ビジョナリーカンパニー:ZERO
今年、2021年2月に「ビジョナリーカンパニー:Good to Great」(GtoG)を読み、感想をnoteに書きました。この時点で私の事業家としての道はほぼできあがっていたと感じていました。永年の念願であった本も書いて出版し、よい決算の見通しも立ち、すっかり未来が見えていた気になっていました。
しかし、その直後にいかに自分が考えていたことは虚構であり、自分の足下が危ういものであったかを痛感させられる出来事が起こりました。いまもその影響で右往左往しています。それがなんであったかは、いつか心の整理ができたら書くこともあるかもしれません。
そんなわけで、自分の事業についてももう一度ゼロベースで考え直さなければならない、そんな想いを抱いている時に「ビジョナリーカンパニー:ZERO」(BE2) を見つけました。本書は、ジム・コリンズ氏が1992年に恩師であるビル・ラジアーと共に出版した「Beyond Entrepreneurship」(BE)を元に、その後のジム・コリンズの研究、思想の発展を大幅加筆した本です。GtoGが出版された1994年の2年前の出版ということになります。なので、放題はBE2ではなく、「ビジョナリーカンパニーZERO」とされたのかと。
大まかに本書、BE2の章立てをリストアップしてみましょう。本書の狙いが見えてきます。
最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない
リーダーシップ・スタイル
ビジョン
幸運は諦めない者に訪れる
偉大な企業を作るための「地図」
戦略
イノベーション
卓越した戦術の遂行
BE2の章立てを、以前まとめたGtoGのポイントのリストと比較すると多くのアイデアは、BEの出版の時点でコリンズ氏はすでに「ビジョナリーカンパニー」のコンセプトについて深く理解していたことが分かります。
ただし、本書BE2は既に成長を遂げた企業ではなく、これから「偉大(Great)」になっていく企業をいかに作り上げるかに焦点を当てていまいます。「Entrepreneurship」(起業家精神)がBEのテーマなので、栴檀は双葉よりで起業するには最初からすぐれた「人材」、「ビジョン」、そして「戦略」と「地図」を備えている必要があることが読んでいて伝わります。
これがジム・コリンズ氏が描いた偉大な企業を作る地図です。数々の著作で「偉大な企業」「衰退していく企業」などを分析してきた結果がこの一枚の「地図」に表現されています。それぞれを詳細に述べることは私の力にあまります。なんだかんだと四半世紀にわたり中小企業の経営者をやってきて、第一段階にある「第5水準のリーダーシップの醸成」「最初に人を選びその後に目標を選ぶ(正しい人をバスに乗せる)」をいかに徹底してやれるかが大事だと確信しています。まずは自分自身が「第5水準」を目指して学び続けることはもちろんですが、いかに「第5水準のリーダーを作れる社風」の会社となるかが肝だと思えます。リーダーの醸成とはトップが任命したからできるものではありません。リーダーとしての人格、能力、知識、そして、会社全体のガバナンスの正統性、つまりはリーダーと会社との一体性が問われます。この原点、まさに「ビジョナリーカンパニーZERO」を再びめざすことがいまの私の最大の課題です。
BE2で「地図」の後に語られるのが戦略とイノベーションです。イノベーションについては物作りの会社として大変興味を持ちいろいろな書物を読み、様々なプロジェクトに首をつっこみ、励んできたつもりです。いくつかは成功し、大半は上手くいきませんでした。イノベーションについて勉強した書物で言えば、ドラッカーの本はマネジメントの部分では大変学ぶところが多かったのですが、イノベーションについてはどうも数少ない「才能」に依存せざるを得ないと書いてあるようにしか私には受け止められませんでした。本書で、大変蒙を啓かれる想いであったのは、それが社内の提案であれ、社外からの提案であれ、トップ、そして会社全体が「聞く耳を持つ」体質であるかどうかがイノベーションの基盤であるという指摘でした。「第5水準のリーダーシップ」の特徴のひとつである「謙虚さ」と平仄があいます。自前主義であったり、完璧主義ではイノベーションは生まれないのでしょう。
まだまだ書き足りないことばかりですが、これを書いている今は2021年大晦日の19時過ぎ。今年の課題は今年のうちに一旦一区切りとして来年の飛躍に向けて心静かに新年を迎えたいと想います。
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