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【書籍】日々の行動が創る未来ー鍵山秀三郎の人生観と経営戦略

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)のp368「特別講話 後から来る者たちへのメッセージー鍵山秀三郎」を取り上げたいと思います。

 鍵山秀三郎氏は、幸せや経営に関して深い洞察を持っており、多くの示唆を与えています。彼は幸せとは目の前の都合とは関係ないものであり、努力そのものが幸せをもたらすと説明します。彼は経営者が短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点で仕事の価値を見極め、必要があれば方向転換する勇気を持つべきだと強調します。彼自身、厳しい状況の中でも商品の販売先を転換し、成功を収めています。

 鍵山氏はまた、合理的でない取引に対しても強い姿勢を示しており、自分にとって不利益な取引は速やかに中止し、不当な要求に屈しない姿勢を保つことの重要性を説いています。これは、彼が公共の場での不適切な行動に対しても同様の厳しい態度を示していることと一致します。

 また、鍵山氏は小さなことにも意義を見出し、一つ一つの行動に価値を置くことの重要性を説きます。たとえば、草取り一つをとっても、その行動に意義と価値を見出し、完璧に行うことで、仕事に対する総合的な姿勢が改善されると指摘します。これは、彼が他人に対しても温かく接することで知られ、立場の弱い人々に対して特に思いやりを持って行動することからも明らかです。

 宮城谷昌光さんの『晏子』という小説に、中国春秋時代の政治家、晏子が、「益はなくても意味はある」と言う場面があります。無益なことは必ずしも無意味ではなく、意味があるというのです。晏子という人は、無益なことにも意味を見出して行動する、そういう生き方を生涯貫いたんですね。
 私は晏子ほどの偉人ではありませんが、少しでもその姿勢に倣って、せめて自分にもできること、こんな年になってもまだできる掃除に、全国を回って取り組んでいるのです。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p355より引用

 さらに、鍵山氏は自身の経験を通じて、厳しい環境や困難が個人の成長にとって必要不可欠であると強調します。彼は自分自身が困難を乗り越え、それによって多くのことを学び、成長したことを述べています。特に、自分の能力を超えるような環境に身を置いたときに人間は成長すると説明し、覚悟と決断が成長の重要な条件であると語ります。

 最後に、鍵山氏は人生をより良く生きるためには、日々の積み重ねが重要であり、些細なことにも意義を見出し、日常生活においても規律と責任を持って行動することが重要であると強調しています。また、他人に対して不快感を与えないように心掛けること、そして良い心の連鎖を生み出すための小さな行動が、より大きな社会的変化をもたらすと説いています。

<人事の視点から考えること>

 鍵山氏のお話からは、ビジネスだけでなく人生においても大切な教訓が多く含まれています。彼の考え方や行動は、25年間人事業務に従事してきた私たちの仕事にも大きな影響を与え、多くの教訓を提供してくれます。

努力と幸せの関係性
 鍵山氏は、努力そのものが幸せをもたらすというトルストイの言葉を引用しています。これは人事の領域にも当てはまります。従業員の成長や企業文化の向上は、日々の小さな努力の積み重ねから生まれます。努力を通じて自己実現を促し、職場での幸福を追求することが重要です。

トルストイが、「努力は幸せになるための手段ではない。努力そのものが幸せを与えてくれるのだ」と書いていますが、私もそう思います。ですから経営者は、いまのことだけを考えていてはダメなのです。十年、二十年と遠きを慮って、この仕事をこのまま続けるべきではないと思ったならば、どんな障害を乗り越えても方向転換をするべきだと思います。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p360より引用

経営者の遠慮と決断
 経営者は、現在の状況だけでなく、10年、20年後の未来を見据えた決断をする必要があると鍵山氏は述べています。人事担当者としても、この考えは人材の採用や育成、組織の構築において非常に重要です。短期的な利益よりも、長期的なビジョンに基づいた人事戦略を立て、持続可能な成長を目指すべきです。

忍耐と成長
 鍵山氏は、困難や逆境を乗り越えることの重要性を強調しています。人事管理においても、変化や不確実性に対応するためには忍耐が必要です。従業員のモチベーションを維持し、チーム内での衝突を解決し、変化を乗り越える力を育むことが、組織全体の成長につながります。

イギリスの首相を務めたベンジャミン・ディズレーリは、
「いかなる教育も、逆境から学べるものには敵わない」
と言っています。では、逆境に遭うことがすべてかといえば、そうではありません。日頃から様々なことを通じて学んでいるからこそ、逆境から学べるのであって、何の備えもない人が逆境に遭うと、そこで潰れてしまいます。
 やはり大事なことは、日々いろんな人や書物から学んで、それを自分の血肉にしていくことだと思います。私にはこれと言っ才能はありませんが、本は本当によく読んできました。最近は年を取って読書量は落ちましたけれども、それでも移動中など、少しの空き時間でも有効に使って本を読むようにしています。

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)p358より引用

日々の行動と人生の創造
 鍵山氏は、日々の行動が積み重ねられて人生が創られると語っています。人事担当者としては、この考え方を従業員の日常に取り入れ、彼らの成長と発展を支援することが大切です。日々の業務、研修プログラム、キャリア開発計画などを通じて、従業員が自己実現できる環境を提供することが重要です。

 鍵山氏の言葉から学ぶべきは多いですが、特に人事管理の観点から言えるのは、個々の従業員の成長が組織全体の成長につながるという点です。経営者としての洞察力と決断力、そして日々の努力と忍耐が、組織としての大きな成果に結びつくのです。


鍵山秀三郎氏の幸せ、経営、努力の価値に関する深い洞察を象徴しています。交差点に立つ姿は、ビジネスや人生において方向転換をする勇気を象徴しています。図の周りに描かれたさまざまな要素は、長期的な視点、逆境に対する粘り強さ、あらゆる経験から学ぶこと、そして日常生活の小さな行動でも意味ある選択をすることの価値を表しています。穏やかで刺激的な環境が、柔らかい画風で表現されており、反省とインスピレーションを誘う画像となっています。


 792頁にのぼる大作です。まさに仕事のバイブルとなります。名経営者のインタビューや伝説の名講演、一度きりの師弟対談、創業者同士の対談などが、54話を収録されています。



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