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夜、バスに乗ると…

小さい頃のCMに

「リンゴをかじると、
 歯ぐきから血が出ませんか?」

というのがあった。


それに近い問いだが、
一つ聞いてみよう。


「夜、バスに乗ると、
 通り過ぎる街並みの、 
 窓の明かりを見て、
 胸がキュンとなりませんか?」


他にもある。


「夜景を見ると、
 街の明かりを見て、
 胸がキュンとなりませんか?」


今はそうでもないが、
小さい頃から思春期にかけては
胸キュンだった。


胸キュンだけど“恋”ではなく、
その思いは

「この中のどこかに、
 僕の本当の家があって、
 本当の家族がいるんだ…」

だった。


切ないような、
悲しいような。


「友達たちも
 同じような気持ちになるのかな?」

と、何度か聞いてみた。


みんな怪訝な顔をするだけだった。


「僕だけなんだ…」


友達に聞くのはやめた。

誰にも言わないことにした。


そしてだいぶ時間が経って、
理由がわかった。
そして強く思った。


「赤ちゃんって、
 まだ目も開いてなくても
 周りのことを敏感に
 感じてるんだな」と。


本当の母から、
本当の家族から離れされた日を、
記憶じゃなく、心が、
憶えているんだね。






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