【書籍】『致知』2023年10月号(特集「出逢いの人間学」)読後感
致知2023年10月号(特集「出逢いの人間学」)における自身の読後感を紹介します。なお、すべてを網羅するものでなく、今後の読み返し状況によって、追記・変更する可能性があります。
巻頭:後藤俊彦さん「遙かなる歴史の追憶」p2
どうしても未来志向になりがりですが、過去の出来事には必ず意味があるという志向がまず大切であると思います。この平和な、そして様々な特徴のある日本に感謝して毎日を過ごすことが大切なのではないでしょうか。
リード:藤尾秀昭さん 特集「出逢いの人間学」p8
今回のテーマである「出逢いの人間学」は、藤尾秀昭さんがよく講演のテーマとして用いるものです。『致知』 四十五年の歴史も「出逢い」がすべてがすべてを作っていることでしょう。
倫理研究所の丸山敏秋理事長の言葉は非常に心に突き刺さるものがあります。
何か面白くないことがあると、やれ政府だ、市町村だとなっていないでしょうか。政府などのせいにしても、結局は自分に跳ね返ってきます。『致知』の中には、厳しい状況を切り拓く方のことがたくさんあります。この方々のことを感じると、「自助の精神」を持たざるを得ません。自助の精神がある国家、もっと小さい組織であってもそのようにいえるでしょう。
『致知』をある程度の期間講読していると、いろいろ感じるところがあるのですが、いつの間にか「自助の精神」ができてくるのだと思います。
そういえば、サミュエル・スマイルズの、『自助論』を思い出しました。人々の成功は自らの努力と持続性によってもたらされるとの考えを持っていました。その思想は、現代の日本社会にも必要なものであるといえるでしょう。今の日本で求められているのは、政府や自治体に頼るのではなく、自らの手で問題を解決する国民の自助努力の精神です。しかし、多くの人々は簡単な道を選ぶ傾向にあり、その結果、福祉の費用が増大し続けて国の経済に重大な影響を与えてしまっています。
世界の頂点をいかに掴んだか 栗山英樹さん、横田南嶺さんp10
2023年3月に開催されたWBC (ワールドベースボールクラシック)で、3大会ぶり3度目となる世界一に輝いた侍ジャパン。その快挙は勇気と感動を与えてくれました。チームを率いた栗山英樹監督に対する横田南嶺氏。この組み合わせから、出逢いの重要性を改めて感じることができるのです。
人生を歩んでいく中で、我々は数多くの人々と出逢います。それぞれの出逢いが持つ意義や価値について、横田南嶺さんと栗山英樹さんの対談から感じ取ることができます。
横田さんの言葉から、彼の人生が多くの価値ある出逢いに恵まれたことが伺えます。それは知識や経験の積み重ねとして、彼の人生の中で非常に大きな役割を果たしています。彼のように、出逢った各人が持つ知識や経験、価値観を学び、それを自分の中に取り入れることで、一人の人間としての深みや広がりが増していくのです。
栗山さんは、彼の野球人生が出逢いの賜物であると語っています。運命的な出逢いによって、彼のキャリアが大きく変わった瞬間もあったことでしょう。私たちの人生も、意識せずとも、出逢いによって大きく方向転換することがあるのです。
横田さんが栗山さんに対して「謙虚で素直」と評価しているのは、これが出逢いをより深いものとするための鍵であるからです。謙虚であれば、相手の意見や考えを尊重し、学び取ることができます。素直であれば、自分の中にその学びを取り入れ、成長することができます。
出逢いは私たちの人生を豊かにし、成長させてくれる貴重なものです。しかし、その出逢いを最大限に生かすためには、謙虚さと素直さが必要です。そして、出逢いの中での学びや感謝は、私たちの人生をより有意義なものとしてくれるでしょう。
諦めなければ道は開ける 浅川智恵子さん p34
浅川氏は小学生のとき、水泳で顔面をプールの壁にぶつけてケガ、視神経を痛めたのがもとで徐々に視力が衰え始め、中学生のときに失明してしまいます。しかしその後も諦めず、IBM ホームページリーダーの開発、東大で博士(工学)の学位を取得するなど、ご活躍されています。一見、運の悪い体験であるように思えますが、浅川さんはなぜ乗り越えられたのでしょうか。いくつか紹介されいますが、その一つが「ノーと言わない」ということではないかと思います。
私たちは何か悪いことが起きてしまうと、「ああ、もうこれで終わりだ」と思ってしまい、「もう何もやらない」のようなことになってしまうことがあるのではないかと思います。それはまさに選択肢を狭めてしまっているということ、そうすると、もうその中で終わってしまうということです。「だからこそ」ということが大切なのかも知れません。
挑戦する姿勢
「ノーと言わない」という信条が挙げられており、これは新しいことや困難なことに対しても避けずに取り組む姿勢を示しています。諦めずに前進することで道が開けるという信念も、その挑戦する姿勢を裏付けるものです。
ポジティブなマインドセット
14歳での失明は一般的には大きな挫折として捉えられるかもしれませんが、この方はそれをきっかけとして新しい人生が開けたと捉えています。つまり、起こる出来事や状況を「良い」と「悪い」で判断するのではなく、どうそれを受け入れ、どう活かすかが重要だという考え方が見受けられます。
人生の出逢いを大切にする
今回の、「出逢いの人間学」というテーマに関連して、人生の中での出逢いや出来事を大切にしていることが伺えます。これらの出逢いや経験が、その後の人生の選択や方向性を大きく影響するものと捉えているようです。
感謝の心
逆境や困難な状況でも、それを乗り越えて得られるもの、学べるものがあると捉えることができるのは、感謝の心を持っているからだと思います。失明という出来事を不幸とは感じず、それを通して得られた人生の経験や教訓を感謝しているのです。
自分らしい生き方を追求
最後の部分で、「自分が思っていた以上の人生が開けてきた」と述べられている点から、自分自身の価値観や信念に基づいて生きることの大切さが伺えます。他人の価値観や社会の期待に縛られず、自分の道を進む勇気と決断力が見受けられます。
「どんな状況や出来事も、それをどう捉えるかで人生は変わる」というメッセージが強く伝わってきます。
少し話は別になりますが、森信三先生が「劣等感」について述べている一一節を思い出しました。浅川氏は、劣等感を持っていたわけではありませんが、マイナスから立ち上がる、かえってマイナスがあったくらいの方が、と述べていたのを思い出しました。限りある人生をどのように生きていくのかということについて、大きな示唆を与えてくれます。人間として生を与えられた奇跡、ノーと言うことで選択肢を狭めず、それをとことん活かすのだという意識が非常に重要であることを改めて認識したところです。
人はどこからでもやり直せる 栗原豊さん p50
茨城県南東の海辺に、完治しないとされるアルコール依存からの回復・就労支援を担施設がある。その施設長は栗原豊氏。自身も依存症に蝕まれた前半生から、救い出されました。しかし、もう既に60歳を超えてからのスタートです。
何度も服役を繰り返し、60歳を超えてからも留置所行き。そこで会った武藤昇氏という検事に、「ダルクにいって治療せよ」と言われます。そこで弱さを認め、自分自身を見つめ直し、矯正されます。
そして、62歳の時に逆に自分が施設を持つべく「鹿島潮騒ダルク」を立ち上げます。軌道に乗るまでもそれなりの苦労がありました。
「弱い自分」というのをさらけ出すのはとても辛いことですし、できればやりたくないことです。分かっていても自分ではなかなか難しいことです。栗原氏の場合は、武藤氏と出逢い、めったにないチャンスをものにしたわけです。出逢いのチャンスをしっかりとものにする、ということもまた大切なことなのでしょう。栗原氏は、60歳を超えてからのスタートですから。
自己受容
人は自分の弱さや無力さを認識し、それを受け入れることで、真の強さを得ることができる。
瞬間の意識
巨大な課題や挑戦に直面したとき、すぐに完璧な結果を求めるのではなく、「今日一日」の努力や忍耐を重視することが大事。小さなステップが結果的に大きな変化をもたらすことがある。
再スタートの可能性
過去の過ちや選択、経験に関わらず、人はいつでも新しい道を選び、やり直すことができる。生涯のどの時点であっても再スタートが可能であることを示している。
感謝の心
過去の経験や人間関係に対するマイナスの感情も、視点を変えることで感謝の気持ちに変わる可能性がある。特に、親や家族に対しては、当初は恨みや不満を感じることもあるが、その背景や意味を理解すると感謝の心に変わることが多い。
依存との闘い
アルコールや薬物などの依存症との戦いは難しいが、持続的な努力と日々の忍耐を通じて、それを克服し、新しい人生を築くことができる。
過去の経験や過ち、依存症との闘い、そして自己受容と再出発の大切さを通じて、人生の中での多様な挑戦と向き合う方法についての深い洞察を感じます。いつになっても人生は捨てたものではありません。
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