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人事・経営支援関連

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私の経営・人事支援関連の記事です。
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#従業員

「人事課題を解決したい」企業の方に対し、私がお尋ねする観点

 私は、地方企業様の人事課題の解決支援の活動をしています。その際、経営者の方、担当の方とも多くのコミュニケーションをさせていただいています。その際、話題として、人事関係(制度等)の話はもちろんですが、基本的な経営の状況の話もさせていただいています。  最近でこそ、「人事は経営の根幹の一つ」という経営者の方も多くなってきました。総論としては理解されているものの、なかなか深く突っ込んで議論をするのは苦労します。とはいえ、最初から「サーベイシート」のような、こと細かい資料を使って

未来志向の人事戦略-進化する役割と組織成功への道

 人事の世界に足を踏み入れて四半世紀。私の1998年の社会人デビュー当時、人事といえば管理業務やサポート業務が中心でした。例えば、新入社員の入社手続き、給与計算、社会保険の手続き、年末調整など、従業員の生活を支えるための業務がメインでした。いわば、組織の「縁の下の力持ち」的な存在だったと言えるでしょう。  しかし、現在では戦略的パートナーとしての役割が求められ、組織の目標達成やビジネス成果への貢献が不可欠となっています。この25年間で、人事の役割は驚くほど複雑化し、高度化した

内省を促し、エンゲージメントを向上ー人事における質問の芸術

 質問の技術は、人事の分野において中核的な役割を果たします。私のこれまでの人事経験を通じて、私は質問が単に情報を得る手段以上のものであることを理解してきました。質問は、相手の内省を促し、思考を深め、組織全体のエンゲージメントと成長に貢献します。以下では、質問の力を最大限に発揮するための具体的な方法と、それが人事業務においてどのように機能するかを詳細に説明します。 1. 質問による内省の促進  人事業務では、個々の従業員が自己の能力、価値観、キャリアの方向性を深く理解するこ

抵抗から受容へー職場での変化に対する心理的ダイナミクス

 変化への抵抗感は、人間の本能的な反応であり、特に長年慣れ親しんだ職場や社会システムに対しては、この感情は強く現れます。私の長年の人事経験からも、この変化への抵抗は明確に観察され、組織内での変革や新しい方針の導入に際しては、この点を十分に考慮する必要があります。変化への抵抗感には多くの理由があり、それぞれの理由は、個人の心理や組織の文化、社会の構造に深く根ざしています。 変化への抵抗感はなぜ生じるのか、その影響は?安定への欲求  人は本能的に安定を求めます。職場においても

効率的な人事異動の実現:6つのステップで組織の力を引き出すー日経ビジネス記事より

 日経ビジネス2024/5/24の記事に『人事異動のコツ 知っておきたい6つの段階』が掲載されていました。人事異動については、多くの企業で多く行われている一方、悩みも多いのではないかとも思います。人事異動は、従業員と組織の双方に良い面もありますが、欠点もあります。経営学者ジェフ・S・ジョンソン氏が、人事異動の6段階を指摘、その有効性を高める選抜方法と方針を提案しています。その上で、人事の立場としてさらに考察していきます。 人事異動の6段階動機づけの段階  従業員が異動の利

執念と諦めの狭間でービジネスと人生における持続可能な成功の追求

 執念と諦めのバランスは、ビジネスと人生の両面で極めて重要な概念です。このバランスが成功への道を切り開くと同時に、個人と組織の両方において、長期的な持続可能性を保証する要素です。これらの概念がビジネスの様々な側面にどのように関連しているかを詳細に探求してみます。 執念ー目標への不屈の精神  執念は、困難に直面しても目標に向かって努力を続ける力です。この力は、特に起業家精神において顕著です。新しい事業を立ち上げる際、無数の挑戦と失敗に直面しますが、成功した起業家はこれらの挑

中小企業の人事制度において、社長が最終決定権を持つことの意義と課題

 中小企業において、社長が人事制度の最終決定権を持つことは、企業の成長と安定に対して大きな影響を与える重要な要素です。この決定は企業の規模、業種、社風、そして経営理念に応じて多角的な視点から検討する必要があります。以下にその具体的な意義と課題について詳述します。 1. 社長が決めることの重要性:迅速性と責任  中小企業は大企業に比べて意思決定のスピードが求められる場面が多くあります。市場の変化や競合の動向に迅速に対応することが求められるため、社長が最終決定権を持つことはそ

採用と離職防止のシナジーー持続可能な人材戦略の構築

 「採用と離職防止を一緒にして考える」というのは単純そうですが、実はとても重要な戦略です。求める人材を正確に理解し、彼らが魅力を感じる職場環境を作ることが大切です。これは、従業員が会社の文化や働き方に惹かれるようにするためです。長く働き続ける環境は、採用成功にもつながり、組織の成長と安定に寄与します。結果、離職防止にも寄与するでしょう。 採用基準と離職防止戦略  採用においては、候補者の経験やスキルが重要視されますが、離職を防ぐためには、安定した職場環境や昇進の機会の提供

従業員エンゲージメントの向上ーSNSで繋がるロールモデルの力

 昨今、「ロールモデル」(他の従業員の手本となる人物)を見つけることが難しいと言われています。一方WebやSNSを通じてロールモデルを見つけることは、現代のキャリア形成において革新的な変化をもたらしています。このアプローチは、従業員が自らのキャリアパスを形成し、個人の成長と発展を促進するための豊富な情報源とインスピレーションを提供します。人事の立場から見ると、このプロセスは従業員のエンゲージメントと満足度を高め、組織のパフォーマンス向上にもつながるため、非常に価値が高いと言え

「仕事」ではなく「役割」を与えることの重要性

人を成長させるためには、「仕事」ではなく「役割」を与えるべきであるという考え方は、人財育成においても重要な概念です。この視点は、従業員が単に与えられたタスクをこなすのではなく、自らの役割を通じて組織内で意味ある貢献をすることです。ここでは、その考え方を更に深堀りし、人事の立場から見た具体的な実践方法とその意義を探求します。 1. 役割の重要性 自律性の促進  役割を与えることは、従業員に対してより大きな自律性を促します。自律性は、モチベーションの三大要素の一つであり、従

企業で働く意義ー自己実現への道

 企業は、その社会的存在意義を通じて、日々の創意工夫と自己肯定感の向上に努めています。単に業務を遂行するだけでなく、働く人々にとって人生を豊かにする貴重な経験を提供しています。特に、企業組織の中で得られる経験は、プロフェッショナルなスキルの向上だけではなく、人間としての成長にも大きく寄与します。 多様な価値観との出会い  企業組織は、さまざまな文化、性別、年齢、職歴を持つ人々が集まる場所です。このような多様性は、新しいアイデアや解決策を生み出すための素晴らしい土壌を提供し

職場文化の活性化ー報酬とパフォーマンス評価の課題への対応

 「どうせ給料上がらないし、評価もされないから適当に」という従業員の発言が、組織における報酬マネジメントとパフォーマンスマネジメントシステムの不備を示しています。これは従業員のモチベーション低下、職務満足度の低下、そして組織全体の生産性への悪影響に繋がりかねない深刻な問題です。以下では、これに対する包括的な改善策を考察します。 1. パフォーマンスマネジメントの見直し  パフォーマンスマネジメントシステムは、従業員の業績評価とモチベーション向上のための核となる要素です。従

成長に不可欠な要素ー負荷と挑戦の価値

 「負荷のない環境で成長は難しい」ということについて考えてみたいと思います。人事として様々な業務を経験してきた中で、この真理は個人のキャリア開発だけでなく、組織の成長や変革おいても非常に関連が深いと思います。 個人のキャリア開発において  従業員が常に快適な範囲内で仕事をしていると、成長は鈍化します。新しいプロジェクト、異なる部署での勤務、あるいは新しい技術の習得など、従業員にとって未知の領域への挑戦を促すことは、その人のスキルセットを広げ、キャリアの可能性を拡大します。

川上真史氏ーパブロフの理論からビジネス戦略へー条件付けとマインドセットの理解

川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #7 条件付けとマインドセット」というテーマは、マインドセットが条件付けによって変わっていくという興味深い視点を示しています。人事の立場においても非常に重要な示唆を得られるものでした。考察してみたいと思います。 条件付けとマインドセットの理解 条件付けとは、ある特定の刺激(条件刺激)に対して一定の反応(無条件反応)が習慣化される心理学のプロセスです。この概念は、イワン・パブロフの古典的条件付けの実験から広