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2024年4月の記事一覧

【書籍】従業員を力づけるー人材育成における経験学習の役割

 松尾睦氏の『職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門』(ダイヤモンド社、2011年)を取り上げたいと思います。私たちビジネスパーソンが日々の仕事経験からいかに学び成長していくかについて、理論と実践の両面から深く掘り下げた貴重な一冊です。  著者の松尾睦氏は、長年にわたり企業の人材育成の研究を重ねてきた専門家であり、本書では、数多くの企業へのインタビューや調査を通して得られた知見が凝縮されています。松尾氏は、人が経験から学ぶためには「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョ

川上真史氏ーパブロフの理論からビジネス戦略へー条件付けとマインドセットの理解

川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #7 条件付けとマインドセット」というテーマは、マインドセットが条件付けによって変わっていくという興味深い視点を示しています。人事の立場においても非常に重要な示唆を得られるものでした。考察してみたいと思います。 条件付けとマインドセットの理解 条件付けとは、ある特定の刺激(条件刺激)に対して一定の反応(無条件反応)が習慣化される心理学のプロセスです。この概念は、イワン・パブロフの古典的条件付けの実験から広

人間とAIの協力ー未来の労働環境を形作る「最強のコンビ」ー茂木健一郎氏

『プレジデント2024年5/3号)』は、「AI時代の生き方大全」でした。その中でも、「成功への物語 これからは「真面目に努力する人」ほど損をする」(p93)は興味深い内容でした。茂木氏は、現代社会が抱える技術的な進展、特に人工知能(AI)の進化に対して独自の見解を持っています。彼は、単に勤勉に仕事をするだけでは、AIの時代においては不利になると指摘しています。AIが得意とする最適化やルーチン作業はAIに任せるべきで、人間はその分解放されたリソースを使って創造的で革新的な挑戦を

学び方革命ー人的資本経営と自律的キャリア形成ー高橋俊介氏

 BBTの番組・高橋俊介氏による「組織人事ライブ#701 人的資本経営と学び方改革」を視聴しました。その内容から考えること、人事企画にどのように活かすかを考えてみたいと思います。 人的資本経営における学び  人的資本経営において、人は単なる資産ではなく、むしろ資本として捉えられるべきです。さらに、人は知的資本の投資家としての役割も担っています。従業員は自らの知識や能力に投資することで、企業の成長に貢献し、同時に自身のキャリアも向上させることができます。  しかし、日本の

【書籍】自律と主体性ー陳建一氏の料理哲学から学ぶ

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp149「4月28日:マニュアルの先にあるものを読む(陳建一 四川飯店オーナーシェフ)」を取り上げたいと思います。  陳シェフの管理スタイルは、指示を待つのではなく、自発的に行動を起こせるスタッフが成長するという信念に基づいています。彼は料理を提供することを最終目的とし、それに向けてスタッフが自主的に動ける能力を非常に重視しています。自分から何をすべきかを理解し、迅速に対応できるスタッフは、

マネジメントの極意ー助野会長と岡田監督の異なるアプローチー日経ビジネス記事より考察

 日経ビジネス2024/04/22-23の記事に『富士フイルムHD助野会長と語ったマネジメントの極意』(前編、後編)が掲載されていました。この特別対談では、阪神タイガースの岡田彰布監督と富士フイルムホールディングスの助野健児会長が、リーダーシップとマネジメントの哲学について深く掘り下げています。岡田監督は、自らのリーダーシップスタイルとして「選手と距離を置く」という方法を取り入れ、チームのダイナミクスと選手の自立性を促進しています。これに対して、助野会長は現場に足を運び、直接

【書籍】AIを活用するーHRとミドルマネージャーのための戦略的洞察ー小澤健祐氏の見解から

 The21 2024年5月号「仕事と人生に効く100の言葉」の中で、小澤健祐氏の「AI を部下として使う時代にマネジャーに求められるもの」(p82)は、自自身のミドルマネージャーとして、またHRの立場としても改めて考えさせられるところがあり、大変参考になりました。重要な点を取り上げたいと思います。  小澤氏は、AIが職場にもたらす変化について言及しており、AI時代におけるマネジャーの役割の変化を強調しています。彼によると、マネジャーに求められるスキルセットには大きな変化が

石倉秀明氏『THE FORMAT』ー「読む・書く」の力ーわかりやすく伝えるための新フォーマット

 石倉秀明氏の『THE FORMAT』(サンマーク出版、2022年)を取り上げたいと思います。本書は、リモートワークが主流になりつつある現代社会において、「書く・読む」というコミュニケーション能力がいかに重要であるかを説いています。石倉氏は、ほぼ全員がリモートワークで働く会社で長年働いてきた経験から、誰にでもわかりやすく伝わる文章を書くためのフォーマットを独自に編み出してきました。そのフォーマットを惜しげもなく紹介し、読者がすぐに活用できるようになることを目指しています。フォ

効果的なリスキリング戦略ー「3つの罠」を避けるためにはどうするか

 日経ビジネス2024/4/19の記事に『「リスキリング」の課題 効果が出ない3つの罠』が掲載されていました。  この記事では、企業が従業員のスキルアップを目指して実施している「リスキリング」についての取り組みとその際に直面する課題に焦点を当てています。リスキリングとは、急速に変化する業界や技術環境に対応するために、従業員に新しいスキルや知識を身につけさせることです。日本政府や経済産業省も、個人のスキル再構築を支援する施策を進めており、この分野に多額の投資が行われています。

【書籍】夢を形にする言葉の力ー国分秀男氏の指導哲学

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp146「4月25日:言葉は意識を変え、意識は行動を変える (国分秀男 東北福祉大学特任教授・元古川商業高等学校女子バレーボール部監督)」を取り上げたいと思います。  国分秀男氏は、京浜女子商業での勤務を経て、古川商業高等学校女子バレーボール部の監督として転職しました。そのキャリアで学んだ重要な教訓を話しています。最初に、彼は一流の監督たちから学び、特に宮本武蔵の読書を通じて、全てを投げうっ

職場における自我の役割と主体性の育成ー川上真史さんの指摘から考える

 川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #8自我と主体性」というテーマは、心理学の中でも特に人間の意思決定プロセスやパーソナリティ形成に焦点を当てており、特にフロイトの精神分析理論を基に自我の機能とその社会生活や職場での影響について述べられており、大変興味深いものでした。  自我は、内部の無意識的な衝動(イド)と外部の社会的規範や道徳(超自我)との間で調整を行う役割を持っています。このバランスをうまく管理することで、個人は社会内で適切に機能す

新時代の生存戦略ー齋藤孝氏によるAI進化論の適用から人事戦略を考察する

『プレジデント2024年5/3号)』は、「AI時代の生き方大全」でした。その中でも、「齋藤孝の人生がうまくいく【古典の名言】「AIは人間を超えるのか」という疑問への最終結論」(p84)は大変興味深い内容でした。齋藤氏は、現代社会の急激な変化とAI技術の進歩に対する洞察とダーウィンの進化論を交えた議論に焦点を当てています。特に、生成AIの一例であるChatGPTの登場が示す技術進化の速度とその社会への影響を分析し、これに適応することの重要性を説いています。  齋藤氏は、AIの

【書籍】時代遅れマネジャーからの脱却:飯田剛弘氏に学ぶ新マネジメント論

 The21 2024年5月号「仕事と人生に効く100の言葉」の中で、飯田剛弘さんの「多様なメンバーが集うチームをうまく導いていく方法」(p88)は自身の管理職の立場にとっても、また、人事の立場としても改めて考えさせられるところがあり、大変参考になりました。ポイントをを取り上げ、考察したいと思います。  飯田氏が提唱する現代マネジャー論は、多様性と変化に富む現代のビジネス環境に適応するための指針を示しています。彼は「時代遅れマネジャー」の特徴を挙げ、メンバーとの会話を避ける

AI時代の企業変革ー従業員リスキリングの戦略と実践ー後藤宗明氏

 Aoba-BBTの番組後藤宗明氏によるの「AI時代のリスキリング2_リスキリングのステップ(法人編)」というテーマは、AI時代における企業と従業員のリスキリング(新しいスキルの習得)の重要性と、その具体的な方法について非常に深く言及しています。  後藤氏は、リスキリングに関する以下の書籍を出版していますが、こちらも非常に参考になります。  まず、リスキリングは企業が主導して行うべきであり、就業時間内に実施することが極めて重要だと指摘されました。個人の自助努力に任せるので