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【書籍】『致知』2024年5月号(特集「倦まず弛まず」)読後感

致知2024年5月号(特集「倦まず弛まず(うまずたゆまず)」)における自身の読後感を紹介します。なお、すべてを網羅するものでなく、今後の読み返し状況によって、追記・変更する可能性があります。

「倦まず弛まず」とは?

「倦まず弛まず」とは、「疲れることなく、怠けることなく、常に一生懸命に努力し続ける」という意味です。この言葉は、目標達成や成功を目指す際に、粘り強く努力を続けることの大切さを表現しています。また、挑戦する中で生じる困難や障害に対しても、めげずに前進し続ける姿勢を示す言葉としても使われます。例えば、学問やスポーツ、仕事など、長期間にわたる努力が必要な分野でよく引用されているのを見かけます。

 「倦まず弛まず」の精神は、成功への道のりが困難であっても、諦めずに続けることの大切さを教えてくれます。この表現は、日本の伝統的な価値観や文化の中で育まれ、多くの人々にとって励みとなる言葉といえます。「継続は力なり」ということばもありますが、継続することで初めて成果が得られるという考え方を示しています。

 「倦まず弛まず」は、単に努力を続けるという意味だけでなく、その努力が最終的にどのような価値を生み出すかという深い意味を持っています。それは、個人の成長、目標達成、さらには社会全体の進歩に貢献するということを含んでいます。この言葉を胸に刻み、日々の生活の中で実践することで、私たちはより良い未来を築くことができるでしょう。本書の中で、具体的内容を見ていきたいと思います。


巻頭:數土文夫さん 「君子は諸を己に求む。小人は諸を人に求む」p2

 孔子の教えを引用して、個人としての自己反省と社会的責任の重要性を強調しています。「君子は諸を己に求む。小人は諸を人に求む」という言葉を通じて、自己の行動を他人や外部のせいにせず、自らを改善することの大切さを説いています。

約二千五百年前、古代中国の偉大なる教育者・孔子は弟子に、「君子は諸を己に求む。小人は諸を人に求む」と諭しています。即ち、上に立つ立派な人物は、周りに起きた諸々の過誤や失敗に対して謙虚に反省し、自ら責任を取る。しかし、未熟で卑怯なる者は、自らの過誤や失敗をも他人のせいにして反省などしない。小人(卑怯者)にはなるなと。

『致知』2024年5月号 p3より引用

 日本の政治状況と社会的課題についての深い反省と批評を含んでいます。まず、政治家の不透明で不誠実な行動と、それに対する国民の不満について述べられています。政治家には説明責任、倫理観、責任感が欠けており、即刻退場を求める声がある一方で、これらの政治家を選んだのは選挙権を持つ国民自身であり、責任は国民にもあると指摘しています。日本の国政選挙の投票率が低いことを例に挙げ、政治への参加と責任の重要性を訴えています。

 日本のGDPがドイツに抜かれたこと、そして政党派閥の裏金問題など、日本が直面している多くの課題を指摘しています。これらの問題を通じて、政治家だけでなく国民一人ひとりが社会的、政治的責任を自覚し、行動することの重要性を強調しているでしょう。

 一方、日本の国際的な位置づけにも触れ、国家ブランド指数(NBI)での日本の評価が向上し、ドイツを抜いてトップに立ったことを紹介しています。この成果は、日本の国際的な評価が改善していることを示しているものの、国内の政治や社会的課題に対して自己満足することなく、さらなる改善を目指すべきであると述べています。

 數土氏は、日本の現状に対する深い懸念とともに、個人の責任感、政治参加の重要性、そして国際社会における日本の地位向上への期待を表しています。国政における自己反省と、国際的な競争においても日本がその品格を保ち続けることの重要性を訴える内容でしょう。

 數土氏は、現代日本の政治、社会、そして国際社会における日本の立ち位置について深い洞察と批評を提供しています。ここからは、人事の専門家として、これらの問題を組織内の問題として捉え、どのように対応していけばよいかを考えてみたいと思います。

政治家の責任と組織のリーダーシップ
 數土氏は、政治家の説明能力の欠如や倫理観の不足を批判しています。これは組織内でのリーダーシップの問題にも通じるものです。組織のリーダーは、説明責任(アカウンタビリティ)と倫理観を持ち合わせていなければなりません。特に、危機管理や不祥事が発生した際には、リーダーの誠実な姿勢が組織の信頼を守る鍵となります。

選挙と人事評価
 
政治家を選出する選挙のプロセスと組織内での人事評価システムには類似点が見られます。どちらもパフォーマンスに基づいた評価と選択を行うプロセスです。組織内では、パフォーマンスマネジメントシステムを通じて、個々の貢献と成果を正確に評価し、それに基づいて報酬や昇進を決定することが重要です。不適切な評価や不公平な処遇は、組織内のモチベーションの低下や不信感を招きます。

投票率と組織内エンゲージメント
 
日本の低い国政選挙投票率は、組織内での従業員エンゲージメントの低さにも例えられます。エンゲージメントが低いと、従業員は組織の意思決定プロセスに積極的に参加しようとせず、結果的に組織全体のパフォーマンスが低下します。従業員が組織の方針や目標に共感し、自分事として捉えるためには、経営層の透明性とコミュニケーションの向上が不可欠です。

組織としての国家ブランド
 
国家ブランド指数での日本の上昇は、組織が外部に対してどのように認識されているか、すなわちブランドイメージの重要性を示しています。組織においても、社外に向けたブランドイメージの構築と維持は、優秀な人材の獲得、顧客の信頼獲得、そして長期的な成長に直結します。組織は、社会的責任を果たし、積極的に価値を提供することで、そのブランド価値を高めることができます。

まとめ
 
組織内で起こりうるこれらの問題への対応策は、リーダーシップの強化、公正で透明な評価システムの確立、従業員エンゲージメントの向上、そしてブランドイメージの管理などが考えられます。これらはすべて、組織の信頼とパフォーマンスを高めるためには、これらの基本に立ち返り、日々の業務に取り組むことが重要と感じたところです。

リード:藤尾秀昭さん 特集「倦まず弛まず」p7

 「倦まず弛まず」というテーマは、長期的な目標や夢を追求する上での不可欠な精神状態を示しています。この概念は、「飽きない」という意味の「倦まず」と、「心を緩めない」という意味の「弛まず」から成り立っており、一度何かを始めたら、それを継続することの重要性を説いています。具体的には、途中でやる気を失ったり、目標から遠ざかったりすることなく、一貫して努力を続けることを意味します。この考え方は、日々の小さな挑戦から人生の大きな目標に至るまで、あらゆる場面で適用される普遍的な価値を持っています。

「倦まず」は「飽きない」、「弛まず」は「心を緩めない」ということである。一つのことを始めたら途中でいやになって投げ出したりしない。夜々として努力を続ける。その大事さを説いている。 人間の心が陥りやすい通弊を戒めた言葉と言える。

『致知』2024年5月号 p7より引用

 このテーマを『論語』にある子路と孔子の対話を例にとって掘り下げています。子路が政治についての心得を尋ねた際、孔子は「皆より先に苦労をし、皆をねぎらうこと」を教え、さらに「飽きることなく続けること」の重要性を強調しました。このやり取りは、「倦まず弛まず」の精神がどれほど古くから価値あるものとされているかを示しており、努力と継続の大切さを今に伝えています。

 また、『致知』とその読者によるこの精神の実践例も紹介されています。住友生命の故・新井正明氏が『論語』の中でも特に「無倦」の精神を重んじ、その生涯を通じて自己研鑽を続けたことや、歌手のさだまさしさんが自身のデビュー50年のキャリアを通じて一度も手を抜かず、すべてのステージを大切にする姿勢を保ち続けたことが具体的な例として挙げられています。さだまさしさんは、一つ一つのステージを「これ一回しかない」という思いで臨むことで、その価値を最大限に引き出しています。これらの事例は、「倦まず弛まず」の姿勢がどのように人生やキャリアにおいて実り多い結果を生み出すかを示しています。

 『致知』自体がこの精神を体現しているでしょう。45年以上にわたって人生を真剣に生きる人々の心の支えとなり、人間学の一道を歩み続けてきたことは、「倦まず弛まず」の精神の具体例です。この長期にわたる努力は、若い世代にも広がりを見せており、特に中国若獅子の会の前代表であるKさんからの手紙は、『致知』との出会いが彼の人生における目的と生き方に大きな影響を与えたことを物語っています。彼は『致知』を通じて自己啓発の重要性を学び、同じように社会に貢献する仲間を増やすことを誓っています。

 最後に、「中庸」の言葉を引用して締めくくられます。「悠久は物を成す所以なり」というこの言葉は、「倦まず弛まず」続けることが最終的には成果を生み出す唯一の道であることを示しています。この精神は、単なる成功への道だけでなく、人生をより豊かにし、社会に貢献するための基盤となることが強調されています。全体を通じて、読者は「倦まず弛まず」の姿勢が個人の成長、成功、および社会への貢献にどのように重要であるかを深く理解することができます。

 「倦まず弛まず」という言葉は、長期的な視野で努力を続け、目標に向かって進むことの重要性を示しています。これは人事領域においても同様に適用される原則です。人事管理の仕事は、日々の業務の細部に埋もれがちであり、短期的な成果や効率性に焦点を当てがちですが、本質的には、組織や個人の成長を長期的な視野で支え、導く役割を担っています。

採用と人材開発
 
例えば採用プロセスでは、即戦力の確保が求められる一方で、将来の組織のリーダーやキーパーソンに成長する可能性を秘めた人材の発掘も重要です。長期的な視野での採用戦略は、「倦まず弛まず」の姿勢で才能の開花を支え、育成することを意味します。人材開発では、一時的なトレンドや即効性に流されず、個人のキャリアパスと組織の将来像に合致したスキルセットの向上を目指す必要があります。

組織開発と変革管理
 
組織の成長や変革は、一朝一夕には成し遂げられるものではありません。長期的な成功を目指す組織開発では、「倦まず弛まず」の精神が不可欠です。変革の過程においては、不確実性や抵抗に直面することが多々ありますが、目標に向かって着実に進む姿勢が求められます。

パフォーマンスと報酬マネジメント
 
パフォーマンスマネジメントシステムの設計と運用では、短期的な成果にとらわれることなく、従業員の長期的な成長と発展を目指すことが重要です。評価とフィードバックのプロセスを通じて、従業員が自身のポテンシャルを最大限に引き出せるよう支援すること。また、報酬マネジメントでは、公平性とモチベーションの向上を長期的に保つための戦略が必要です。

福利厚生とエンゲージメント
 従業員のエンゲージメントや福利厚生の設計においても、「倦まず弛まず」の精神は重要です。従業員が仕事と私生活のバランスを取りながら、健康的で満足感のある職場環境で働けるようにすることが、組織の持続可能な成長に貢献します。

まとめ
 「倦まず弛まず」という姿勢は、人事領域においても、個々の業務やプロジェクトを超えた組織全体の成長戦略として捉えることができます。組織の目標達成のためには、短期的な成功に満足することなく、長期的なビジョンに基づいた持続可能な努力が求められます。組織の変革や成長は時間がかかるプロセスであり、その過程で生じる障害や挑戦に対して、耐え忍び、続ける力が真の成功をもたらします。人事管理の役割は、この長期的な視野を持ち続け、組織と従業員が共に成長し続けるためのサポートを提供することにあります。私も引き続き「倦まず弛まず」を念頭に置いて精進し続けます。

人類の未来を拓くがん治療への挑戦 小林久隆さん (アメリカ国立衛生研究所主任研究員)北尾吉孝さん(SBIホールディングス会長兼社長)p8

 小林氏の医学研究とその人生哲学は、今月号のテーマである、「倦まず弛まず」に深く根ざしています。彼がアメリカ国立衛生研究所(NIH)での研究生活を通じて行ったがん治療法の開発は、この言葉の精神を体現しています。特に、抗体に放射性同位元素や抗がん剤を結合させる従来のアプローチに対する根本的な疑問から、体に害を与えずにがん細胞のみを破壊し、免疫細胞を活性化させる「光免疫療法」の開発へと至った過程は、不断の努力と革新的な発想の重要性を示しています。

 北尾氏は、小林氏のこの姿勢と達成を深く尊敬しており、小林氏の研究キャリア全般にわたる「倦まず弛まず」という精神を高く評価しています。北尾氏が経営するSBIホールディングスを通じて小林氏の研究に対する支援を行う背景には、小林氏の研究への深い献身とその研究が未来のがん治療に与える大きな影響への確信があります。北尾氏は、小林氏が直面した多くの困難や挑戦、そしてそれらを乗り越えてきた過程に注目し、小林氏の挑戦がいかにして医学研究における新たな地平を開いたかを具体的に語ります。この二人の交流からは、新しい挑戦を恐れず、困難に立ち向かうことの重要性が浮かび上がります。

 小林氏の「倦まず弛まず」の姿勢は、彼の研究生活の中で明確に表れています。京大を離れ、再びNIHで研究員としての地位を確立した後も、小林氏は自らの研究に対する情熱を燃やし続けました。日中は上司の研究を支援し、夜には自らの研究に没頭するという厳しい生活を送りながらも、彼の内に燃えるがん治療法の開発への熱意は決して衰えることがありませんでした。このような生活を通じて、小林氏は光免疫療法という革新的ながん治療法の基礎を築き上げました。この治療法は、がん細胞のみを破壊し、免疫システムを活性化させることにより、従来の治療法にない新たな可能性をもたらしました。

 北尾氏によると、小林氏の研究と成果は、困難な道のりを乗り越え、常に前進し続けることの大切さを示しています。北尾氏の小林氏への深い敬意と支援は、小林氏の研究が未来の医学、特にがん治療に与える影響を信じているからです。北尾氏は、小林氏が直面した挑戦とそれを乗り越えた過程を通じて、医学研究における新たな地平を開いた小林氏の功績を称賛しています。

 この二人の関係からは、挑戦し続けること、そして新しい知見や治療法の開発に対する情熀と献身が、いかにして社会全体に貢献するかが明らかになります。小林氏の「倦まず弛まず」という姿勢は、医学研究のみならず、すべての分野で新たな発見や進歩を求める人々にとって大きなインスピレーションとなっています。

研究者はアスリートに近いと考えています。トレーニングをやめたら昔に抜かれてしまう。それと同じで今回の特集「倦まず弛まず」にも通じますが、休まず続けなければトップに立ち続けることはできません。

『致知』2024年5月号 p17より引用

 次に、小林氏と北尾氏の対話および「倦まず弛まず」という精神に関する議論を、人事管理の枠組み内でさらに深堀りしてみます。これにより、人事管理の視点から、小林氏の経験が組織や従業員の成長、イノベーションにどのように役立つかをより詳細に探求します。

タレントマネジメント
 
タレントマネジメントは、従業員の能力を最大限に引き出し、継続的な成長と発展を促進することに焦点を当てます。小林氏の「倦まず弛まず」という精神は、組織がどのようにして従業員の持続可能な成長をサポートし、彼らが直面する挑戦を乗り越えさせるかの素晴らしい例です。この精神を組織内で培うためには、従業員一人ひとりの興味、情熱、そして潜在能力を理解し、個々に合わせた成長機会を提供する必要があります。これは、定期的なキャリアコーチングセッションの実施、個人の興味に合わせたプロジェクトへのアサインメント、専門スキル研修への参加促進などを通じて達成されるかもしれません。

キャリア開発と継続的な学習
 
キャリア開発における「倦まず弛まず」の精神は、従業員が自己実現の旅において常に前進し続けることの重要性を強調します。小林氏が研究医へと転身し、その後、がん治療法の研究で顕著な成果を上げた経緯は、キャリアの転機において新たな学習と成長の機会をどのように捉えるかを示しています。人事管理では、従業員に対してキャリアパスの多様性を認識させ、彼らが新しい分野やスキルに挑戦することを奨励する文化の創造が求められます。これは、キャリアワークショップの提供、横断的なジョブローテーションプログラム、または社外研修への参加支援を通じて達成できます。

パフォーマンスマネジメントの強化
 
パフォーマンスマネジメントにおいて「倦まず弛まず」の精神を取り入れることで、従業員は目標達成に向けての持続可能なモチベーションを維持できるようになります。小林氏がNIHでの研究を通じて見せた絶え間ない努力と献身は、高いパフォーマンスを維持する上での模範となります。組織は、従業員が個人の目標に対して積極的に取り組むよう、適切な目標設定、フィードバックの提供、そして達成感を感じられる報酬システムの構築が必要です。これにより、従業員は自分の成果が認識され、価値あるものと感じることができます。

組織文化の充実
 
組織文化に「倦まず弛まず」の精神を組み込むことは、従業員が恐れずに新しいアイデアを試し、イノベーションを追求するための基盤を作ります。小林氏の経験は、探究心を奨励し、失敗から学ぶことの価値を組織文化として深く根付かせることの重要性を示しています。組織が従業員に対してリスクを取ることの安全性を保証し、失敗を成長の機会と捉える姿勢を促進することが、持続的なイノベーションの鍵となります。これは、失敗からの学習を共有するフォーラムの設置、イノベーションを奨励する報奨制度の導入、リーダーシップによる支援と模範示しを通じて実現されます。

 「倦まず弛まず」という姿勢は、タレントマネジメント、キャリア開発、パフォーマンスマネジメント、組織文化の構築といった人事管理の各領域における持続的な成長とイノベーションの推進力となります。小林氏の経歴から学ぶこの教訓は、組織が従業員の可能性を最大限に引き出し、その成功を支援するための貴重なガイドラインともなるでしょう。

いまも料理が恋人 この道に終わりなし—93歳、生涯現役を貫く 和食の神様が語る 道場六三郎さん (銀座ろくさん亭主人)p20

 今月号の表紙を飾った道場六三郎さんの記事です。

 道場氏の経験と哲学は、多くの逆境を乗り越え、成功を収めた一人の料理人の物語を語っています。彼の人生は、信頼していた経営者に大金を貸し、それが戻らないという重大な打撃から始まりました。失われた金額は当時としては莫大な500万円であり、これによって彼は経済的にも精神的にも大きな困難に直面しました。しかし、道場氏はこの困難を乗り越え、新たな飲食店「新とんぼ」を開店しました。この成功は、彼が経営者としてだけでなく、人間としても成長するための転機となりました。

 開店当初から多くの顧客が訪れた「新とんぼ」は、道場氏が顧客との強い絆を築き上げ、料理への深い情熱を持つことの重要性を再認識するきっかけとなりました。料理を通じて人々に喜びを提供することで、彼は自身の存在意義と成功への道を見出しました。その後、共同経営者との意見の相違を経験し、「銀座ろくさん」を開店。これは、彼の料理人としてのキャリアにおいて重要なマイルストーンとなりました。

 道場氏の成功の背後には、彼の独自の哲学があります。彼は、お客様一人ひとりに心を込めて接し、料理を通じて喜びを提供することの価値を深く理解しています。また、料理に対する情熱、絶え間ない創造性の追求、お客様への細やかな配慮が彼の長年にわたる成功を支えています。道場氏は、料理を単なる仕事ではなく、生きがいと考え、常に新しいことに挑戦し、料理の技術と表現を磨き続けています。

 彼の人生哲学は、人としての成長、基本への忠実、そして逆境から学ぶ力の重要性を強調しています。道場氏は、苦労と経験から学んだ教訓を生かし、どんな状況でも前向きに取り組むことの価値を認識しています。この姿勢は、彼が料理人としての道を歩み続ける上で、不可欠な要素となっています。

 道場氏の物語は、彼の強靭な精神力と、逆境を乗り越える彼の能力を示しています。彼の経験からは、どんなに困難な状況にあっても、決して諦めず、情熱を持って取り組むことの重要性が伝わってきます。道場氏の人生と哲学は、多くの人々にとって、逆境を乗り越え、自身の道を切り開くための大きなインスピレーションとなっています。彼の物語は、困難な状況に直面したときに前向きな姿勢を保ち続けることの価値を示しています。このインタビューからは、道場氏が長年にわたり築き上げてきた料理人としての哲学、仕事への姿勢、人生観が深く反映されています。彼の言葉一つ一つには、彼自身が直面してきた試練や逆境、そしてそれらを乗り越えてきた経験が織り込まれています。これらの教訓は、料理業界に限らず、どのような職業においても、また人生の様々な局面においても有用な示唆を与えてくれます。

厳しい修業時代を経て学んだこと
 道場氏は、修業時代に培った「人の二倍働く」姿勢と、先輩から技を学び取るための積極性を強調しています。これらの経験から彼は、仕事に対する熱心な取り組み方と、自己の技術や知識を向上させるための不断の努力の重要性を説いています。特に、彼の「人の二倍働く」という言葉は、成功への道を切り開くために必要な姿勢を象徴しており、単なる努力の価値を超えた、目標達成への確固たる決意を示しています。

また、修業時代いつも心に留めていたことがあります。それは、「人の二倍働く人が三年かかって覚える仕事を一年で身につける」ということです。なぜそう思ったのか、あまりよく覚えていないのですが、とにかく東京の店に入った時から、「よし!」と。早く人の上に立ちたい、下積みの期間をできる限り短くして一人前の仕事がしたい。そのために誰よりも努力しようと決意したんです。

『致知』2024年5月号 p21より引用

逆境を乗り越え、新たなスタートを切る
 道場氏の人生における大きな転機は、経営難に陥った「とんぼ」の料理長時代に起きました。詐欺に遭い、大金を失ったにもかかわらず、彼は被害者意識に囚われることなく、「新とんぼ」の開業という新たな道を切り開きました。この経験から彼は、逆境を乗り越え、新たな機会を見出すためには、過去に執着するのではなく、前向きに進むことの重要性を学びました。

人生と料理における想いやり
 道場氏が最も大切にしているのは、「料理は想いやり」であり、これは彼の人生観そのものを反映しています。料理を通じて他人に喜びを提供すること、そして日常生活においても他人への配慮を忘れないこと。これらは、彼が信じる成功への鍵です。また、彼は「一期一会」の精神を大切にし、毎日がかけがえのないものであること、そしてその瞬間瞬間に最善を尽くすべきだと語っています。

常に前進することの重要性
 道場氏の人生哲学の中心は、まさに今月号のテーマである「倦まず弛まず」の精神でしょう。彼は、いくつになっても学び、成長し続けることの大切さを強調しています。これは、料理においても、人生においても、常に前向きな姿勢で新たな挑戦に取り組むことの重要性を示しています。

まとめ
 道場氏の話からは、彼の人生と職業に対する深い情熱と、逆境を乗り越えた経験から学んだ教訓が浮き彫りになります。彼の人生観は、仕事をする上での姿勢、人としての生き方、そして日々をどのように過ごすべきかという普遍的な問いに対する示唆に満ちています。道場氏の教えは、料理業界に限らず、あらゆる職業において、そして人生の様々な局面において、大きな価値を持つことでしょう。

名僧・鈴木正三に学ぶ 勤勉努力の精神 小林 誠さん (鈴木正三顕彰会会長)p26

 江戸時代初期に活躍した禅僧・鈴木正三の生涯と教えは、日本の倫理観や労働観に深い影響を与えたとされ、現代においてもその思想は高く評価されています。1579年、三河国(現在の愛知県)に生まれた正三は、徳川家康の家臣・鈴木重次の長子として武士の世界に生を受けました。若き日の正三は、関ヶ原の戦いや大坂の陣など、戦国時代末期の激動を体験しましたが、その後、1620年に出家し、僧侶としての道を歩むことを選びます。

 正三は、自らが開いた恩真寺を拠点として、人々に仏法を説く一方で、社会的な復興にも尽力しました。特に、「世法即仏法」という思想を通じて、日々の仕事を通じた仏道修行の重要性を説き、労働や商売の価値を新たに見出しました。この教えは、後世の日本人の勤勉性や資本主義精神の形成に大きな影響を与えたと評されています。

 正三の人生において特筆すべきは、天草・島原の乱後の復興活動です。弟の重成と共に、荒廃した天草の物心両面の復興に取り組みました。農業振興や寺院の再建など、社会事業に尽力することで、正三は仏法を現実の社会課題解決に応用し、実践的な仏教のあり方を示しました。これらの活動を通じて、正三とその家族は、地元天草において深い尊敬と信仰を集め、鈴木神社に祀られるに至りました。

 正三は、生涯を通じて人々と深く関わり、その悩みや苦しみに寄り添いながら、仏教の教えを実生活に落とし込む方法を指南しました。例えば、農民が仕事の忙しさを理由に仏行を行えないと嘆く場面では、一鍬一鍬に心を込めることの重要性を説き、仕事そのものが修行であると伝えました。また、商売人に対しては、正直な商いを通じて社会に貢献することの価値を説き、利潤を得ることの正当性を認めました。

 正三の死に際しても、彼の仏教に対する深い洞察と生死を超越した境地が示されました。臨終の際、一人の僧侶から仏教で最も大切なことを問われた正三は、「正三は死ぬと也」と言い残し、この世を去りました。この言葉は、正三が生涯にわたって説いてきた仏教の真髄と、彼自身の生死観を象徴しています。

臨終に際し、一人の僧侶が「仏教で一番大事なことは何ですか」と問うたところ、 正三はその僧をはったと睨み、自分がこれまで三十年言ったことを受け取らずして、いまになってそんなことを言うの「正三は死ぬと也」と言い放ち遷化したといいます。死ぬ時がくれば何らの未練なくただ死ぬだけである――。 正三の生死を超脱し高い境涯が伝わってきます。

『致知』2024年5月号 p29より引用

 現代社会においても、正三の教えは大きな意味を持ちます。家庭や職場、教育現場など、様々な場面で直面する問題に対して、正三が示した「世法即仏法」の精神や、仕事を通じた仏道修行の考え方は、解決の糸口を提供してくれます。また、彼の社会事業への取り組みは、現代の社会貢献やボランティア活動に通じるものがあり、仏教の教えを日常生活に生かすヒントを与えてくれます。

 正三の生涯と教えは、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けています。彼の思想は、現代人が直面する様々な問題に対しても、新たな視点や解決策を提示してくれる貴重な資源です。正三が残した数々の著作や言行は、今日でも多くの人々に読まれ、学ばれています。正三の教えを深く理解し、実生活に活かすことで、より豊かで意味のある人生を送ることができるでしょう。正三の精神を受け継ぎ、現代に生きる私たちが社会をより良くするために、その教えを広め、実践していくことが重要です。

 正三の教えを人事の立場からみると、正三の「世法即仏法」「仁王禅」という精神は、組織内での人材育成やリーダーシップのあり方について考えさせられるポイントが多く含まれています。

世法即仏法:日々の仕事を通じた成長と貢献
 
正三は「世法即仏法」の精神を説き、日々の仕事そのものが仏道修行であり、人間としての成長につながるとしています。これは、単に仕事を行うことが目的ではなく、その過程で真心を込め、自己成長と社会への貢献を実現することが大切であることを示しています。人事管理の観点からは、従業員が単に業務を遂行するのではなく、その仕事を通じて自己実現を図れるような環境作りや育成が重要であることを教えています。

仁王禅:リーダーシップと自己犠牲
 
「仁王禅」の精神は、リーダーシップにおける自己犠牲や強い意志の重要性を強調しています。正三自身が生死を超えた境界に達していたように、リーダーは自らの欲望を超えて組織や社会のために尽くす姿勢が求められます。これは、現代の組織運営においても、自己中心的ではなく、チームや組織全体の利益を最優先に考え、時には自己の利益を犠牲にすることも厭わないリーダーシップが重要であるということを教えてくれます。

組織と個人の成長のために
 
正三の教えは、個人が自らの仕事に真心を込め、社会への貢献を果たすことの重要性を説いています。人事管理の立場からは、従業員一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、成長していくためのサポートが必要であることを示唆しています。また、組織全体としても、社会的責任を果たし、持続可能な発展を目指すことが求められます。これは、人材育成プログラムの開発やキャリア開発支援、組織文化の醸成において、個人の成長と組織の目標が一致するような取り組みを進めることの重要性を強調しています。

まとめ
 
正三の生涯と教えは、仕事を通じた個人の成長、社会への貢献、そして強固なリーダーシップを育むための重要な指針を提供してくれます。人事の立場から考えると、これらの教えを現代の組織運営や人材育成の観点に落とし込むことで、より豊かで意義ある職場環境の構築と、組織全体としての成長と社会貢献を実現することができるでしょう。

 以下の動画で、鈴木正三について、本文に出てくる話の一部の内容が確認できます。


患者様一人ひとりの回復を信じて:西島暁子さん(ソレイユ訪問看護ステーション所長)p30

 西島暁子氏は、自身の訪問看護ステーションを立ち上げ、精神科訪問看護の分野で長年にわたり活動してきました。その活動の根底にあるのは、患者様一人ひとりの生活環境、家族関係、趣味、ライフスタイルに至るまで丁寧に観察し、真摯に寄り添う姿勢です。このようなアプローチを通じて、患者様との間に深い信頼関係を築き上げ、質の高い訪問看護サービスの提供を実現しているのです。具体的には、統合失調症や重篤な精神疾患を持つ患者様への対応から、日々の変化に対する小さな喜びの発見まで、西島氏の看護への取り組みは多岐にわたります。

 西島氏の経歴は多彩で、看護師としての道を歩み始めるまでには、いくつかの挑戦と変化がありました。幼い頃から獣医を目指していたが、親の期待により医学部への道を選んだものの、その道には適さず、最終的に看護学校へと進むことになったのです。看護学校での学びを通じて、自分に合った職業を見つけ、精神科看護の分野に情熱を注ぐようになります。その後、個人的な困難を乗り越え、訪問看護ステーションの立ち上げに至るまでの道のりは、多くの学びと成長を経験した結果です。

 ステーションを立ち上げてからは、患者様への訪問看護サービスの提供だけでなく、スタッフ教育にも力を入れています。特に、育児放棄や虐待といった家庭内の問題を抱える若年層の患者様が増えている現状に対応するために、看護師一人ひとりの対応力向上が急務であると捉えています。患者様が抱える問題を理解し、それに適切に対応するためのスキルや知識の向上に注力しています。

 西島氏自身の経験から学んだ教訓は、看護師としての活動に大きな影響を与えています。特に、自身が精神科の患者として短期間ながら入院した経験は、患者様の不安や苦痛に対する深い共感と理解をもたらしました。この経験を通じて、看護師としての言葉や行動が患者様に与える影響の重大さを実感し、より一層の真摯な対応を心がけています。

自分の至らなさから大きな挫折も味わってきましたが、そうしたマイナスの体験も、決して無駄ではなかったと思っています。何より大きかったのは、自分が保護室に運び込まれる体験をしたことから、患者様の不安や辛さに心の底から共感できること。そして、私たち看護師のかける一言一言が、患者様にとってどれほど重みがあるか実感していることです。

『致知』2024年5月号 p33より引用

 独立してからの活動では、訪問看護の需要と重要性が高まる中、患者様一人ひとりに合わせた個別のサポートを提供することで、精神疾患を持つ患者様が地域で自立して生活できるよう支援しています。このプロセスで重視されるのは、患者様およびその家族との信頼関係の構築であり、西島氏はこれを最も大切な要素と捉えている。看護師としての専門知識と技術を活かしながらも、人間としての温かみと理解をもって接することで、患者様からの信頼を得ているのです。

 西島氏の看護への取り組みは、患者様一人ひとりのニーズに応じた細やかなケアと深い共感に基づくものです。精神科訪問看護という分野での彼女の活動は、患者様が抱える様々な課題に対して、包括的かつ個別化されたサポートを提供することの重要性を示しています。また、看護師としての専門性を高めること、スタッフの教育に力を入れること、そして何よりも患者様とその家族との信頼関係を大切にすることが、質の高い訪問看護サービスを提供する上で欠かせない要素であることも示しています。

 精神科訪問看護の経験を通じて綴られたこの話は、深い人間理解、共感、そして献身的なケアの重要性を表しています。訪問看護師が患者さん一人ひとりの家庭環境、ライフスタイル、そして精神的なニーズに細やかに対応する過程は、人事領域においても非常に重要な教訓を残すものです。人事担当者は従業員の多様なニーズに対応し、個々のキャリアと福利厚生のサポートを行う必要がありますが、この話からはその具体的なアプローチ方法を学ぶことができます。

個々への寄り添い
 
精神科訪問看護のように、人事担当者も従業員一人ひとりのキャリア背景、能力、個人的状況を深く理解し、それに応じたキャリアプランの提案や福利厚生の提供を心がけるべきです。従業員の価値観や目標を理解することで、より効果的なサポートが可能になります。

信頼関係の構築
 
患者さんとの信頼関係が治療の成功の鍵を握るように、人事業務においても従業員との信頼関係の構築が極めて重要です。透明性の高いコミュニケーション、公正な評価システム、そしてオープンなフィードバック文化の醸成は、信頼関係を深める上で不可欠です。

継続的なサポート
 
訪問看護師が患者さんの自立まで長期にわたってサポートするように、人事担当者も従業員の成長と発展を継続的に支援する責任があります。キャリア開発プログラム、継続教育、メンタリングなど、従業員が自身のポテンシャルを最大限に発揮できるような環境を提供することが求められます。

危機管理
 
患者さんの危機的状況に対処する訪問看護師の役割は、人事が従業員が直面する職場内外の問題や危機に対応することと重なります。従業員のメンタルヘルス問題や職場の人間関係の問題に迅速かつ適切に対応する能力は、人事担当者にとって不可欠です。

メンタルヘルスの重視
 
この物語は、メンタルヘルス支援の重要性を再認識させます。人事部門は、職場での精神的な健康を支えるためのプログラムや施策を積極的に導入し、従業員が抱える問題に対して適切なサポートを提供することが重要です。

まとめ
 
精神科訪問看護の経験は、人事領域での人材管理や教育、福利厚生のアプローチに新たな視角をもたらします。人の心に寄り添い、個々のニーズに応えることの重要性は、職種を問わず普遍的な価値を持ちます。この物語から学ぶことで、人事担当者は従業員のエンゲージメントと満足度を高めるための具体的な戦略を見出すことができるでしょう。

すべては、世界に誇る「國酒」を飲んでもらうためにー久慈浩介さん(南部美人五代目蔵元)p34


 岩手県二戸市に拠点を置く歴史ある酒蔵「南部美人」の現代における挑戦と成果、およびその背後にある五代目蔵元久慈浩介氏の哲学について述べられています。南部美人は、地元産の米「ぎんおとめ」と名水を使用し、独自の製法で特別純米酒を醸造しています。この酒は、2017年にインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本酒部門で最高賞を獲得しました。この栄誉は、久慈氏が追求する「テロワールを語れる酒」の理念、すなわち地域固有の特性を反映した酒造りの成功を世界に示したものです。

 久慈氏は、品質を最優先に考える酒造りの哲学のもと、地域の素材にこだわり続けています。その過程で、地元岩手の米を使うことの重要性を再認識し、地元で開発された酒米「ぎんおとめ」を用いた酒造りに取り組みました。その結果、高品質な日本酒の製造に成功し、南部美人は国内外での評価を高めていきました。

 久慈氏はまた、日本酒の魅力を世界に広めるための努力も惜しみません。日本酒が国際的に認知されるようになる過程で、久慈氏は数々の挑戦に直面しました。その一つが、国外での日本酒の認知度の低さや誤解を解くことでした。特にアメリカにおいて、日本酒がどのような飲み物か、その文化的背景や醸造方法についての理解を深めるため、多くのプレゼンテーションやセミナーを行いました。

 これらの活動は、南部美人が国際市場での地位を確立する上で大きな役割を果たしました。久慈氏は、日本酒を世界中の人々に紹介することで、日本の文化と伝統を広める使命を持っています。彼の努力は、単に酒を売ること以上の意義を持ち、国際的な文化交流の一環としての価値があります。

 さらに、久慈氏は地域社会への貢献と後世への教育にも力を入れています。東日本大震災後、彼は地元の復興支援に積極的に関わり、日本酒を通じて地域経済の活性化を図りました。また、若い世代に対する教育にも注力し、次世代の酒造りへの道を拓くために知識と経験を共有しています。

 久慈氏の物語は、伝統を守りながらも時代に合わせて進化し続ける日本酒業界の姿を映し出しています。南部美人が国内外で受ける評価は、品質への妥協なき追求と、地域社会との強い絆、そして世界に向けた開かれた姿勢の結晶です。久慈氏の情熱とビジョンは、日本酒がただの飲料ではなく、文化と歴史を伝える手段であることを我々に思い出させます。

 久慈氏の経験から得られる教訓は、人事管理の観点から見ても非常に重要です。特に、以下の5つのポイントが挙げられます。

  1. 組織文化とリーダーシップ
    品質一筋の家訓と久慈氏のリーダーシップは、南部美人を成功へと導く基盤でした。強固な組織文化の構築とその維持、発展は、組織にとって極めて重要であることがうかがえます。

  2. 変革への開放性
    既存の枠を超えた思考と革新への挑戦は、組織に新たな価値をもたらします。地元酒米の使用や国際認証の取得など、伝統と革新のバランスが、成功への鍵となります。

  3. グローバルな視点
    地元から世界へと視野を広げることで、新たな市場を開拓しました。グローバルな視点を持ち、異文化への理解と適応が必要です。

  4. 社会的責任と地域貢献
    震災後の行動や、次世代への教育への投資は、企業の社会的責任と地域への貢献を示しています。ビジネスを通じて社会に価値を提供することが強調されます。

  5. 継続的な学びと成長
    海外での日本酒普及活動など、継続的な学びと成長がいかに重要かが示されています。個人と組織の成長は密接に関連しており、教育と自己啓発の機会を提供することが重要です。

 久慈氏の取り組みは、個人の情熱とビジョンが組織や地域社会、さらに国際社会にどのように影響を及ぼすことができるかを示しています。人事の立場から見ると、これらの教訓は組織の人材育成や組織文化の形成、社会貢献への取り組みに生かすことができるでしょう。南部美人の物語は、ビジョンを持ち、地域と共に成長し、世界に向けて挑戦する重要性を我々に教えてくれます。

<時間>と<ことば>の資源を有効活用するために 社会教育家 田中真澄さん p108

 「時間」と「ことば」の有効活用は、個人の生産性向上やキャリア発展において重要な要素であり、組織全体のパフォーマンスとエンゲージメントを高めるためにも欠かせません。人事領域でも大いに課題となるところであり、組織や従業員に対する価値提供を考える上でも重要になります。

時間の有効活用の拡張
ー組織の生産性向上戦略
 
組織が生産性を向上させるためには、個々の従業員の「時間の有効活用」を促進することが不可欠です。これには、従業員が自分の時間を管理し、業務を効率化するためのツールや研修の提供が含まれます。具体的には、タスク管理ツールの導入、業務自動化ソフトウェアの活用、および時間管理スキルの研修が挙げられます。

 また、仕事と私生活のバランスを重視する文化の醸成も、時間の有効活用を促進します。ワークフロムホームのオプションやフレキシブルな勤務時間の設定は、従業員が自分にとって最も生産的な時間帯に仕事をすることを可能にし、結果として全体の生産性を向上させることができます。

ー個人の成長とキャリア開発
 
時間の有効活用は、個人のキャリア開発にも密接に関連しています。従業員が自分の業務時間を効率的に管理し、自己学習やスキルアップの時間を確保できれば、その成長速度は加速します。人事部門は、従業員がキャリア目標に合わせて時間を効果的に使うための支援を提供すべきです。これには、メンタリングプログラム、オンライン研修のアクセス提供、およびキャリアパス計画のサポートがあるでしょう。

ことばの有効活用の拡張
ー組織内コミュニケーションの改善
 
「ことば」の有効活用は、組織内コミュニケーションの質と効率を大幅に改善することができます。明確で効果的なコミュニケーションは、誤解を減らし、チームワークを促進し、プロジェクトの遂行をスムーズにします。人事部門は、従業員が言語および非言語のコミュニケーションスキルを向上させるためのトレーニングを提供し、多様なコミュニケーションスタイルや文化的背景を持つ従業員間の相互理解を促進すべきです。

 また、非言語コミュニケーションの重要性にも焦点を当てるべきです。非言語コミュニケーションは、信頼の構築や感情の伝達において、言葉以上の影響力を持つことがあります。従業員が非言語のシグナルを理解し、適切に使用する方法を学ぶことは、組織のコミュニケーション能力全体を高めることにつながります。

現在の国語教育ではあまり重視していないこともあり、私たちは関心を寄せてこなかったきらいがあります。非言語とは言語以外の表情・動作・姿勢・絵文字・イラストなどです。近年は海外との交流が盛んになり、普通の人でも外国人との対話の機会が増えたことで、この非言語の重要性が高まってきています。

『致知』2024年5月号 p108より引用

モチベーションとエンゲージメントの向上
 
ことばの有効活用は、従業員のモチベーションとエンゲージメントの向上にも役立ちます。正確でポジティブなフィードバック、認知、および報酬の言葉は、従業員が価値を感じ、彼らの努力が認識されていると感じさせることができます。これは、従業員の満足度を高め、長期的なロイヤルティと効率性の向上につながります。人事部門は、効果的なフィードバックメカニズムを開発し、従業員と管理職が建設的なコミュニケーションを行えるようにすることが重要です。

総合的な戦略と実装
 
時間とことばの有効活用を組織全体で促進するためには、包括的な戦略と継続的な努力が必要です。これには、組織文化の改革、リーダーシップの示し方、継続的な学習と成長の機会の提供が含まれます。組織は、これらの価値を重視し、全従業員がこれらのスキルを磨き、日々の業務に活用できるような環境を整備すべきでしょう。

 時間とことばの有効活用は、単に生産性を向上させ、業務効率を高めるだけでなく、従業員の満足度とエンゲージメントを高めるためにも不可欠です。人事としても、これらのリソースが最大限に活用されるように、戦略的かつ実践的なアプローチを取ることが求められます。組織と従業員双方にとっての成功への鍵は、時間とことばをいかに賢く、効果的に活用するかにあるのです。



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