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ブラウザ向け3Dメタバースを比較してみる

VRChatなどのアプリケーション型の環境がある中で、近年注目され、利用が広まりつつあるのがブラウザで利用できる各種の仮想環境です。
これらのブラウザベースの環境は、インストールが不要で手軽にアクセスできる点が大きな特徴です。
以下では、通常のアプリケーション型環境と比較して、ブラウザベースの環境が持つ主な違いについて説明します。

尚、この記事においては、ユーザーが個人としてがワールドを自由に作成可能なものであるものに限定し、ワールド制作に事業者契約等やプロフェッショナルサービス契約が必要なものに限定されているものは含まないものとします。

まず、アプリケーション型の環境は、専用のソフトウェアをインストールする必要があります。
これにより、高度なグラフィックや複雑なインタラクションを実現することができる一方で、利用者はそのソフトウェアをダウンロードし、インストールする手間を負うことになります。
特に高性能なハードウェアが求められる場合も多く、すべてのユーザーが同じ体験を得るためには一定の技術的要件を満たす必要があります。

一方、ブラウザで利用できる環境は、ウェブブラウザさえあればすぐにアクセス可能であり、インストール作業が不要です。
これは、利用者にとって非常に大きな利便性をもたらし、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなど、多様なデバイスから簡単にアクセスできる点が魅力です。
さらに、システム要件も比較的低く抑えられるため、より多くのユーザーが気軽に利用できる環境を提供します。

これらの違いにより、アプリケーション型の環境は高度な体験を提供する一方で、ブラウザベースの環境は手軽さとアクセスのしやすさを提供します。
それぞれの利点を理解し、目的や利用シーンに応じて適切に選択することが重要です。

特徴としては以下の点があります。

  1. 個別のアプリケーションが不要で、ウェブブラウザのみでアクセスが可能
    ブラウザベースの環境は、専用のソフトウェアをインストールする必要がなく、ウェブブラウザさえあればすぐに利用できます。
    これにより、ユーザーはインストールやアップデートの手間を省き、迅速にサービスを開始することができます。

  2. 使用できるシェーダーに制限がある場合が多い
    ブラウザベースの環境では、技術的な制約により使用できるシェーダーに限りがあります。
    これにより、高度なビジュアルエフェクトを実現することが難しい場合があります。
    ただし、これは必ずしもブラウザ型の環境に特有の問題ではありません。
    アプリケーション型の環境においても、シェーダーの制限が強い場合があります。
    例えば、高度なグラフィックスを要求するアプリケーションでは、動作の安定性や互換性を確保するためにシェーダーの使用が制限されることがあります。

  3. ウェブブラウザのみで稼働するため、PC・スマホなどプラットフォームを超えて展開しやすい
    ブラウザベースの環境は、異なるデバイス間での互換性が高いため、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットなど多様なデバイスからアクセスできます。
    これにより、利用者の幅が広がります。
    また、ワールドを作成して公開するためのリードタイムが短いため、迅速にコンテンツを提供することが可能です。

つまり、ブラウザ型の環境は、アプリケーション型の環境に比べて没入感がやや低い傾向があるものの、より手軽にアクセスできるという利便性があります。
技術的な制約や制限があるものの、その手軽さと展開のしやすさは、多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となります。

NTT DOOR

NTT DOORNTTコノキューが運営するMozilla Hubsをベースにした環境です。
この種類の環境では比較的早い段階からサービスインしている、比較的歴史が長いサービスとなります。
Mozilla Hubsは比較的容易に運用・カスタマイズが可能なためか、他の「メタバース」を謳う環境は内部的にはMozilla Hubsが動作していたりします。
DOORにおいてもカスタマイズが行われており、VRMのアバター対応などがそれに含まれます。

NTT DOORの特徴としては、ワールドの制作もウェブブラウザで完結している点になります。
モデル自身はテンプレートやパーツが用意されており、これらを組み合わせて制作することもできますし、Blenderなどで作成したものを持ち込むことも可能です。

ブラウザ上での制作

使用に関しても、ブラウザから簡単にワールドに入り、使用することができます。

入室時の様子

また、入室後にオブジェクトを「ピン」することにより、オブジェクトを中長期的な形でワールド内に保持しておけるのもDOORの大きな特徴となります。

また、VR機器にも対応しており、対応しているブラウザと組み合わせることで没入感が高い形で入ることもできるようになっています。

尚、Mozilla Hubsの開発は終了していますが、NTT DOORについては引き続き管理されていくようです。

手軽に使え、JASRAC曲の使用も可能

インタラクティブ機能としてはトリガー機能などは備えますが、この点では比較的シンプルな環境となります。
その分、読み込みは速く、コンテンツの内容にもよりますが非常にスムーズに読み込みが行われます。
前述のようにワールドを手軽に作成できる他、環境内でユーザーが作成したJASRAC曲の管理曲も可能となっており、申告することにより使用料もプラットフォーム側に負担してもらえるようです。

商用利用はより厳しくなってきているかも

当初、DOORが登場した段階では商用利用はあまり制約がなく、せいぜい申請するだけで行うことも可能だったのですが、規約などが改定されるにつれ、若干、制約が強くなってきているような部分があります。
制作受託などもプロジェクトごとに「制作運用代行ライセンス」を締結し、ライセンス料を払う必要がある、というような事項も規約に追加されている事情があったりするため、特にコンテンツ制作面では多少窮屈な環境になってきている感じがします。
尚、自己商品の紹介など、単純な商用利用に関しては簡単に行わうことができるようですが、こちらも申請が必要となります。

Vket Cloud

VRでのイベントである、バーチャルマーケットなどを開催しているHIKKYにより開発、運営されるのがVket Cloudです。
Vket Cloudはライトマッピングなどをサポートしていたり、インタラクティブ性が高い制作もサポートしており、動的ローディングなども対応しているなど、本格的な制作も可能な作りになっています。

Vket Cloudの様子

元々、Vketのウェブブラウザ会場を実施する際にお披露目されたところもあり、ブラウザ型の環境としてはリッチな方向性です。

ワールドの制作はUnityを使用することで行う方式となっており、高機能なSDKが用意されており、ゲームなどの制作も可能としています。

制作は比較的玄人向け、でも今後に期待

制作にUnityを使う必要がある部分から、現状はどちらかというと玄人向けの制作環境とも言えます。
ただし、この点については改善の予定も図られているようで、今後はより簡易的に行えるようになるかもしれません。

商用利用がしやすい?

Vket Cloudでは商用利用が比較的行いやすいガイドラインが規定されています。
自己・自社製品の広告宣伝に関しては特別な許諾を得ることなく行うことができるため、ビジネスプランで提供される機能が必要なく、自社で制作が完結できれば非常に使いやすい環境ともいえます。
尚、第三者のコンテンツやアフィリエイトなどを利用したい場合は有償プランに加入の上、申告することで許可されるようです。(有償プランは個人ではベーシックプランから比較的安価に契約することができます。)
有償でVket Cloudのワールド制作の受託するためにはパートナー契約(無料で締結可能、またプロジェクトごとではなく、受託者本人が結ぶ契約)を受注側が行う必要があり、また、発注者はビジネスプラン(月11万円~)と商業案件向けの構成となっています。(8月14日の規約改定で、発注者がフリープランである場合でも可能となりました。)

STYLY

STYLYはSTYLY社により開発運営されるプラットフォームで、こちらは上記沸つの環境とは少しテーマが違っており、各種アート作品の公開場所としての性格が強いサービスとなっています。
ブラウザ経由、モバイル環境ではアプリを使用することによりワールドに入ることができるようになっています。
また、VR機器でも入ることができます。

STYLY

自由度の高い制作環境

STYLYは、多様な制作環境を提供する革新的なプラットフォームです。
STYLY Studioを使用した直感的で使いやすいウェブベースの制作環境に加えて、Unityを使用した高度な制作にも対応しています。
これにより、ユーザーは自分のスキルレベルやニーズに応じて、最適なツールを選択してクリエイティブなプロジェクトを実現することができます。
また、これらの要素は組み合わせて使用することができるため、制作環境は互換性が高く、柔軟なワークフローを実現するため、より効率的で創造的な作業が可能です。
インタラクティブ機能に関してはPlayMakerを使用することで実現することができるようになっています。
また、商用利用についても一定の条件下で問題なく行うことができるようになっています。

STYLY Studio

AR制作もできる

STYLYの特長として、AR制作も想定されており、ARシーンを制作することにより、現実世界の上に出現させることのできる作品を制作することも可能になっています。
ただし、どちらかというとアート作品指向のサービスであるため、複数人数による参加は可能ではありますが、「メタバース」としての使い方は少し毛色が異なるともいえると思います。

ブラウザ型メタバース環境で楽しい制作を

専用環境と比べると没入感はやや劣るかもしれませんが、ブラウザ型メタバースは誰でも手軽にアクセスできる点で非常に優れています。
この特性により、他のメディアとの連携や広範な視聴者への共有が容易になり、高いポテンシャルを持つ環境といえます。
自分に合った使い方を見つけることで、この環境の利点を最大限に活かし、クリエイティブな制作を楽しむことができるでしょう。
ぜひ、さまざまなアイデアを試しながら、制作の過程を楽しんでください。