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コラム#8A オクロの天然原子炉

 ウラン235の半減期は約7億年と,ウラン238の45億年に比べて短い.しかし,現在のウラン中に0.72%しかないウラン235も,逆算すると5億年前には1.2%,20億年前には3.7%も存在していたことになります.つまり,20億年前には天然の濃縮ウランがあったことになります.たまたま,このような天然濃縮ウランが集積していた所に,地下水などが入り込んでくると,核分裂反応が発生する天然原子炉の条件が整います.

 このような天然原子炉(natural nuclear fission reactor)が形成される可能性は,1956年にアーカンソー大学の黒田和夫が予想していましたが,その実例はフランスのPerrinが1972年に発見しました.天然原子炉の知られている唯一の場所は,アフリカのガボン共和国オクロ(Oklo)にある三つの鉱床で,自律的な核分裂反応のあった場所が16箇所見つかっています.ここでは20億年ほど前に,数十万年にわたって平均出力で100 kW相当の核分裂反応が起きていたと考えられています.オクロで発見された天然原子炉の条件は,黒田が予想していた条件に極めて近かったと言われています.


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