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【書籍】『致知』2024年1月号(特集「人生の大事」)読後感

 致知2024年1月号(特集「人生の大事」)における自身の読後感を紹介します。なお、すべてを網羅するものでなく、今後の読み返し状況によって、追記・変更する可能性があります。


巻頭:後藤俊彦さん「長い占領政策の呪縛から目覚めつつある日本」p2

 日本の占領政策は1945年から1952年まで続きました。その影響は今も日本社会に色濃く残っています。占領下での政策、特に憲法改正や教育制度の変革、戦争責任の問題は、現代の日本の政治、文化、社会に深い影響を及ぼしています。しかし、私は日本がこれらの「呪縛」から徐々に解放され、独自の道を歩み始めていると考えます。経済成長、文化的な自立、そして国際社会での積極的な役割は、この変化の証拠といえるでしょう。その中で以下の部分です。

 ロシア・ウクライナ戦争や地球規模で発生する自然災害などの深刻なニュースで閉塞状態にある私共に明るさと感動を与えてくれた。個人一人ひとりの努力の積み重ねはあくまでも個人的なものであるが、その一人ひとりの努力が万人の歓びとなり、社会変革の力ともなるのである。人間一人の存在は小さいものであるが、自らの勤めに意義と誇りと使命感をもって自己を完成させることが信頼と豊かさに満ちた社会をつくってゆくのであろう。戦後の日本は今漸く長い占領政策の呪縛から目覚めつつある。わが国の歴史は古く、聖徳太子の十七条の憲法や鎌倉時代の御成敗式目の中には、すでに国家のあるべき理性と道理が「人の道」として説かれている。国であれ、一個人であれ、危急存亡の時こそ私共は古典の知恵に学び、わが国の真の自由と名誉を守り抜く意志が肝要と思われる。

『致知』2024年1月号 p3より引用

 確かに占領政策の影響は深いですが、現代の日本はもはやその枠を超えています。グローバル化の進展、技術革新、そして若い世代の国際意識の高まりは、日本が古い枠組みを脱して、よりグローバルで多文化的な方向に進んでいることを示しています。占領時代の影響を乗り越え、新しいアイデンティティを形成しているのです。

 人事の立場としては、日本の企業文化、特に終身雇用制度や高度なグループ意識は、一部には占領政策の影響を受けていると考えます。しかし、現代の労働市場はこれらの伝統的な価値から徐々に離れつつあります。グローバル化と労働力不足の影響で、企業はより柔軟な雇用形態を採用し始めています。これは、占領政策の遺産を超えた新しい労働文化の兆しといえるでしょう。もう少し深掘りしてみます。

個人の努力と社会的影響
個人の努力は個人的なものでありながら、それが集まることで社会全体に歓びや変革をもたらす力になるという考え方。これは、人事の立場からも非常に重要な点です。企業においても、一人ひとりの社員が自己の業務に誇りを持ち、最大限の努力をすることが、組織全体の成長や社会的貢献につながるといえます。

自己完成と社会貢献
自らの職務に誇りを持ち、使命感を持って自己を完成させることが、信頼と豊かな社会を構築する基礎になるとの視点。これは、人事の立場では、社員一人ひとりが自己の能力とキャリアを成長させることが、企業の信頼性や社会的責任の達成に寄与するということを意味するものといえます。

歴史的視点からの学び
日本の歴史、特に聖徳太子の十七条の憲法や鎌倉時代の御成敗式目などを引用し、国家の理性や道理が「人の道」として説かれている点に着目しています。この点は、企業における人事の仕事においても、歴史から学ぶことの重要性を示唆しています。たとえば、企業文化や組織の伝統を尊重しつつ、時代に即した人事政策を策定することが求められます。

危機時の対応と自由と名誉の保持
危機的な状況において、古典の知恵に学び、国の自由と名誉を守る意志の重要性について言及しています。これは、企業における危機管理や、困難な状況下での適切な人事対策の重要性を示しています。例えば、経済危機や社会的変動の際には、従業員の安全と企業の継続的な運営を確保するための緊急対策が必要になります。

 個々の従業員の成長が組織全体の発展につながること、歴史からの教訓を活かした柔軟な人事政策の重要性、そして困難な時期における適切な人事対策の実施が重要であるといえるでしょう。これらは、社員一人ひとりが自己を磨き、企業全体としても成長し続けるための基盤を形成するものになります。
 

リード:藤尾秀昭さん 特集「人生の大事」p9

 「人生の大事」、人生にとって一番大切なもの、大変重い言葉です。特に、人間の三つの「善知識」については、人生の大事にとっても大変重要でしょう。

以前、青山俊董氏から仏教には善知識という言葉があり、人間には三つの善知識が必要である、と伺ったことがある。
 善知識とは人々をより真実な生き方へと導き、支え、励まし、 応援してくれる人のことである。
 三つの善知識とは、
 一は先達としての善知識 ―先師
 二は同行の善知識一緒に働く仲間
 三は外護の善知識ー外から応援してくれる人

『致知』2024年1月号 p9より引用

 善知識の概念を、私なりに、組織マネジメントの上で解釈してみると、組織内での人材育成やマネジメント、職場のコミュニティ構築において非常に重要な要素であると思います。

  1. 先達としての善知識 – 先師
    先達としての善知識は、組織内でリーダーやメンターの役割を果たす人物です。彼らは自らの経験と知識を活かして後輩や部下を指導、成長へと導きます。先達は社員の能力開発に不可欠であると理解しています。彼らは新卒者のオリエンテーション、階層別研修、サクセションプランニングにおいて中心的な役割を果たし、組織の持続可能な成長に貢献してくれるでしょう。

  2. 同行の善知識 – 一緒に働く仲間
    同行の善知識は、日々の業務を通じて支え合う同僚やチームメンバーを指します。人事の観点から見ると、この種の関係性は職場のエンゲージメントと直結しています。同僚間の相互支援と協力は、チームのパフォーマンスを高めるだけでなく、職場の雰囲気を良くし、個々の職員が仕事に対してより積極的に取り組むことを促します。これは、例えば、福利厚生プログラムやチームビルディングの活動を通じて促進されることが多いです。

  3. 外護の善知識 – 外から応援してくれる人
    外護の善知識は、組織の外部からサポートを提供する人々です。これには、顧客、ビジネスパートナー、コンサルタント、さらには業界団体や教育機関の専門家などが含まれます。この種の関係性は特に新しい視点や知識の導入、ビジネスのイノベーションに重要です。外部の専門家やパートナーとの連携により、組織は新たなアイデアを得て、業務改善や人材育成の質を高めることができます。

 組織においてこれら三つの善知識を適切に活用することは、人事管理においても重要な側面と思います。これらの関係性を育むことにより、組織はより強固で、創造的かつ生産的な職場環境を構築することが可能になります。人事担当者としては、これらの関係性が組織内で効果的に機能するよう、様々なプログラムや方策を策定し、実施することが求められます。

組織マネジメントにおける「善知識」の概念を表しています。現代のオフィス環境で三つの異なるグループが描かれています。
左側では、スーツを着た中年のアジア人男性がメンターとして、若い多様な専門職のグループを指導しており、「先達としての善知識」を象徴しています。
中央では、様々な民族の男女が協力し合っている様子が描かれ、「同行の善知識」を表しています。
右側では、ビジネス服装の白人女性が外部コンサルタントとして、会社の幹部と戦略を議論しており、「外護の善知識」を示しています。背景には明るく開放的なオフィススペースが描かれ、ポジティブで協力的な雰囲気を強調しています。


一大事とは今日只今の心なり 五木寛之さん、青山俊董さん p10


 「一大事とは今日只今の心なり」というテーマで行われた五木寛之氏と青山俊董氏の対談は、人事の立場からも多くの示唆を受けることができます。

 五木氏と青山氏は、共に人生の経験が豊富な90歳を超えた方々で、彼らが語る「今を生きる」という考え方は、組織の中で働く人々にとっても重要なメッセージです。企業の人事として、日々の業務に追われる中で、目の前の課題や個々の従業員の現在に焦点を当てることの大切さを改めて認識することができます。

 特に、青山氏が語る「下り坂の風光を楽しむ」という考え方は、キャリアの後半に差し掛かった従業員や、退職を控えた高齢の従業員に対する理解を深めるのに役立つでしょう。彼らのキャリアのこの段階では、新しいことに挑戦するよりも、今までの経験を生かし、人生の晩年を豊かにすることが重要になります。

 また、五木氏が言及した「下山の思想」は、人事におけるキャリア開発や後継者計画においても参考になります。組織内でリーダーシップの役割を担う従業員がキャリアの山頂に達した後、どのように彼らの経験や知識を組織に還元し、次世代のリーダーを育成するかという点です。

青山 ここからここまで何をと時事を限る修行ではなく、 二十四時間、いまここ、 いまここを積み重ねて、どの一瞬も大事に生きていこうじゃないかと。このことを自分に言い聞かせながらこれからも歩ませてもらいたいと念じております。
五木 いまは「人生百年時代」と盛んに言われていますが、人がどんなに長く生きるようになっても、人生というのは一日一日、一時間一時間、一刹那の積み重ねですからね。いちせつな私もいつの頃からか、長いスパで考えて思い煩うのはやめて、きょう一日を丁寧に生きようと考えるようになりました。 朝起きると、きょうも何とか目を覚ますことができたと感謝して、夜にはああきょうも一日終わったと安堵して眠りに就く。もちろん穏やかで気持ちのよい日もあれば、ため息ばかりの重苦しい日もあります。 しかし、どんな日もかけがえのないきょう一日と受け止めて、その日その日を味わい、丁寧に生きることが大切だと感じています。

『致知』2024年1月号 p19より引用

 青山氏と五木氏の言葉は、私の人事キャリアにおいても大いに共感を覚えます。特に「一日一日を大切に生きる」という考え方は、非常に重要と感じます。

 私たちは、社員一人ひとりのキャリアや日々の業務に深く関わります。そのため、青山氏の「どの一瞬も大事に生きていこう」という言葉は、社員個々の成長やキャリアのサポートにおいても重要な指針となります。毎日の業務は繰り返しのようでいて、その中には多くの重要な瞬間が含まれています。それぞれの瞬間が社員の成長や組織の進化に大きく影響を与えることを意識することが求められます。

 一方、五木氏の「一日一日を丁寧に生きる」という考え方は、人事として 採用、人事企画、教育、福利厚生、人事制度設計など、さまざまな業務を通じて、社員一人ひとりに丁寧に向き合うことが求められます。特に、人事としては、社員の生活やキャリア全体を見据えたサポートを行うことが重要であり、そのためには「日々の」対話や業務の中での細やかな配慮が不可欠です。

 人生100年時代と言われる現在、人事としての役割は更に重要性を増していると言えるでしょう。社員が長期にわたって健康で活躍できる環境を提供すること、生涯を通じた学びと成長の機会を提供すること、これらは人事の大きな責務と言えます。そのためには、一日一日を大切にし、社員一人ひとりの「いまここ」に焦点を当てた支援を行うことが重要です。

 組織の中での一日一日は、社員一人ひとりの小さな成長や変化の積み重ねであり、それが組織全体の成長につながっていきます。人事としては、この一日一日の積み重ねを大切にし、社員がそれぞれの日を充実させながら、自己実現に向けて前進できるよう支援することが求められます。認識を新たにしたところです。


諦めなければ夢は叶う——何歳になってもいまがスタート 三浦雄一郎さん p21

 三浦雄一郎さんといえば、冒険家、プロスキーヤーとして有名です。様々な困難も乗り越えてきた方です。クレバスを困難に例えて表現されています。アクシデントはいつ起こるか分からない、しかし、その時に自分でできることに挑戦し続けることが非常に大切です。

いつアクシデントが発生するか分からない。クレバスのような逆境や試練に直面し、人生に絶望しそうな時であっても、絶対に諦めない心を持ち続け、目の前の壁を乗り越えられると信じて、一歩ずつ積み重ねていく。そうすれば必ず前進し、いつしか道は開けるんです。
人間にはそれぞれのエベレストがあります。 どんな人でもそれぞれの職業や年齢、立場、その時に置かれた状況において、自分にできる最高の目標を目指し、そこに向かって挑戦を続けていくことが大事ではないでしょうか。

『致知』2024年1月号 p26より引用

 それでは、私たちは人事の立場としては、従業員をどのように支援していけばよいのでしょうか。いくつか挙げてみたいと思います。

挑戦心
 三浦氏のように、限界を自分で決めずに挑戦する心は、従業員にとって非常に重要です。企業はこのような挑戦的な精神を育成し、支持する文化を作るべきです。新しいプロジェクトや異なる職務への挑戦を奨励することで、従業員の潜在能力を引き出すことができるでしょう。

年齢に関係ない成長の可能性
 三浦氏は91歳での富士山登頂を達成しています。これは、年齢に関係なく成長と学習の可能性があることを示しています。特に昨今は、以下にしてシニアに活躍いただくことの重要性が注目されています。
 人事部門は、全ての年齢層の従業員に対して、継続的な学習と成長の機会を提供することが重要といえるでしょう。

困難に立ち向かう力
 三浦氏は重い病気を乗り越えています。企業もまた、従業員が個人的、職業的な困難に直面したとき、サポートする体制を整えるべきです。これにはメンタルヘルスのサポートやキャリア開発の機会が含まれます。

チームワークの重要性
 三浦氏は仲間のサポートによって目標を達成しています。企業においても、チームワークの重要性を理解し、協力的な職場環境を育むことが重要です。チームビルディング活動、効果的なコミュニケーションのトレーニングを通じて、従業員間の協力を促進することが大切といえるでしょう。

目標設定と自己超越
 三浦氏は自分の限界を超える目標を設定し、それに挑んできました。人事部門は従業員に対して、現状に満足せず、常に自己超越を目指すよう促すべきです。目標設定プロセスを通じて、従業員が自身の能力を最大限に引き出せるよう「支援」することが大切です。

 三浦氏の人生は、不屈の精神と絶え間ない自己超越のした素晴らしい例の一つでしょう。
 人事として、私たちも従業員が自己実現を図るための環境を提供し、個々人が持つ無限の可能性を信じ、その実現を支援する役割を担っているといえます。





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