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【書籍】時代を超えて学ぶべき教訓 失敗する組織、3つの共通点と対策ー日経ビジネス記事

 日経ビジネス2024/8/23の記事に『時代を超えて学ぶべき教訓 失敗する組織、3つの共通点と対策』が掲載されていました。

 この記事は、経営における失敗の教訓をトヨタ、小林製薬、三菱電機などの事例を通じて分析しています。主に取り上げられているのは、失敗する組織に共通する3つの特徴「多数派の圧」「過度な目標」「内向き体質」です。これらは、他山の石でなく、どこの企業にもありうる話であり、学ぶべき点が多くあるように思います。

多数派の圧

 組織内で攻守のバランスが崩れると、失敗につながりやすくなります。三菱UFJフィナンシャル・グループでは、攻めの経営に偏重した結果、業務改善命令を受ける事態となりました。これは、銀行がグループ全体を主導し、証券業務に過度に踏み込んだ結果、違法行為が発生したことが原因です。

過度な目標

 過剰な目標設定が、現場に心理的なプレッシャーを与え、最も重要な安全性を軽視する結果を招きます。JALの事例では、定時運航を守ることが優先され、安全管理が疎かになり、運航トラブルが相次ぎました。

内向き体質

 組織が内向きになり、顧客視点を欠落させると、ガバナンスの不全が発生します。小林製薬は健康被害に対する対応が遅れ、結果的に信頼を失いました。この事例では、問題が社内で留まり、外部への報告が遅れたことが大きな問題となっています。

人事の視点で考える教訓

1.組織文化の構築と維持

 多数派の圧に関連する問題は、組織内でのパワーバランスの崩れや一方的な価値観の強制に起因しています。
 人事部門は、公正で多様な意見が尊重される組織文化を育成し、維持する役割を担うべきです。特に、銀行や証券といった金融業界では、規制の枠組み内での競争を推進しつつ、組織全体のガバナンスを確保するために、適切なリーダーシップと監督機能を強化する必要があります。

2.目標設定と現場のストレス管理

   過度な目標が現場にプレッシャーを与え、安全性や倫理的な判断が軽視されるリスクが高まります。人事部門は、現実的で達成可能な目標設定を推奨し、従業員が過度なストレスを感じないようなサポート体制を整えることが求められます。また、ストレスマネジメントやメンタルヘルスのケアを強化し、現場の従業員が適切な判断を行える環境を提供することが重要です。

3.透明性とガバナンスの強化

 内向き体質に起因する問題では、企業が外部との対話を疎かにし、問題解決が遅れるケースが見られます。人事部門は、組織内外での透明性を高め、適切なガバナンスを確保するために、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の文化を徹底する必要があります。特に、経営層と現場の間のコミュニケーションを円滑にし、リスクマネジメントの意識を組織全体に浸透させることが不可欠です。

4.中間管理職の育成とサポート

 記事では中間管理職の疲弊が指摘されていました。人事部門は、中間管理職に対して適切なトレーニングやサポートを提供し、彼らが現場での意思決定やリーダーシップを効果的に発揮できるようにする必要があります。具体的には、業務量の適正化、責任と権限のバランスの見直し、そして時間的余裕を持たせるための業務プロセスの改善が求められます。

5.権限委譲と人材の育成

 現場の長が必要な権限を持たないことが問題を引き起こす原因の一つとされています。人事部門は、現場のマネージャーが十分な権限を持ち、自らの判断で迅速に対応できる体制を整えることが重要です。また、そのための人材育成プログラムを整備し、現場での即戦力となる人材を育てる必要があります。

 これらの観点から、人事部門は経営戦略に直接関与し、組織全体の健全な運営をサポートする重要な役割を果たすことが求められるでしょう。

組織における3つの共通の課題を視覚化したもので、各課題がどのように組織の失敗につながるかを象徴的に表現しています。

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