【書籍】人生百年時代の指針ー外山滋比古が語る人生後半の在り方
『人生百年時代の生き方の教科書』(藤尾秀昭監修、致知出版社、2024年)から、「人生の後半をどう生きるか」外山滋比古(お茶の水大学名誉教授)p10を取り上げます。
本内容では、人生の後半の生き方について、外山氏の深い洞察が述べられています。外山氏は、お茶の水大学の名誉教授であり、多くの人々に影響を与えてきた教育者です。彼の人生観や哲学は、特に年齢を重ねた人々にとって大きな示唆を与えるものです。人生の後半を前向きに、そして自分らしく生きるための心構えを詳しく語っています。
自分自身の信念を持つ
まず、外山氏は他人の意見や流行に惑わされることなく、自分自身の信念を持つことの大切さ述べています。「我が道を往く」という座右の銘を掲げていますが、この言葉はただの決まり文句ではなく、彼の人生そのものを象徴しています。外山氏は、他人のやることに付和雷同せず、自分の考えをしっかり持ち、自分の道を進むことの重要性を説いています。「我が道を往く」という言葉を通じて、常識や流行、体制に囚われない自由な発想を持ち、自分の人生を自分の手で切り開いていくべきだと訴えています。
また、外山氏は自分の人生において、他人の期待や社会の常識に縛られず、自らの信念に基づいて行動してきました。彼は、留学が一般的に推奨されていた時代にあっても、その実効性に疑問を持ち、自分の判断で留学を選ばなかったと述べています。
また、会的な地位や役職を避けることで、自分を見失わずに済んだとも語っています。外山氏のこうした生き方は、一見すると変わり者と見られるかもしれませんが、彼自身はそうした評価を意に介さず、自分の道を貫いてきました。
最後まで努力する
さらに、彼は江戸時代の俳人、滝瓢水の句「浜までは海女も蓑着る時雨かな」を引用し、この句から得た教訓についても述べています。この句は、海女が雨を避けるために蓑を着て浜に向かう様子を描いていますが、外山氏はこれを人生における努力の象徴と捉えています。海に入ればどうせ濡れるのに、それでも浜まで濡れずに行こうとする海女の姿勢は、人間がどんな状況でも自分を大切にし、最後まで努力を続けるべきだという教えを含んでいると彼は考えています。
このように、外山氏は人生の最後まで前向きに生きることの重要性を強調しています。年齢を重ねるにつれて、どうしても投げやりになったり、人生の残りを無為に過ごしてしまいがちですが、彼はそれを良しとせず、常に自分を律し、美しく生きる努力を続けることを勧めています。彼の言葉は、特に高齢者にとって、人生の最後の瞬間まで充実した日々を過ごすための貴重な指針となるでしょう。
外山氏の考え方は、ただ単に自分勝手に生きることを勧めているわけではなく、むしろ自分の人生に責任を持ち、自分自身の信念に基づいて行動することの重要性を説いています。そのためには、他人の意見や社会の常識に惑わされることなく、自分の道を切り開く覚悟と勇気が必要であり、それこそが真に充実した人生を送るための鍵であると彼は考えています。外山氏の哲学は、人生の後半をどう生きるかに悩む多くの人々にとって、心の支えとなるに違いありません。
人事の視点から考えること
本内容で強調されている「自分の道を進む」ことや「最後まで努力を続ける」という姿勢は、人事の役割にとっても非常に重要な要素です。特に、組織の中で個々の従業員がいかに自己実現を図り、キャリアを築いていくかを支援する上で、この考え方は多くの学びを提供します。
1. キャリアの自己決定と自律性の促進
外山氏の言葉にある「我が道を往く」という考え方は、従業員が自らのキャリアを主体的に選択し、進むことを推奨するものです。人事の役割として、このような自律性を持ったキャリア形成を支援することは、従業員のモチベーション向上と組織の生産性向上に繋がります。
例えば、従業員が自分の強みや興味に基づいてキャリアを選べるよう、キャリアカウンセリングやメンター制度の導入が考えられます。
2. 年齢を重ねた従業員の活用と支援
外山氏の「最後の最後まで前向きに生きる」姿勢は、定年を迎えた後も積極的に社会に貢献し続けることの重要性を強調しています。これは、人事にとっても、シニア層の従業員が持つ豊富な経験と知識を活用し続けるための戦略を考えるきっかけとなります。
例えば、定年後の再雇用制度や、シニア層を対象とした専門知識の伝承プログラムなど、年齢を重ねた従業員が引き続き組織に貢献できるような仕組み作りが重要です。
3. 組織文化としての多様性と包括性の強化
「他人の意見に付和雷同しない」という外山氏の考え方は、組織の多様性と包括性を強化するための基盤となります。多様なバックグラウンドや考え方を持つ従業員が、自分の意見を自由に表現できる文化を育むことは、イノベーションの促進にも繋がります。
心理的安全性の高い職場環境を提供し、従業員一人ひとりの意見が尊重される文化を育てるための研修やワークショップを企画することが求められます。
4. ライフステージに応じた柔軟な働き方の提供
外山氏の「浜までは海女も蓑着る時雨かな」という句から得られる教訓として、どの段階にあっても最善を尽くす姿勢が示されています。これは、従業員のライフステージに応じた柔軟な働き方を提供することの重要性とも一致します。
育児や介護などのライフイベントに合わせた柔軟な勤務形態の提供や、テレワーク、時短勤務といった制度の整備を行い、従業員がその時々の状況に最適な働き方を選べるようにすることが重要です。
5. メンタルヘルスとウェルビーイングの推進
「自分の頭で考えることを実践し続ける」という外山氏のアプローチは、従業員のメンタルヘルスやウェルビーイングにも関連しています。自分で考え、自己の行動に責任を持つことは、精神的な健康を維持するための重要な要素です。
従業員が自己成長を促進できる環境を整えるとともに、メンタルヘルスサポートプログラムの導入や、カウンセリングサービスの提供など、従業員の心身の健康を支える取り組みを強化することが求められます。
単に個人の人生観を述べたものではなく、組織の人事管理においても多くの学びと示唆を提供しています。個々の従業員が自分らしい生き方を追求し、組織全体として多様性と包括性を尊重する文化を育てるための貴重な指針として、この本の内容を活かすことができるでしょう。
ハーモニカを演奏して楽しんでいる男性や、集中して太極拳を練習する女性、壁に鮮やかな色で壁画を描く友人同士など、それぞれが自分らしい活動を楽しんでいます。背景には、ガゼボの下で読書クラブのディスカッションに参加するグループも見られ、学びと交流が盛んに行われていることが伝わります。緑豊かで色鮮やかな花や高い木々に囲まれた公園の雰囲気は温かく、終生の学びや創造性、そして健康を大切にするコミュニティの価値を象徴しています。
人生後半をどう生きていくか、多くの学びが得られます。
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