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【書籍】夏まゆみさん追悼ー『致知』2018年5月号(一対一の言葉掛けで人が輝く時)-指導者が心がけるべきことのヒントが盛り沢山

 2023年6月21日、振付師の夏まゆみさんが亡くなりました。「モーニング娘。」や「AKB48」の育ての親とよばれ、多くのダンスグループのアイドルを世に送り出した第一人者といえるでしょう。

 そんな夏さんが、『致知』2018年5月号に、「一対一の言葉掛けで人が輝く時」というテーマで掲載されており、再読してみました。指導者としてのあり方という観点で考えさせられることが多くあります。記事の中から、いくつか取り上げてみました。


「一対一で向き合う」ことが重要

指導の鉄則として、とにかく一対一で向き合うこと。
(中略)
私は団体の指導が多かったんですけど、一対大勢ではなく、一対一が人数分あると考えレッスンしてきました。
例えば、一九九九年に発売されモーニング娘。の「LOVEマシーン」。これは事務所もスタッフ総力を挙げてつくった楽曲で、この時十三歳の新加入メンバーを一番前に出して売り出すフォーメーションを考えました。でも、その子は緊張と先輩たちへの遠慮から、なかなか前に出てこない。 その時「大丈夫、自信を持って」というのは一般的な言葉掛けで、一対一を意識するとこうなるんです。先輩たちの前で「確かに先輩に遠慮する気持ちはあるだろうけど、ステージ上では全く関係ない。いいから、先輩たちを食ってしまえ。でも、楽屋に戻ったらちゃんと敬意を払うんだよ」。
(中略)
また一方、それまでセンターを務めていた子には、「君がいなかったらいまのモーニング娘。はいない。そして、これからも君がいないとモーニング娘。ではないんだ」と。他のメンバーにも各自の長所に光を当てる声掛けに努めました。

『致知』2018年5月号(致知出版社) p102より引用

 組織を率いる場合、「全体」を考えてしまうような気がします。これはもちろん大切なことです。しかし、そのときに忘れがちなのだが、「一対一で向き合う」ということ。声かけをする、相手の「長所」に着目する、ということが非常に重要であるということを再認識しました。組織を率いる方にも非常に参考になるような話だと思います。

「一対一」とは、相手を「観察」すること

一対一ってどういうことかというと、とことん相手を観察することです。そうすることで、 その子が掛けてほしいであろう言葉やタイミングが分かってくる。言葉掛けってすごく大切で、人を育てるための大原則だと思っています。

『致知』2018年5月号(致知出版社) p102より引用

 では、「一対一」とはどのようにすることなのか。これは私自身も、人事評価者の皆さんに対する研修等で話をしていることなのですが、上司としてはとにかく「観察」をするということが非常に大切になります。そして、その際に「評価」をしない。観察をしていれば、評価は自動的ついてくるものです。逆に、観察なしに評価はあり得ない。観察は、最初は「単に見ている」だけのような感であっても、継続していくと、「言葉掛け」のタイミングが分かってくるようになります。夏さんも、言葉掛けを「人を育てるための大原則」と仰っていますが、上司の一番大切な仕事は、部下に対する「言葉掛け」といっても過言ではないでしょう。その結果、部下はしっかりと存在感を与えられるのです。

指導者は「伝える、贈る、認める」

指導者はちっとも偉くないということです。「教えるのではなくて、伝え
る。与えるのではなくて、贈る。見るのではなくて、認める」しかこの三つがキーワードだと思っていて、教える側と教わる側に立場的な上下関係はあったとしても、指導においては上から目線にならず、対等に接する。 それがよい関係づくりの秘訣ですね。

『致知』2018年5月号(致知出版社) p102より引用

 指導者というと、偉いもので、「教える、与える、見る」となりがちです。そうではなく、「伝える、贈る、認める」こと。確かに立場的な上下関係はあるわけですが、対等に接すること。上司はどうしても上から目線になってしまいがちですが、まずは対等に接することを心がける。良い関係がないと指導者としての役割を果たすことはできないでしょう。

エースに必要なものは、自己の確立、強い意志と覚悟

エースに共通しているのは自己を確立して、自信を持って前に進んでいること。 自分の夢に対して強い意志と覚悟を持って臨めるかどうかが、成功する人とそうでない人の差だと思います。

『致知』2018年5月号(致知出版社) p102より引用

 逆にいえば、指導者としては、自己の確立、強い意志と覚悟ができるような人を育てていくということが大切なところなのでしょう。

 これは、今から5年前の記事ですが、改めて読み返してみると、長年、人事・人材育成に従事してきて、指導者のあり方という観点で考えさせられることが多かったです。何度も読み返したいと思います。

 夏まゆみさんのご冥福をお祈りいたします。






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