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映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」(Les heritiers, 2014, 仏, 監督 Marie-Castille Mention-Schaar)


どこの国でも高校生を教えるのはたいへん。ちゃんと席について教室の中にいればまだよいとはいえ、授業中に私語するし、スマホをいじり始めるし、喧嘩するし、先生の言うことなんか聴きゃあしない。

あまり恵まれていないフランス郊外の高校生も同じらしい。歴史と地理を教えるゲゲン先生は自分のクラスの生徒たちに手を焼いていた。あるとき、上司の教員に言われる。あなたのクラスは1年生の他のクラスより荒れていて、問題を起こしていると。

あるとき、ゲゲン先生は思いついた。全国歴史コンクールにクラスとして出場しよう。「ナチスによる大量虐殺時の子どもと若者の人生と生活」というテーマを聞いて、生徒たちはいっせいにブーイング。「できるわけない」「劣等生なのに。みじめになるだけだ」などなど。校長もゲゲン先生に言う。「あの荒れたクラスをコンクールに出すのは時間の無駄です。」

しかしゲゲン先生はめげない。作業を始めて、戸惑い、喧嘩をし始めるような生徒たちを叱咤激励し、博物館へ連れて行き、強制収容所からの生存者の話を聴かせる。生徒たちの目の色が変わってくる。そして、コンクールへ向けて、資料つくりにクラスがまとまっていく。

さあ、コンクール出場のため、バスでブリュッセルへ出発!そして最後は、涙、涙である。

悪態をついていた生徒たちが勉強し出すなんて。こんなプロセスを引き出せれば、教師冥利に尽きるだろう。最後のシーンはパリ・エッフェル塔近くの軍士官学校。私がかつて住んでいたアパートから歩いて行けたし、ご近所の日本人家族のおとうさんはこの学校で勉強していて、学園祭でお寿司をごちそうになった。そんな思い出も呼び覚ましてくれて、予想以上に楽しい映画だった。

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