいか判然としないところが大変に難しいところだと思います。

いずれにしろ、なにが正しいか分からない中、こういった情報を参考として“より妥当性があると考えられる”政策を選んでいくしかないと考えます。

一方で、そういったマクロの世界とは異なり、個々人ができることとして、(感染対策などを含めて)「自分にできることを精一杯やる」「その上であとは天に運を任せる」。そういう姿勢や考え方で臨む必要があると感じています。

僕の好きな言葉に、「人事を尽くして天命を待つ」というものがありますが、そういった心境で、深刻に考え過ぎずほどほどに心穏やかに過ごせることができる方法を見つけていきたいものですね(^^)


今日の記事が参考になれば、「スキ」を押してくださると嬉しいです(^^)

それではまた!

<了>
#GoTo #スペイン風邪 #感染対策 #経済対策 #バランス #ロックダウン #人事を尽くして天命を待つ

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