夏の夜風とカクテルライト
ダメダメだった文化祭。
そこからのリベンジ…
どうしたものか…。
ここは我が師匠・剛先生の出番だ。
というわけで、
長渕先生のライブチケットを
2人分購入。
ドキドキしながらライブに誘うと
オッケーしてくれた。
かくして、あの忘れられない
“夏の夜”の幕が上がる。
夏休みなので
マンションのエントランスで待ち合わせ。
バスでライブ会場まで移動だ。
車中の会話も楽しく弾み←ヒデマエ調べ
ライブ会場の郵便貯金ホールに到着した。
そして開演。
2時間を超える熱演の間、
僕の視線は師匠の手元に釘付けだった。
座席はステージから遠いものの、
小型双眼鏡を準備してきたので、
これでコード進行をガン見まくり。
大いに収穫があった。
アンコールにも2度応えてくれて、
大満足で郵貯を出たら、
バス停は黒山の人だかり。
とても乗れそうになかった。
「少し歩こうか?」と僕。
「…うん」と彼女。
本川沿いの道を歩き始めた。
夏の夜風が心地よく、
頬を撫でていく。
僕は勢いに任せて、
今日の収穫について話していった。
「あのコード進行、
さすが剛だったね」
「自分のコピーしたのと
同じとこもあったよ」
気がつけば喋ってるのは僕ばかり。
それどころか彼女は少し遅れ気味に歩いてる。
「ごめん、ごめん」
少し戻って、また
肩を並べて歩く。
でも、やっぱり彼女は少し遅れだす。
うつむいてる。
再びもどり、そして聞いた。
「…どうしたの?」
彼女は、ゆっくり顔を上げると、
僕にこう聞いた。
「…今日はもう…帰るの?」
その時、少し強めの夜風が吹いた。
吹き抜けた先を見ると、
市民球場のカクテルライトが、
川面に映って揺れていた。
僕は、答えた。
「うん!帰ろ!」
そこのあなた、ズッコケましたね?
今思えば彼女も「え?」という表情でした。
でも…僕は…まったく気付かなかった。
都合よくバスが通ったので、
「あ、これ乗ったら早く着くよ」
と乗り込み、あっという間に帰宅。
遅めの夕食を食べ、
お風呂に入りながら、
心の中は
「人生初デート、コンプリート!
完全に文化祭のリベンジは成った!」
と喜びに満たされていた。
安らかな気持ちでベッドに入った時、
「…待てよ…痛恨のミスしてないか?」と、
そこで初めて思い当たった。
あ〜っっ!!
“女心”がわかってない!
だって初デートだったんだもん!
言い訳を心の中で絶叫したが、
全ては“後の祭り”だった。
【続く】
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