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科研費の季節

科研費《かけんひ》は、文部科学省およびその外郭団体である(独)日本学術振興会が助成を行なっている補助金です。昔は、年度毎の計画にしたがって交付される科学研究費補助金だけでしたが、最近は年度をまたいで交付される学術研究助成基金助成金との二本立てで構成されています。これらの補助金助成事業は、日本の研究機関に所属する研究者の研究を格段に発展させることを目的としたもので、科学研究費助成事業と呼ばれています。日本学術振興会のWEBサイトには、次のように説明されています。

『科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。』

この補助金事業では、国内の研究機関に所属する研究者が個人またはグループで行なう研究に対し、ピアレビュー審査(匿名審査員による審査)によって競争的資金を提供しています。通称(略称)は科研費で、英語の正式名称はGrants-in-Aid for Scientific Researchですが、ローマ字読みのKAKENHIという呼称も正式に定めています。

科研費は、研究費の上限額によって”ランク分け”されています。科研費には多くの種別があって、基盤研究に限れば、S、A、B、Cという等級に分かれます。基盤研究(S)は、期間5年で予算額が5千万円以上2億円程度までです。基盤研究(A)は、期間3-5年で2千万円以上5千万円以下、基盤研究(B)は期間3-5年で500万円以上2千万円以下、基盤研究(C)は期間3-5年で500万円以下となっています。

SやAランクの科研費を研究代表者として獲得できれば、一流の研究者の仲間入りです。私は、分担研究者として基盤研究(A)を頂いたことはありますが、研究代表者としてのSやAは獲得したことが無いので、一流には程遠い”普通の研究者”になります。

この研究費を頂くためには、研究内容や予算を含めた詳細な申請書を提出する必要があります。今の時期が丁度、予算の申請期間です。現在の申請書は電子申請ですが、以前は紙媒体での提出だったので、”印刷&糊付け&色付け”が必要でした。この色付け作業が厄介でした。というのも、申請書の上部に研究費の種別毎に”ピンク色やオレンジ色”などの線を引かなければならないからです。

その昔、大学生協の購買部の人と話していたら、「なぜか、秋になるとピンクやオレンジ色のマーカーやサインペンが売れるんですよ」と不思議そうに言うので、科研費の申請書のことを教えてあげた経験があります。その人は、「そうだったんですね」と、長年の謎が解けてスッキリとした顔をされていました。若い研究者は、オレンジやピンクの色塗りは未経験でしょう。

科研費は、研究実績や研究のアイディアに対して助成が行われるので、その人の実力が評価されているわけですが、「科研費を獲得した」ではなく、なぜか「科研費が当たった」という表現をします。宝くじではないので、”当たった”という表現は正しくないのですが、採択率が低いため、慣例として”当たった”という表現をします。これは、”科研費あるある”です。

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