Hideki Tarumoto

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最近の記事

映画「それでも私は生きていく」(Un beau matin, 2022, 仏・英・独, 監督 Mia Hansen-Love)

人は老いと共に弱っていく。本人もたいへんだけど、世話をする周りもたいへん。ましてや、シングルマザーでまだ子どもが小さいとしたら。 サンドラは通訳と翻訳の仕事をしながら、小学生の娘リンを育てている。哲学の教師をしていた父親は聡明だったけど、徐々に文章が読めなくなり、身の回りのことをできなくなった。「1日3度の訪問ではケア仕切れない」とケアワーカーに言われてしまった。 そこで、父と別れた実の母親やきょうだいなどと施設を探し始める。しかし、なかなかうまくいかない。父親は自分のお

    • 映画「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」(Missing Link, 2019, 米, 監督 Chris Butler)

      いやはやおもしろかった。アメリカのアニメも侮れない。 19世紀、英国の探検家ライオネルは、なんとしても誉れ高い探検家クラブへ入りたかった。しかしクラブの会長はまったくとりつく島がない。そこでライオネルは、なんとしても「ビックフット」を見つけて捕まえ、クラブへの入会を認めてもらわねばならない。 探検先はアメリカ北部のワシントン州。そこでライオネルは「ビックフット」を見つけたのだ。なんと、なぜか「ビックフット」はユーモアあふれた流ちょうな英語を話す。ライオネルは、人間と類人猿

      • 映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」(Les heritiers, 2014, 仏, 監督 Marie-Castille Mention-Schaar)

        どこの国でも高校生を教えるのはたいへん。ちゃんと席について教室の中にいればまだよいとはいえ、授業中に私語するし、スマホをいじり始めるし、喧嘩するし、先生の言うことなんか聴きゃあしない。 あまり恵まれていないフランス郊外の高校生も同じらしい。歴史と地理を教えるゲゲン先生は自分のクラスの生徒たちに手を焼いていた。あるとき、上司の教員に言われる。あなたのクラスは1年生の他のクラスより荒れていて、問題を起こしていると。 あるとき、ゲゲン先生は思いついた。全国歴史コンクールにクラス

        • 映画「フューリー」(Fury, 2013, 米, 監督 David Ayer)

          ブラッド・ピットが制作総指揮をした戦争映画だと聞いた。 時は1945年4月。形勢が危うくなったナチスドイツは、連合軍に総反撃を企てようとしていた。そこに、北アフリカ戦線で活躍をしたウォーダディー率いる4人組が投入された。ウォーダディーはナチスの親衛隊に憎しみを感じ、戦車の大砲に「憎しみ」という名を書いていた。 ひとり欠いていたウォーダディーのグループに派遣されたのが、入隊してわずか8週間の若者ノーマンである。戦車で隊列を組み、進んでいるとノーマンは、ヒトラーユーゲントによ

        映画「それでも私は生きていく」(Un beau matin, 2022, 仏・英・独, 監督 Mia Hansen-Love)

          映画「生きる」(1952, 日, 監督 黒澤 明)

          もちろん、日本映画の超名作のひとつ。カズオ・イシグロが脚本を書いた英国リーメーク版を見たのに、こちらの元のバージョンを見ていないというひどい状態なので、急いで観てみた。予想に違わず、見事な物語だった。 役所の市民課課長渡辺は、30年無欠勤の超真面目な公務員。ところが、その真面目さは公務員としては、というただし書き。なぜなら役所では、何も仕事をしないことがモットーとされていて、それを渡辺も30年実践してきたのだ。町内のおかあさんたちが、下水のあふれた土地を直し、公園をつくって

          映画「生きる」(1952, 日, 監督 黒澤 明)

          映画「ミツバチのささやき」(El espiritu de la colmena, 1973, 西, 監督 Victor Erice)

          名作の誉れが高い映画なのに、観たことがなかった。観てみると、かなり難しい。洞察力が要求される映画だった。 スペインの田舎にある村。そこへ移動映画がやってきた。村人たちは自分が座るための椅子を持ち、いさんで集まってきた。裏の邸宅に住む少女、アナとイサベルももちろんやってきた。そこで村人たちが観たのは、映画「フランケンシュタイン」である。ある科学者が人間の手でつくり出した生物。それがフランケンシュタインなのだ。そして映画の中でフランケンシュタインは少女と交流を持つ。 アナは夢

          映画「ミツバチのささやき」(El espiritu de la colmena, 1973, 西, 監督 Victor Erice)

          映画「ラストタンゴ・イン・パリ」(Last Tango in Paris, 1972, 仏・伊, 監督 Bernardo Bertolucci)

          超有名な映画で見たことがあった気もしたけど、どんな映画か確かめたくて急いで観た。字幕や吹き替えはないけど、まあしかたない。 パリで男がアパートの部屋を探している。たまたま道で追い抜かれ、カフェのトイレですれ違った女もたまたま同じ物件を見に行った。そこでふたりは鉢合わせする。そこにかかってきた謎の電話。その電話をきっかけとして、男は女をレイプした。 ふつうならそこで女は怒り悲しみ、二度とその男とは会わないだろう。または警察沙汰や裁判沙汰になることだろう。ところが、ふたりはそ

          映画「ラストタンゴ・イン・パリ」(Last Tango in Paris, 1972, 仏・伊, 監督 Bernardo Bertolucci)

          展覧会「マティス 自由なフォルム」(於 国立新美術館)

          今年2月に行った展覧会。 アンリ・マティスは、かなり好きな画家・芸術家。いろいろなところで何度も見ているけれど、今回東京へ来たのは切り絵を中心とした作品群だという。行かねばなるまい。 そんなに大きな展覧会ではなかったけれど (それでも2200円した)、いくつか発見があった。初めに並んでいたのは、本や果物などを描いた静物画。法律家になることをやめ、パリで絵の修行を始めたときに師事したのは、ギュスターヴ・モローだという。ちょっと意外。先の部屋へ行くと、彫刻が並んでいる。こんな

          展覧会「マティス 自由なフォルム」(於 国立新美術館)

          映画「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」(2024, 日, 監督 代島治彦)

          渋谷ユーロスペースの地下の試写会で見た。いわずもがな、樋田毅さんの名著の映画化。樋田さんからもらった試写会の案内状と名刺を受付に渡した。 この映画のひとつの焦点は、1972年、中核派のスパイだと疑いをかけられた川口大三郎くんが早稲田戸山キャンパス1階の自治会室の隣りの部屋で殺されたシーンをどう再現するかだった。事前に、鴻上尚史が劇中劇にすると聞いていた。すごく違和感があったけど、見てみると見事だった。つまりはなんてことはない、いつもの映画のシーンなのだ。教室の中で川口くんが

          映画「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」(2024, 日, 監督 代島治彦)

          映画「RRR」(RRR, 2022, 印, 監督 S.S. Rajamouli)

          インド映画を見るのは久しぶり。おまけに昨年あたりの話題作なので、かなり期待して見た。 時は1920年前後のインド。山奥の村に大英帝国の総督とその家族がやってきた。村の少女マッリが歌を唱うなど一行を歓迎したところ、総督の妻が金貨を2枚、マッリの母親に渡し、マッリをつれて行ってしまった。りっぱな人さらいである。しかし、その部族の結束は固い。ひとりでもいなくなったら、地の果てまで探す。男4人が首都デリーへとマッリを探しに出かける。 4年経っても、マッリを連れ帰れるめどがつかない

          映画「RRR」(RRR, 2022, 印, 監督 S.S. Rajamouli)

          映画「BLUE GIANT」(2023, 日, 監督 立川 譲)

          ずっと見たかったのに、映画館では見逃してしまった。配信で見てみると、予想に違わずおもしろかった。 ジャズのアニメ映画である。ダイが仙台から東京へ上京してきた。目的はひとつ。ジャズのミュージシャンになること。地元から早稲田大学(大隈講堂がうつったので)に進学した友達、玉田のアパートに転がり込み、工事現場でアルバイトをしながら、夜な夜な川沿いの橋のたもとでサックスの練習をする日々。一時期のソニー・ロリンズみたい。とてもストイックである。 あるとき、ジャズライブをききに、小さな

          映画「BLUE GIANT」(2023, 日, 監督 立川 譲)

          映画「テーラー 人生の仕立て屋」(Tailor, 2020, ギリシア・独・ベルギー, 監督 Sonia Liza Kenterman)

          時間が短めで配信で安く見られる映画を探していて、巡り会った映画。とてもよかった。男性スーツの仕立て屋さんの話である。 ニコスは16歳から40年以上もの間、父が開いた仕立て屋で働いてる。父はかなり年老いたのでニコスが主力戦力だけど、商売はうまくいっていない。ギリシア・アテネの目抜き通りに構えた店には閑古鳥が鳴いている。 とうとう銀行から呼び出された。父とふたりで出向くと、借金を返してないので、差し押さえをするという。そのショックで父は倒れてしまった。策を考えるニコス。まずは

          映画「テーラー 人生の仕立て屋」(Tailor, 2020, ギリシア・独・ベルギー, 監督 Sonia Liza Kenterman)

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