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小説の中の地球科学#4 『マグマ』

 マグマ(magma)は、地球を構成する固体が、その内部で溶融しているものです。地球の地殻やマントルは主にケイ酸塩鉱物でできているため、その溶融物であるマグマも多くはケイ酸塩主体の組成を持ちます。マグマは日本語では、岩漿がんしょうと言います。このマグマをテーマにした小説があります。

 しかし、小説の題名・マグマは、小説の内容を暗示するキーワードであり、小説の内容はあまりマグマとは関係ありません。実はこの小説は、地熱発電に関する話です。しかも普通の地熱発電ではなく、『高温岩体発電』という特殊な地熱発電をテーマに扱った経済小説です。Amazonの書籍の説明では、以下のように書いていました。

世界の浮沈を握る新エネルギーとは!? 『ハゲタカ』の著者が描く衝撃作
地熱発電の研究に命をかける研究者、原発廃止を提唱する政治家。様々な思惑が交錯する中、新ビジネスに成功の道はあるのか? 今まさに注目される次世代エネルギーの可能性を探る、大型経済情報小説。

 作者の真山仁まやまじんさんは、同志社大学法学部政治学科を卒業して、新聞記者、フリーライターを経て、小説家になった人です。真山さんの代表作は、テレビドラマにもなった企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』です。真山さんの小説は、元新聞記者だけあって、綿密な取材に基づいています。このマグマも、高温岩体発電を研究していた電力中央研究所の研究者に詳しい取材をして、執筆したと聞いています。

 私もこの物語を読んだことがありますが、技術的なところもかなり理解して書かれていることがよくわかりました。これが単行本、文庫本になってからの小説は読んでいません。私が読んだのは、月刊カドカワに掲載された時のものです。私は高温岩体発電のことも、地熱発電のことも普通の人以上には詳しいので、話の内容がスラスラ頭に入ってきました。私には大変面白い小説でしたが、エンタメ要素が少ないので、一般読者にはちょっと物足りないかもしれません。エラそうなことを言ってスミマセン。

 かなり前になりますが、日本地熱学会の講演会で特別講演をして頂いたことがあるので、ご本人を一度だけお見かけしたことがあります。とても誠実そうなお顔をされていたことを思い出しました。地熱発電に興味がある人には、楽しみながら知識が得られると思います。ゴールデンウイークの暇つぶしの一冊にいかがでしょうか。


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