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大規模言語モデル、有料版はどれを使うべきか

この記事は、個人向けサービスに関する比較となります。企業向けは別のプランが用意されていることも多く、その価格体系なども異なりますのでご注意ください。


大規模言語モデル(LLM)を使用することにより、様々な言語処理を行ったり、また、書き換え、アイデア出しなど、いろいろな用途に使用することができます。

多くの企業が様々なLLMを公開しており、特に有料版を導入しようと考えている方は、選択に迷われる方も多いでしょう。この記事では各社のLLMを比較し、それぞれの特徴を探っていきます。

それぞれのサービスの特徴

ChatGPT Plus

2024年3月時点の価格は月20ドルです。

ChatGPTはOpenAIが開発したLLMです。ChatGPTのメリットとしては最新の機能を早く利用できることが挙げられます。これはAIモデルを開発することを目的とする会社が提供しているサービスだからです。

特に、GPTsという独自の設定をまとめたものはChatGPTが唯一のものです。また、カスタム指示を使用することにより、モデルにどのような挙動をさせたいかを設定することができます。また過去の使い方から学習して、よりユーザーのニーズに合致した出力を得ることができるような機能もあります。

プラグインの種類も豊富で、外部サービスとの連携がより簡単にできます。

また、Pythonのコードを実行する機能も持っており、計算を実行させたりすることができるようになっています。

デメリットとしては使える回数が少なく、特にGPT-4は3時間で40メッセージしか使えません。この制限にすぐに達してしまうことがあります。チームプランでは1000メッセージまで増やすことができますが、それには25ドルのチームサービスを購入する必要があり、2アカウント以上からの契約となるので、費用がかかります。

GPT-3.5に関してはほぼ制限なしに使用できますが、特別な機能を使用することができません。(カスタム指示は使用可能。)

Copilot Pro

2024年3月時点での価格は月3200円(20ドル)です。

マイクロソフトが提供するCopilot Proは、ChatGPTをベースにしたサービスです。Copilotの無料版ではGPT-4を使えますが、有料版ではGPT-4 Turboを使えます。GPT-4 TurboはChatGPT Plusでも使えないので、Copilot ProはChatGPTに一歩先行しています。

Copilot ProはBingと連携し、プロメテウスという独自の実装で最新情報を取り入れることができます。ChatGPTもBingをオプションで使えますが、Copilot Proのほうがより頻繁にこの機能を使っています。

Copilot ProではGPTsに対応するビルダーも今後予定されています。

また、Microsoft OfficeEdgeとも連携が強く、Copilot ProではEdgeで見ている記事をもとに会話したり、Officeアプリでは文章作成や書き換えなどに活用できたりします。Excelなど、一部動作に制約があったり、日本語に対応していない機能もあります。尚、この機能の使用には別途Microsoft 365(個人・ファミリー版)への契約が必要です。

尚、Edgeの連携機能の大きな特徴としては、Edgeが記事の内容を直接取り込むことでも行われるため、検索エンジンがインデックスしていない記事に関しても要約などを行うことができるようになっています。

表示しているページ内の情報を元にした場合の通知

コード実行機能などはなく、カスタム指示なども設定できない、という欠点もあります。(コード実行機能については、内部で実行しているように見えることもありますが、確かではありません。)

使用量に関しては制限が示されておらず、普通に使っても問題はなさそうですが、1セッションでの会話数には上限があるようです。

Gemini Advanced

2024年3月時点で、AIプランの料金は月に20ドルですが、Google One 2TBプランの機能も含まれていますので、AIプランの実質的なコストは月に10ドル程度と考えられます。Google One 2TBプランは年間契約をすると16%ほど安くなりますが、AIプランは月間契約しかありません。そのため、Google One 2TBプランを年間契約しているユーザーは、AIプランに変更すると、金額がより高くなったように感じるかもしれません。(ただし、この場合でも、残りの期間分は新しいプランに移されますので、無駄になることはありません。)

Gemini Advanced(以前はBardと呼ばれていました)はGoogleが提供するLLMで、Googleとの連携が強みです。Google検索Google WorkspaceやGmailなどの他にも、YouTubeなどとも連携して使えます。メールの内容について質問したり、YouTubeの動画の内容について質問したりできます。

今はまだGemini 1.0をベースにしていますが、より高性能なGemini 1.5に徐々に移行している段階です。

生成されたコードを実行して試すこともできるコード実行機能も備わっています。

ただし、不適切な画像が生成されることを受け、現在は画像生成機能は利用できなくなっています。

Grok

2024年3月時点での価格は月1960円(16ドル)もしくは年20560円(168ドル)で、X Premium Plusの機能として提供されています。

GrokXとのつながりをアピールしていますが、機能的にはかなりシンプルで、日本語もあまりうまく扱えません。Xと関係した出力を期待しても、ほとんど得られないのが現状です。

今のところ日本ではVPNを使わないと利用できないようです。

用途別

入力可能形式

  • ChatGPT Plus – 文章、画像(20MBまで)、その他のファイル(512MBまで)

  • Copilot Pro – 文章、画像、その他のファイル(1MBまで)

  • Gemini Advanced – 文章、画像

  • Grok – 文章

画像に関する対話をするときは、Grok以外なら画像をアップロードできます。ただし、人物の顔が写っている画像の場合、その人物について聞かれても答えないことがあります。Gemini Advancedはこの点で一番厳しく、人物の画像があると対話を拒否します。

人物を含んだ画像を拒否するGemini

ChatGPT PlusやCopilot Proでは画像だけでなく、ファイル(CSVファイルなど)もアップロードできます。その内容に関して質問に答えることができます。

画像生成

  • ChatGPT Plus - 可

  • Copilot Pro - 可

  • Gemini Advanced - 機能停止中

  • Grok – 不可

ChatGPT PlusとCopilot Proは同じDALL·E 3を利用して作られていますが、Copilot Proは生成したものを修正するような機能がより充実しています。

ChatGPT Plusでは限られた範囲で画像をアップロードしてそれに関連した生成を行うこともできます。

ただし、制限が強い部分であり、生成された画像によっては受け付けられない場合があります。

なお、Copilot Proでは一日100回のブーストが提供されます。このブーストが使い切っても画像が生成できなくなるというわけではなく、高速に生成できたり、などのメリットがあります。

コード生成

  • ChatGPT Plus - 可

  • Copilot Pro - 可

  • Gemini Advanced – 可

  • Grok – 可

全環境において、多くのプログラミング言語を使用したコード生成を使用することができます。Copilot Proにおいては専用のインターフェースが展開し、そのコードに対する単体テストを生成したりなどが可能です。尚、プログラミング用途に関しては別途GitHub Copilot(月額10ドル・年額100ドル)も提供されており、こちらはプログラミング環境などから使いやすいものとなっています。

サービスとの統合

  • ChatGPT Plus – プラグイン

  • Copilot Pro – Bing、Edge、Windows 11、Microsoft Office、プラグイン

  • Gemini Advanced – Google Workplace (Gmail, Document, Sheetsなど)、Googleサービス(Maps、フライトなど)、YouTube

  • Grok – X

ChatGPT Plusでは様々なプラグインを使用して外部サービスと連携することができるほか、GPTsにおいても外部サービスへのアクセスを設定することができるようになっています。

クライアント側との連携が最も充実しているのはCopilot Proであり、Edgeで表示中のページに関する対話をしたりすることが可能な他、Microsoft Officeより機能を使用することが可能です。尚、プラグインに関しては現在は限定的です。また、Bingを検索エンジンとして使用している場合はBingのページから直接Copilot Proにアクセスできるようになっています。

Gemini AdvancedはGoogleサービスの連携が強く、Gmailのメール内容に関連する対話を行ったりすることができるようになっています。また、英語のインターフェースに切り替えることにより、下書き作成なども行うことができます。(日本語には未対応で、インターフェースを英語に切り替えた場合でも日本語を入力すると未対応であるというメッセージが表示されます。)

モバイル版

  • ChatGPT Plus – Android, iOS

  • Copilot Pro – Android、iOS

  • Gemini Advanced – Android、iOS

  • Grok – Android, iOS(Xアプリ経由)

どのシステムもモバイルより使用することができます。Gemini Advancedに関しては対応していない環境もあるようです。尚、全ての環境においてブラウザ経由でのモバイル使用が可能です。Copilot Proでは専用モバイルアプリ経由の他、EdgeやMicrosoft 365アプリからも使用可能です。

無料版との比較

  • ChatGPT Plus – GPT-4へのアクセス、各種プラグインやGPTs機能へのアクセス

  • Copilot Pro – GPT-4 Turboへのアクセス、GPT-4への優先アクセス、Microsoft Office連携の使用、イメージ生成ブースト増量(15ブースト)

  • Gemini Advanced – Gemini Ultraへのアクセス(無料版はGemini Pro)

  • Grok – 無料版無し

無料でも使用できるものである場合、有料版の方が優先的なアクセスが提供されることが通例となります。

まとめ

どの環境も、特徴のあるサービスが提供されています。基本的にはChatGPT Plus、Copilot Pro、Gemini Advancedどれを使っても基本的には便利に使用できるかと思います。Copilot Proは機能面でも費用対効果は比較的高い上に制限も比較的低いため、よりお得かもしれません。ですので、個人的にはこれをおすすめします。

Gemini AdvancedはGmailなどGoogleのサービスとの連携は強いものの発展途上である部分も多く、また、日本語での使用がまだ弱い、という部分もありますが、今後の発展に期待したい部分です。