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望まれた命、そうでない命

 あたしとうっちーセンパイは、同じ布団でなんとなく朝を迎えた。
当然だけれど、直接肌が触れあってる。

 暖かいし、布団から外れた部分が驚くほど冷たい。
こういう温度差は、体でなくても、心においてもあるのかもしれないな。

 そんな哲学的なことを考えたのは倫子ニーチェちゃんの影響かなとふと思った。

 「あ・・・はるかちゃん・・。」

うっちーセンパイが、寝ぼけた顔でこっちを見た。
あたし、ついキスしたけど、後悔した。

口臭ちょっとやばい・・

まて、そういうことは相対的なものだ。あたしも口臭やばかったかも。

やばい口づけの後、センパイはじっとあたしの顔を見つめて、頭をなでた。

心地よい・・・

「あのな・・。はるかちゃん。」
それとは別に妙に厳しい目つきでセンパイはあたしを見ていた。
そのただならない雰囲気に、いつもの飄々としたセンパイの印象が一瞬とんだ。

「はい・・なに?」

なんだ、妙に殊勝になっているあたしだ。

「わしな、まぁ、いわゆるレイプで生まれた子や。」

あたしは何も言えなかった。うっすらと話は聞いていたけど。
そうか、そんなに重いことだったのだ。
じゃあ、センパイのおかんを責めることもできないし、
村野の叔父さんや飛鳥お姉ちゃんを責める気にもならない。
ましてや、あたしの母に出逢う前の父にもだ。

 逆にそんなことも知らないで過ごしてきた、
あたしの方がむしろ脳天気すぎたんだ。

「せやからな、わしの体にはけだものの血が入ってるんやないかと。そう思ってな。」
「だから、その先進めないのか・・。」

あの脳天気なセンパイが、そこにいなかった。あたし、心からセンパイ可哀想だと思った。
自分の責任じゃないことを何でこんなに悩めるるんだ。
・・むしろ気高いし愛しい。

よし!

あたしは覚悟を決めた。そして言った。

「そんなの関係ねぇ!、あたしが、けだものの子を産んで調教するよ。」

センパイは、静かに笑って、もう一度あたしを求めてきた。
だめだよ、もう9時過ぎじゃん・・。

・・・・うっちーセンパイのば~か・・・・。 

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