マガジンのカバー画像

人事・経営支援関連

189
私の経営・人事支援関連の記事です。
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

川上真史氏ーパブロフの理論からビジネス戦略へー条件付けとマインドセットの理解

川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #7 条件付けとマインドセット」というテーマは、マインドセットが条件付けによって変わっていくという興味深い視点を示しています。人事の立場においても非常に重要な示唆を得られるものでした。考察してみたいと思います。 条件付けとマインドセットの理解 条件付けとは、ある特定の刺激(条件刺激)に対して一定の反応(無条件反応)が習慣化される心理学のプロセスです。この概念は、イワン・パブロフの古典的条件付けの実験から広

賃上げ戦略の全方位的アプローチー企業成長と従業員満足度を高めるには

 「賃上げ」の議論は、単に経済的な要素だけでなく、社会的、心理的、そして組織文化に関わる多面的な側面を含みます。人事の立場から、この複雑な課題にアプローチするには、さまざまな角度からの検討が必要です。以下では、賃上げに関する議論をさらに深掘りし、組織にとって最適な賃上げ戦略を考察します。 企業財務状況の深掘り  企業の財務状況を考慮する際、単年度の利益だけでなく、長期的な財務戦略も重要です。投資、研究開発、社員教育などへの再投資の余地を確保しつつ、賃上げを行うバランスが求

企業文化とパフォーマンスー良い姿勢を持つ従業員が生む影響

「良い仕事は、良い姿勢の人に集まる」といいますが、やはり組織の成功への道を照らす重要な原則です。人事の立場で、この言葉がいかにして組織の文化、パフォーマンス、そして最終的な成功に影響を与えるかについて考えてみたいと思います。 良い姿勢の本質とその重要性  まず、「良い姿勢」とは、仕事に対する熱意、プロフェッショナリズム、倫理観、そして困難に直面しても諦めない粘り強さを含む、多面的な特性を意味します。これらの特性を持つ従業員は、単に業務をこなすだけではなく、革新的なアイデア

学び方革命ー人的資本経営と自律的キャリア形成ー高橋俊介氏

 BBTの番組・高橋俊介氏による「組織人事ライブ#701 人的資本経営と学び方改革」を視聴しました。その内容から考えること、人事企画にどのように活かすかを考えてみたいと思います。 人的資本経営における学び  人的資本経営において、人は単なる資産ではなく、むしろ資本として捉えられるべきです。さらに、人は知的資本の投資家としての役割も担っています。従業員は自らの知識や能力に投資することで、企業の成長に貢献し、同時に自身のキャリアも向上させることができます。  しかし、日本の

目標達成の戦略ー組織成長と個人発展のための具体的アプローチ

 目標設定は、組織の成長と個人のキャリア発展の両方において、非常に重要なプロセスです。ビジネスにおける目標設定の質を高めるためには、戦略的なアプローチと具体的な行動計画が必要不可欠です。質の高い目標設定を実現するには、いくつかの重要なポイントがあり、それらを適切に実践することが求められます。 透明性と共有の促進  目標を設定する際は、透明性を保ち、すべての関係者が目標について明確に理解していることが重要です。透明性を確保することで、チームメンバー間での信頼関係を築くことが

効果的なリスキリング戦略ー「3つの罠」を避けるためにはどうするか

 日経ビジネス2024/4/19の記事に『「リスキリング」の課題 効果が出ない3つの罠』が掲載されていました。  この記事では、企業が従業員のスキルアップを目指して実施している「リスキリング」についての取り組みとその際に直面する課題に焦点を当てています。リスキリングとは、急速に変化する業界や技術環境に対応するために、従業員に新しいスキルや知識を身につけさせることです。日本政府や経済産業省も、個人のスキル再構築を支援する施策を進めており、この分野に多額の投資が行われています。

長所と短所のバランスー効果的な人事管理の秘訣

 誰にでも「長所」と「短所」はあるものです。周りの人の長所に注目することの重要性と、そして、短所も含めた適切なバランスについて考え、具体的な人事戦略とその実践方法について考察してみます。 長所に注目することの重要性  長所に焦点を当てることで、ポジティブな職場環境を構築し、従業員の自己効力感を高めることに寄与します。従業員が自分の能力や才能が認識され、評価されると、仕事への情熱、創造性、そして責任感が高まります。このような環境では、従業員は自発的に自己超越の機会を求め、自

【15のチェックポイント】1on1面談ー継続的なコミュニケーションと個人の成長を支援する

 1on1(1対1)面談は、組織内でのコミュニケーションと個人の成長を促進するために非常に重要です。1on1では、上司と部下が直接顔を合わせて対話し、仕事の進捗、目標の設定、フィードバックの交換、キャリア開発や個人的な懸念事項について話し合います。これにより、個々の従業員が直面している課題を深く理解し、適切なサポートを提供することが可能になります。また、従業員のモチベーション向上やエンゲージメントの強化にも大きく寄与します。効果的な1on1面談を実施するためには、いくつかの重

職場における自我の役割と主体性の育成ー川上真史さんの指摘から考える

 川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #8自我と主体性」というテーマは、心理学の中でも特に人間の意思決定プロセスやパーソナリティ形成に焦点を当てており、特にフロイトの精神分析理論を基に自我の機能とその社会生活や職場での影響について述べられており、大変興味深いものでした。  自我は、内部の無意識的な衝動(イド)と外部の社会的規範や道徳(超自我)との間で調整を行う役割を持っています。このバランスをうまく管理することで、個人は社会内で適切に機能す

人事評価の多面的な目的ー能力開発から組織戦略まで

 人事評価の目的を正確に理解を深めることは、組織の成功にとって非常に重要です。一般に、人事評価は単に「処遇を決める」ためのものと考えられがちですが、その実態はより複雑で多面的です。ここでは、人事評価が果たすべき多様な目的について掘り下げ、評価結果の有効活用についても考察します。 1. 能力開発の促進  人事評価は、社員一人ひとりの能力開発を促進する上で中心的な役割を果たします。評価プロセスを通じて、社員の現在のスキルセット、成果、そして潜在能力を明確に把握することが可能に

組織内ポテンヒットー不明瞭な責任のリスクとその対策

 ポテンヒットは、野球で使われる用語で、内野と外野の間など、守備陣が思わぬところにボールが落ちてヒットになることです。たまに見かけることもあるでしょう。  組織内でも、責任の所在が不明確で放置されがちな仕事、すなわちポテンヒット状態が生じることがあるでしょう。この問題に対処することは、組織運営において避けて通れない課題です。この問題は、表面的には些細なものに見えても、放置することで組織に大きな損害をもたらす可能性があります。私も長年の経験で、ポテンヒットのような問題を的確に

AI時代の企業変革ー従業員リスキリングの戦略と実践ー後藤宗明氏

 Aoba-BBTの番組後藤宗明氏によるの「AI時代のリスキリング2_リスキリングのステップ(法人編)」というテーマは、AI時代における企業と従業員のリスキリング(新しいスキルの習得)の重要性と、その具体的な方法について非常に深く言及しています。  後藤氏は、リスキリングに関する以下の書籍を出版していますが、こちらも非常に参考になります。  まず、リスキリングは企業が主導して行うべきであり、就業時間内に実施することが極めて重要だと指摘されました。個人の自助努力に任せるので

内なる世界の価値ー創造性とイノベーションを促進する人事のアプローチ

 外界の出来事に振り回されず、自己の内なる世界を大切にすることは、個人だけでなく組織においても重要な概念です。現代社会では、絶え間ない変化と不確実性に直面しており、外部の出来事に左右されがちですが、内面の安定と調和を保つことで、より回復力がある個人と組織を築くことができます。自己の内なる声に耳を傾け、自分らしさを発揮することは、ストレス管理やメンタルヘルスの向上につながるだけでなく、創造性やイノベーションの源泉にもなります。  人事視点においても、従業員一人ひとりの内なる声

失敗から学ぶー職場でのミスと成長のチャンス

以下のような、「ミス」の場面を想定してみましょう。 後輩:「大変なミスをしてしまいました。私、もうダメかもしれません。」 先輩:「落ち着いて。まずは何が起こったのか、詳しく教えてくれる?」 後輩:「〇〇の処理で、誤ったデータをクライアントに送ってしまいました。」 先輩:「それは大変だ。データの内容は?影響はどれくらい?」 後輩:「売上情報を含む重要なデータです。クライアントからクレームが来ています。」 先輩:「クライアントには状況を説明したの?」 後輩:「はい、